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最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職  作者: 鎌霧
12章

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328話 外堀は勝手に埋まる

「あのドラゴンマジでムカつく」


 何度目かの対空砲として使用している大筒を発射し、やっとのことで叩き落とすのだが、おかわりが来るのが早い。と、言っても落とすのに結構時間が掛かるので、もたついているうちにやってくるってだけなので、もたついている私が悪いんだが。


「攻撃対象の優先として後衛を狙うっぽいな、あれ」

「もう大筒5本も駄目にされてんだからそりゃそうよ」

「材料費安いだろ」

「安いとか高いとかじゃなくて、単純にムカつくのよ」


 大きい鉄パイプ作って、底塞いで、刻印入れる作業の簡単な構造のものではあるが、そこそこ手間が掛かるので潰されるとそれなりにイラっとする。装備と違って通常のアイテムになるわけで、破損や故障が起きる事が無いので何かしらの外的要因が発生して壊れたら一発でおじゃん、ポリゴン状に消失していって無慈悲に消えていく。

 飛行系だし、遮蔽物もないから範囲をぶっ放したら余裕だと思っていたら案外機敏でやんの。しかも鬱陶しいのは少し対空の手を止めると、前中衛の5人に容赦なく空中から火球で攻撃するって点だ。リロード隙の時に髭親父が被弾して瀕死になりかけた。


 そんな事を思い出していれば当たり前だが、上空からの火球攻撃が飛んでくるので飛び避けつつ大筒の準備。


「やっぱりセット品作っておいた方が良かっただろ!」

「量りとバラで売ってたし、こんな敵出てくるのは知らんかったんだよ!」


 バラララっと機関銃特有の軽快な音を隣でさせている間に大筒に火薬と鉄片を装填、脇に抱えて上空にいるドラゴンにぶっぱなす。勿論固定していないので反動が凄まじく、ぶっ放すと共に大筒を落とすし、私も後ろに倒れるしで大変だよ。

 その大変な動作の甲斐もあってか片翼を吹っ飛ばすことが出来たので、そのまま鳴き声と共に落下し始める。


『ももえ、落ちてくるのをやれ!』

『ういー、了解ー!』


 中衛に配置しておいたポンコツ、こいつが意外といい仕事をしてくれる。何だかんだで言った事をやれるし、火力も動きも悪くないから結構信頼している。が、絶対に本人には言わないでおく。

 

 そうして言われた通り、落ちてきたドラゴンに向けてお得意の2丁拳銃でもう片翼を撃ち抜き、さらに落下速度が上がる。元々が上空15mくらいの所にいたし、このまま落ちたら落下ダメージで撃破できる……前に、ジャンキーの奴が空中で何度かステップを踏んで落ちてきたドラゴンをオーバーヘッドシュート。

