565話 柄になさすぎる
ここ1か月ほど方向転換してからのゲームプレイは今までの孤高プレイなんて路線じゃなくなった。手当たり次第に街ごとのNPCからクエストを受けては達成し、多分あるだろう好感度的な部分を上げていく。いや、好感度システムは存在しているはず。なかったらガンナーギルドの受付が私に対して柔い対応をするようになったのが説明付かない。なのであちこち行ってわ、クエストを受けてクリアし、臨時パーティを受けて、一緒になった連中にとにかくフレンド申請と探している物を伝えて人脈を作りとNPCの高感度を上げまわる。当たり前だが自分のレベルに合わない狩場や、適正的に合わないマップだろうが何だろうが、とにかく足で稼ぎまくる。そんな事をやっていればいつの間にか「臨時の助っ人ガンナー」みたいなことを言われるようになった。
「ロテア、今日は何処に行くんだ?」
「ん-……とりあえずゼンの方」
話しかけてきたのは結構な高レベルのアサシン。臨時としては何度か組んだことがあって、比較的対多数戦になりがちなこのゲームでは結構しんどい職だったりするので、私が銃声で引きつけて、こいつが倒す。って流れをやっていた。
ちなみに街だが、エルスタン、ゼイテ、ドルイテン、ヴィエ、フンフ、セチス、シエテ、アクト、ネウン、ゼフ、ゼン。これで1~10の街。現状実装されている街全部になる。細かい休憩ポイントの村だったり、拠点は点在してるけど、主要な街はこれ。エリアも細分化されているし、自分が思っていた以上にこのゲームが広いというのを思い切り実感した。
「じゃあ、ダメだな……俺はセチスの方で素材収集の護衛だ」
「もうちょっと交友関係広げなさい、そしてタンク辺りのいい子見つけな」
「後衛かつ放っておいても自衛できるお前が悪い」
そんな会話をしていれば、向こうのパーティが揃ったのか軽く手を振って私のそばから離れていく。必要最低限の会話と仕事さえしていれば、特に文句は言われないし悪評も広がらないので、その辺は臨時の良さよね。
「あー、ロテアさん、ちょっと南の方に行くんですけどどうですか?」
「今日はそっちにはいかないし、暫くゼンをメインにする」
「まだ機械工学探してるんですか?」
「それが目的だし」
「僕の方でもちらっと話聞いてみましたけど、ぽいのは見かけないですね」
こいつも臨時でよく合う奴、職はネクロマンサー。初見で臨時したときは、召喚したゾンビやらスケルトンやらを巻き込んでよく爆破したせいで怒られた。見た目一緒なんだよ。
「そういや新しい所見つけたとか聞いたけど?」
「ああ、ヴィエの近くで深めのダンジョンが見つかったって話ですか……あれ、ただのどん詰まりだったって」
「地下かあ……」
何時も書いているメモ帳に書き込んでいたヴィエの地下ダンジョンの所に×印を入れて一息。こうして話を聞いて怪しい所はメモして臨時なり自分の足で探しに行っている。勿論だけどそのほかにNPCのクエストもこなしている。まあこっちは○○を倒せ、○○を持ってこい。こういうのが多いのであまり苦労はしていない。
「んじゃ、僕も臨時集めるんで」
「はいはい」
こういう感じに臨時パーティを募集している、エルスタンの一角で情報交換をしつつ足場を固めている。とは言え、ちょっと疑問に感じる事が出てきて、βの段階でアホ程やりこんでいた連中がマップを把握しきれなかったという割には、結構あっさりとゼンまで見つけ、それ以上先のエリア、10-6まで開拓されている。で、そのエリアまで行くとどん詰まりと言うか、一応一周する形になる。南10-6まで行ったら北10-6に行く、と言った感じでループする。だからこんなにあちこち行き捲ってる割に「妙に狭い」と言った感じだ。
「マップは、あちこち行ったから大体踏破出来てるけど、やっぱ微妙に狭いんよなあ……」
開発や運営が進行具合に合わせてそれとなく教えるみたいなことをする場合もあるけど、そういった流れはなし。定期的なアプデは不具合だったり、細かいバランス調整が多いのであんまり関係はない。データもまだまだマスクしているのもあるだろうから、発見してから出すってのは分かるんだけど。
「NPCのクエストも結構見つけてはやって、好感度ぽいのは上がってるけど進展はないし、情報も出てこない、そろそろ本気で詰んだかなあ」
ふいーっと大きく息を吐き出しつつ、ゼン周辺での臨時パーティを探す。自分でパーティを立ち上げても良いんだが、何処のエリアで戦うかで募集できる人が決まってくるので、大体いつも募集している連中を探すといった方が正しい。
「ふーむ……今日はいつもの連中はいないか」
なので今日に関してはNPCのクエストを片付ける日にするか、エリアの探索をメインにするか、どうしようか。
「とりあえずゼンに行くかあ、現地のパーティ募集でも探しつつ探索……はひたすらやってたわ」
トラッカー使ってしらみつぶしに探し回ったのは思い切り空振りだし、今の所NPCも空振りって事だから……あれこれ考えながらレベリングしつつ、顔見知りから情報を貰いつつ……ってのはずっとやってるから、ここらで何かしらカンフル剤的なものがあれば良いんだけど。
「トカゲ野郎から貰った銃もそろそろガタが来ているし一回戻ってってのありかな……『アカメ』として顔出すのも良いけど」
一応生存報告って形でアカメに戻ってはロテアになってをやっていたが、特に心配されることも無かったし、いたからなんだかんだと言った事もなし。うんまあ、なんかそれはそれでちょっと寂しい感じもあるけど。とにかくゼンに移動するために、街の転送屋に頼んであっという間に飛んでいく。
「さて……一応街の方を回ってクエストの漏れが無いのを確認して、臨時行くか」
あんまり変わらない街並みを歩いて、さんざん見てきたNPC達を見て、話して……それと並行してトラッカーでの周囲探索、それが終わったら臨時に顔を出して、募集がないかをチェック。なかったらエリアの探索しつつソロ活動。
「それにしても地下なあ……ドワーフあたりの種族が機械ってのはあり得そうな話ではあるけど、地下だと蒸気機関辺りも……」
そこまで行ってぱちりと指を鳴らす。
「機械工学で一発って訳じゃなくて蒸気機関って線は考えてなかった」
スチームパンクのゲームも好きだってのにすっかりすっぽ抜けていた。
「って事は、アプローチの仕方を変えて……もう少し手近な所から探したら……」
ぶつくさ言いながら街のど真ん中でメモ帳を開いてあれこれ考える。
『ロテアちゃん、今どこ?』
『ゼンで考え事』
『東エリア9-3で狩りでもしようと思ってるんだけど行かない?』
『分かった、集合場所は?』
『ゼフの東口』
『りょーかい』
こいつも臨時で知り合った一人。トンファー使う格闘家。まー、ニッチな武器だ事。こんな感じで結構誘われたりするので、忙しかったり。
「とりあえず軽く暴れてすっきりしてから動くか」
こういうのは気分転換が大事。




