572話 死亡回数=経験値
結局のところ、このローグライクシステムに苦戦すること2週間。
システムの把握、アイテム類、モンスターの種類、罠……通常のゲームプレイとは別の専用システムとアイテム類だったのでそっちを覚えるのに苦戦した。
「それに、とにかくぶん殴ってくる相手じゃないならやりようはいくらでもあるってな」
メニューもある程度は専用のUIに変わっているが、メモ帳等の便利ツール的な部分は特に変わっていない。で、1週間とちょっとしたときにあれこれ弄繰り回していたらアクセシビリティで残弾のデジタル表示が出来たりとローグライクをするにあたって便利な機能が結構あった。
とにかく、メモ帳を使えるのが大きく、ある程度は整理したがかなりの数を書きなぐってまとめておいた。これも何度も死んで、アイテムを拾い、モンスターの対応をし続けた結果ともいえる。
「対処方法と攻撃手段さえ揃ってりゃガンナーが最強なのは変わりないんだけどなあ」
目の前にいるモンスター3体、メモ帳に書いてある対処方法は『さっさと倒せ』。これ書いたときの私って何を考えていたんだろうか。とりあえずハンドガンからショットガンに持ち替えて、ばらけている敵を数歩移動してまとめる。そこから一気にショットガンをぶっ放して蹴散らす。武器の強弱と特性は結構オーソドックスな感じだったのも良かった。ショットガンで言えば散弾しかないのと扇状に攻撃できるので角からの攻撃と複数体巻き込んで倒しやすい。一直線ならライフルで貫通狙いも出来たり、SMGだと複数回攻撃、等々。
「こんなにあれこれ銃器を持ち変えることもないね」
今使って残弾が無くなったショットガンを肩に担いだまま、フロアの先を進んでいくと、通路からまたモンスターが1体。でかめの牛、見るからにパワータイプの奴がのっそり出てくるので、相手との距離を測ったら、空になっていたショットガンを投げつけて攻撃。これも普段はやらない事だしあり得ない事だが、アイテム欄を圧迫するだけで、なおかつリロードも出来ないのでガンガン使って使い捨てるのがこのダンジョンのルール。直撃したら固定ダメージも入るみたいなので案外強い。長物の武器はなぜか知らないが、必中するので更に使えるのが良い所。
「しかしまあ慣れるまでが大変で、それ以降はそこまでの難度もないか」
ボスらしいボスもいないし、やばいのはモンスターハウスに足突っ込んだ時と、良い感じにアイテムが拾えなかった時なので、それ以外なら問題なし。罠もやばいのはそうそうないので本当にシステムに慣れるまでが大変だっただけだった。
「まー、それでもそろそろクリアしたいんだけど」
上に行く転移地点に立ったら次のフロアに。何だかんだで良い所までずっと来ていたので次で15階層目。流石にそろそろ終わってくれないとしんどい。ちなみに1フロア回るのに大体リアルで20分くらいかかる。つまり20×14=280分……うっわ、めっちゃ時間掛かってる。性質上途中でログアウトしても途中から再開するから良いんだけどさ。
「なんとなーく、空気が変わった感じもある」
降り立ったフロアがやけに広い。通路もいつもより広い感じがある。そこまでがっつり99フロアまであるみたいな感じでもないし、イベントの一環だとしてもちょいちょい長い方だからこのぐらいがちょうどいいとは思う。
「嫌な予感だけは当たりやすいんだよねえ」
フロアを探索しつつ、落ちている銃、今回はオートマチックハンドガンを拾ってまじまじと見つめて確認してからインベントリに入れる。銃弾は落ちてないし代えのマガジンも落ちてないってこのゲームやり始めた時の事を思い出すわ。
「もしかしたらあの時が一番このゲームを楽しんでたかもしれんのが皮肉だよなあ」
くつくつと思い出し笑いをしながら先に進んでいく途中、ぴたりと足を止める。
「……ふーむ……」
まだ通路の途中、敵がいる感じではない。一応前方数歩分には敵がいないのは分かるし、通路だから罠は絶対にありえない。こういうのは長年の勘よね。一応でかぶつであろうが、こっちが動かなければ向こうも動かない。倍速の奴だってそのルールが前提にある。
「後ろかな」
一歩後ろに下がると二歩前程の所に目の前に何か大きい物が横を通り過ぎる。先に進んでたらやられていたというのもあるが、どうやら目当ての奴がいるようだ。
「やっぱ私って冴えてるわ」
通過していった所が新しい通路になっているので、通り過ぎた所を後ろから付いていく。のはやめておく。
「一応マップはあるから……どういう動きをするか確認してからゆっくり倒すか」
空腹になることもないし、今の所雑魚モンスターもいないのでボスだけ倒せばOK。だったら良いんだけど、それはまあやって見なきゃわからんな。
「此処でやられると300分……いやー、やられたくはないねえ」
そろそろクリアしたいわな。