 火球とブレスを吐き出し暴れまわっていたのもあり、蹴りで錐もみ回転しつつ、地上のモンスター群にぶつけて土煙を上げさせる。


『ボスに任されたのにー!』

『ナイス援護ぉ』


 そのまま上空で体勢を立て直して、拘束衣の袖部分をたなびかせながら着地。空中すら飛び上がれるってあいつのスキルどんな風になってるんだ。


『いいなあ、空中歩行……蹴り技のスキル上げないと覚えられないんだよね』

『あたしこれ以外出来ないしねぇ』


 この状況でも楽しんで動けるあいつらってやっぱり頭おかしい。


『このクランでやっていく自信が無いです……』

『代わりの回復役を見つけて来ればアカメから解放されるぞ』

『T2Wのヒーラーって貴重なんですよ!』


 必死に回復を振りまいている犬耳の泣き言が聞こえるが、今回のイベントを機に駆り出すのをやめてやろう。私がもうちょっと人員をちゃんと集めればいい話。


「とりあえずこれでめぼしい空の敵は片付けたか」

「あれくらいに高所を取ってるモンスターってエリア4にいるの?」

「いや、見たことない……と、言っても俺もあまりエリア4に行かないからなあ……」


 戦闘力が対人に割り振りすぎなんだよ。


『前の方はどうなの』

『まばらにはなってきたからもう少しだ、後ろに下がったおかげで分散して高範囲にモンスターが広がったんだろう』

『このまま押して行こう、ももえは前衛に、私が中衛に入る』

『対空はどうする?』

『来ない事を祈るしかないね、来たら来たで私とバイパーが対応は変わらず』

『どうせ後は行き当たりばったりでしょ?』

『そうそう、強く当たって後は流れでぇ』


 よくわかってるじゃない。


『最後だ、派手に行くぞ!』


 発破をかけると共に、最後の力……と言う訳では無いが、ギアを上げて戦闘再開する。








「向こうは大変みたいですね」

「こっちもこっちで大変だろうが」


 菖蒲とニーナが露店街の一角で珍しく2人揃って歩いて行く。

 今回のイベント自体は完全に足手まといになるのを分かっていたので、アカメのいない所でアカメの気にしていない所を突いて行こうと言った感じで話し合った結果でもある。


「例の商人連中、俺様の領域にまで手出して来やがったからな、そろそろお灸を据えねえとな」

「……奇遇ですね、同じように手を出されています」

「まあ、ゲームだから真似して売ったり作ったりは自由だってのわかんだけどよ……」


 ニーナが頭を掻くような動作をしてから思いっきりため息を吐き出す。


「人の名前を勝手に使うような奴には、容赦しねえよ」

「ボスが怒る理由もよくわかります」

「で、てめえは何を用意してきたんだ」

「ああ、それはですね……」

「あたしよぉ♪」


 2人の後ろから体をくねらせながら近づいてくる薫。

 流石にでかい体なだけあって、他のプレイヤーもその3人を見て少し距離を取る。傍から見たら大中小のプレイヤーが並んで歩いているので目立ってしょうがない。


「別にいいのよね、買ったのを転売するってのはね?ただ人の名前に乗っかるってのは、ねえ」


 少し困ったような顔をしているが、目は完全に笑っていない。

 

「ま、簡単に言えば、敵にしちゃいけない相手を敵にしちゃったって事かしらねぇ」

「違いないね」


 さらに薫の横から鍛冶クランのマスター、カコルがひょこっと出てくる。生産職の横のつながりと言うのは中々広く、戦闘職よりもバチバチじゃないので大きいクランは基本的に相互で繋がっている。

 

「私の知り合いも呼んでおいたよん」


 もう数人のプレイヤーがカコルの近くにより、とりあえずその場で全員が顔合わせ……するまでも無く、大体は知っている顔なのでこれからどうするかの話をし始める。


「ぞろぞろついてきやがって……とりあえず商人連中の露店見つけて問いただしてやるか?」

「効果的なのはそれと、向こうより質の良い物をこっちが売るってのもありか」

「例の商人クランのプレイヤー名全員ブラックリスト化して大きめの生産クランに回しておくわ」

「クランで直で買った証明が出来るように製作者の項目をクラン名に設定しよっか」


 合わせて色々と対策を入れられる意見がどんどん出てくるたびに、外堀を埋めていく。

 

「後はアカメが止めを刺してくれりゃ二度と世間に顔向けできねえな」

「対応早かったですからね」

「とりあえず、例の商人連中のとこに殴り込みにいきましょ」


 薫がしゅっしゅとシャドーをしつつ、その商人の露店に全員を案内。

 そこから各生産クランのクラン員が、露店の商品をわざわざ購入して、自分たちの所で売ってないものだけど、どうやって作ったのか、どこから仕入れたのかを辺りに聞こえるように話しつつ、それに反応したプレイヤーに事細かく説明を入れていく。

 かいつまんで言うと、うちでこんなもの売ってないのに、名前含めて真似しているからパチモンに気を付けろと言うだけなのだが。


「……プレイヤー間の評判が悪いって中々ですね」

「やってんのはマスター周りらしいけどな、普通のクラン員は知らねえってよ」

「片棒担いでるならアウトな気もするんですけど」

「ヤバいなって思った奴はさっさと抜けてるだろ、知ってて甘い汁吸ってんなら同罪だ」

「そんなにムカついたんですか」

「ああ、ムカついたね」

「……ボスもそうですけど、敵に容赦ないクランだ」


 ニーナが明らかに不機嫌になったのを見て、ぽつりとそんな事をこぼす。

 決着は今日中に付きそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「で、てめえは何を用意してきたんだ」 「ああ、それはですね……」 「あたしよぉ♪(生物兵器」 心に残る名シーンだと思った
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