348話 ログアウトした後は平和
「あれー?アカメちゃんはぁ?」
「ガンナーギルドで材料買ってボックスに突っ込んでから落ちたよー」
「それで、新しい銃は作れたの?」
いつものバトルジャンキー3人組でアカメが見つけたダンジョンにボス目的でやってきている。パーティとしてみたら確実にバランスの悪い組み合わせなのだが、それでもどうにかなるのは個々の実力が異様に高く、回復は全部自前、何だったら攻撃を当てられたらそいつが悪いって言う暗黙のルールすらある。
「出来たよー、バイパーさんが張り切ってフル合金の拳銃作ってくれたから」
「あたしもそういうの作ってもらおっかなぁ」
「鍛冶も出来るって言うし、私も刀の1本や2本作ってもらおうかな」
こうして軽口を叩きながらもモンスターの相手は怠らず、オークのつらら落としの攻撃はマイカが飛び上がり、特注で作った拘束衣から伸ばしておいた先端に重りの付いた皮ベルトを体を回しての遠心力で振り回し、つららを叩き落としてから空中で回転を横にして、そのままオークの頭蓋に上から蹴りをお見舞いする。
「やるう」
「ま、雑魚は余裕よねぇ」
「感覚が麻痺してるけど、ここってレベルアベレージ高いんだけどなあ」
ポリゴン状に消失していくオークの横、別のオークが斧を持って思い切り振りかぶるので、バイオレットが前に。振ってくる斧の攻撃を刀の刃で受け滑らせ、地面に斧がしっかり叩きこまれたのを見てから体を捻り回して、胴体を真っ二つに。
「じゃ、次ももちゃんね」
「その順番に倒すルールやめようよー」
「いいからいいからぁー」
音に反応したのか一番の大物であるサメが地面を泳ぎつつこっちに向かってくるのを、死ぬほど大きいため息を吐いたももえが新造した拳銃2丁を構えて迎撃開始。と、言ってもそこまで難しい事をするわけではなく、大きく口を開けて噛んでくるのに合わせて口の中に撃ちまくる。ついでに言えば腕だけ噛まれてもそのまま中に撃ちまくるだけの脳筋プレイと言える。
「私の時だけ相手きつくない!?」
「倒せてるからいいじゃん」
じゃこんと音をさせながらマガジンをインベントリに直接放り込み、肩掛けのガンベルトからマガジンを入れ直してガンベルトに2丁拳銃をしゅぱっと仕舞う。何だかんだで戦い方が精錬されてきたおかげもあり、この一連の動作に迷いやもたつきがでなくなっている。
「そもそもダンジョンボスメインだから余計な消耗したくないのにー」
「アイスドラゴンだっけ、安直な名前よね」
「アカメちゃんと十兵衛ちゃんでワンパンだって言ってたから弱い方だと思うけどぉ」
「いやいや、ボスはそもそもFWSがあるし、十兵衛さんだって酒好きのダメ親父みたいに見えて槍使いとしてかなり強いから」
そんな事をやんややんやと言い合いながらボス部屋の所に。アカメがワンパンもといワンショットで倒したアイスドラゴンだが、ファンタジーによくいるでかいドラゴンという感じで、全体的に青みがあるドラゴンがエリアでどっしり構えて侵入してきた相手に対して牙をむいてくる。
のだが、そんなでかくて強そうってだけでぎゅっぎゅと足元を確認するマイカ、ナイフの柄にワイヤーを通して何本も一度に投げられるようにしたものを準備するバイオレット、いつも使っている銃じゃなくてやけにでかい銃を引き抜いて準備するももえ。
「あれ、それなーにぃ?」
「バイパーさんが、ボスに渡す前に試射して来いって」
「いいじゃんいいじゃん、使い潰してやろ」
アイスドラゴンが「こっちからやるぞ?」みたいな一間を置いてから、それぞれ騒いでいる3人に対していきなりの振り下ろし攻撃。
当たり前だが、攻撃されればすぐに察知して回避行動をする。ちなみに遅れた奴にはもれなく誰かの蹴りなり峰打ちの攻撃で無理やり回避させられるのがバトルジャンキー組のルールだったりする。
「中々振りは早いねー、後は尻尾と体当たりって感じかな」
「ブレスも警戒かなぁ、確実に凍結は食らうと思うよぉ」
「火炎瓶用意しとく?」
どんどんと地面を揺らすので上からつららが落ちてくるので、それはそれぞれ回避、前2人中1人の基本陣形で尻尾や、腕、翼をはばたかせての風圧で攻撃してくる。
「やっぱ結構バリエーション多いね、ちょっと武器かえよーっと」
「んー、重りの部分フックにしたらいいかもぉ」
前2人は前線で攻撃を紙一重で避けつつ、メニューを開いて装備を切り替えたりする。たまにそこそこの攻撃を貰って吹っ飛びながらも楽しそうに笑みを浮かべて直ぐに攻撃に移る。
「やっぱ私ってまだ普通だよねー」
ももえもアカメ専用として作った特性の合金銃を抜いて両手で持ちつつ、前2人の援護をするようにちょこちょこと移動しつつ、良い所を狙う。
アイスドラゴンの大振りの攻撃を搔い潜り、斬撃音と打撃音が響くのに合わせて狙いを付ける。
「ばきゅーん」
なんて可愛い事を言ってみたりしながら、専用の合金銃を両手で構えしっかり持った状態で引き金を絞る。と、ドゴンと銃声じゃない音を響かせると共に思いっきり後ろに倒れて尻もちを付いてごろごろと転がる。
「……馬鹿じゃないの!」
硝煙を燻らせている専用銃をインベントリに仕舞い、自分の銃を出そうとするが、うまく握れず回避行動に専念する。ちょっとした異常事態というか予想外の事なので自分のステータスを開いて確認。痺れ(手)というのになり、うまく武器を握れない状態になっているのを見てため息一つ。
「ごめん、暫く攻撃出来ない」
「そういうスキルなら言って置いてくれないかな」
「知らん攻撃する時は言う約束だよねぇ」
「だって通常攻撃であんなんなるなんて知らんし!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎつつ、アイスドラゴンを困らせるものの、討伐するのにはさほど時間は掛からなかった。
「んだよ、型作ったのに使わねえのか?」
「いや、使うよ、それはそれで使い道があるからさ」
「アカメの奴が合金見つけたんだろ、それ、こっちにも回せねえか」
「木工なのに使うのか」
「良い道具には良い材料を使って作りたいんだよ、分かるだろ」
銃身と銃フレームを組み合わせを調べ、銃身の出来を覗いて確認している横でニーナが共有ボックスの中身を調べ、勝手にレアメタルを漁り始める。
「こんなんで良いの作れるのか」
「ちゃんと仕上げてやるから欲しい物リスト化してくれよ」
「ったく、アカメの奴はさっさといなくなるし、お前ら人使い荒すぎなんだよ」
「おかげで良い環境が出来てるよ」
「……それで、どんなのを作ったんだ」
「アカメの奴が持て余して泣き言言うような奴」
トカゲの顔でにかっと笑い、ニーナがやれやれとため息を吐きだす




