252話 大物狩り
大規模レイド。
その場にいる連中ひっくるめて全員で戦い合うルールで、あのデカブツに攻撃を当てる事で参加判定になる。初心者にも建物にも優しいので、攻撃さえしなければダメージは食らわないし、建物は派手に吹っ飛んでいるように見えて実は無傷なので参加していない奴は騒音とエフェクトにさえ耐えられればショップの買い物もできる。
ただ逆を言えば、一回攻撃を当てて参加すると死ぬか距離を離さないと周りの施設を使えないらしい。
「で、これ以外のルールは?」
「知らん、いきなりインフォが飛んできたからな」
街の拡張とイベントモンスターの出現で私のクランハウスから街の中心までそこそこの距離に拡張されていたので、その道中にこのイベントのルールを確認しておく。
「こういう怪獣イベントって大体参加しないのがきゃーきゃー言うもんだけど、全員準備したりアイテム補充したりしながら参加するってのが良いとこよね」
「俺とももえ、ボスは銃弾ありきだから、何回かクランハウスに戻るのも視野に入れないと」
「前衛組は回復アイテムさえ補充出来ればいいだろ?」
「バフ用の酒だ、飲んで置け」
「私未成年なんだけどなー」
ポンコツピンクがなぜポンコツか垣間見えた気がする。このクランかなり年齢幅があるって事だな。上は爺で下は未成年って。まあ、そういうのがオンラインゲームの面白い所ではあるが。
「んぐ、んぐ……料理系プレイヤー欲しいねぇ、お腹たぷたぷになるぅ」
「それじゃあ、これで目立って社員募集でもするか」
貰った酒瓶をあおってステータスにバフを掛ける。味としては焼酎だな、ちなみに加算されるバフはSTR5とDEX5の攻撃職向けの物だ。確かこの酒、うちのショップでも売れ行きが結構高いんだよな。
リアルじゃやってはいけないが、ゲームじゃ一気に1瓶飲み干し道端に空瓶を地面に叩きつけ割る。
「戦い方はいつも通り、後ろは私とバイパー、残りは全員前」
「後ろの盾役は儂がやろう」
「じゃあマイカさんを主力がいいかな?」
「爺さんより俺様が盾がいいだろ、メインはジャンキーと爺さん、ポンコツだ」
徐々に近づいているレイドボスを見上げながら全員の行動方針を固める。あのニーナがまともに自分の動き方を考えているとは……何かしら心境の変化でもあったのかね。
「盾はいらないんじゃないかなぁ、多分一発で吹っ飛ぶから立て直しの時間はあると思うよぉ?」
「じゃあ、全員攻勢に出ようか」
110m対艦ライフルを仕舞い、FWS用の砲身を抜き出し、CHを装着して準備。いくらイベント用として威力に制限が掛かっているとは言え、高威力ってのは変わりないし、何よりも派手だ。これの一発で戦闘開始ってなったら、そりゃあ目立つぞ。
『混戦すると声が通らないから原則クラン会話に切り替えるわよ』
それぞれクラン会話で了解と返事をし、全員がレイドボスの射程圏内に捉えた所でFWSのチャージを開始する。元々はチャージ15秒固定ダメージ∞のチートスキルなわけだが、今に限っては固定ダメージ2500のチャージ30秒に弱体化。むしろこれでも十分強いんだが。
『一発狼煙を上げたら戦闘開始、方針はさっき話した通り、後は適当にあいつを倒す』
砲身の展開が始まり、砲身内蔵のバイポット固定されたのを確認してから葉巻を出して咥える。サモナーやテイマー系の主従関係の結べる職ならうちの敏腕秘書をロボ扱いで召喚してライター代わりにもできるってのになあ。
……そういやすっかり取るの忘れていたサブ職でそういうのを狙ってみるのもいいかもしれん。
閑話休題。
とにかく加えた葉巻に火を付けてからチャージ開始。
『相変わらずのでかい音だ』
『あれ、配信の時も不評なんだよねえ』
おーおー、その不評の音をがんがん響かせて視聴者数と再生数伸ばしてたやつが何を言ってるのやら。
まったくと心の中で呟きつつ、チャージ待ちの間に紫煙を漂わせている横をクラン員の連中が得物を構えて走り抜けていく。
やっぱりと言うか、当たり前だがマイカが一番先頭を走り、一気に接近し、攻撃……の前に、レイドボスの頭を飛び上がっていく。
ああいう曲芸が出来るのもあいつ特徴だな。
『撃つ前に一言』
引き金に指を掛け、レイドボスの頭よりも少し下、喉元辺りに狙いを付けながらぽつぽつと言葉を。
『ぶっちゃけ今までうちのクランって、目立ってはいたけど、どーも勝てなかったわけでしょ』
1ヵ月くらいゲームをやっている状態での今までの戦績だな。上位には行けるわけだけど、いまいち勝ちを拾えない。レースイベントの時は身内でやり合っていただけだからそこまで順位に拘っていなかったが、最初のイベント、対人イベント合わせても個人での1位が無い訳で。
『このイベントで順位が着くかどうかは分からないけど、一番派手にあいつを叩きのめして、目立ってやろうと思ってね』
『そんな野心があるとは思ってなかったな』
『うちのクランは金遣いが荒いからな、目立って大きく商売を広げようって事もあるけど……やるならやるで、思いっきり悪目立ちしようって方針に今決めた』
『アカメちゃん、あっくにーん』
『……そういやモンスターってトロフィー化できるらしいけど、イベモンスも出来ると思うか?』
『通常ボスが行けるんだから行けるだろ、結構場所占拠する趣味家具扱いだけどな、めんどくせーんだよなあ、あれ作んの』
『って言うか、何でそんな気楽に倒そうと思えるのかが不思議なんですけどー!』
わいわいがやがやとクラン会話をしながら全員がイベントモンスターを攻撃できる配置に完了。いいね、あのイベモンスの頭もぎ取ってマイハウスの一室全部使って飾ってやろう。
『いいね、あいつの首もぎ取ってうちに飾ってやろう……いくぞ』
だらだらとした会話がぴたりと止み、全員が臨戦態勢に入ったのを何となく感じ取ると共に紫煙を大きく吸い、ぴたりと止めて、煙の味を楽しみながら引き金を絞る。
甲高い音が止むと共に光線が一筋、イベントモンスターの首元を貫くと、大きく咆哮を上げてくる。なかなかでかい声を上げてくるじゃないか。それくらい抵抗してくれる方がこっちもそそるってもんよ。
『あの一撃食らってぴんぴんしている辺り、、どんだけHPあるんだろうか』
『何、倒すまで攻撃すりゃいつか死ぬさ』
私の少し前方で連続した発砲音が響き始め、攻撃開始。
さっさとFWSの砲身とCHを分離して、インベントリとガンベルトにそれぞれ仕舞った後に110mm対艦ライフルを取り出し、大通りから手頃な建物の上に登っていく。
それにしても、このライフル重いな。
「さーてと……どこまで出来るか楽しみだな、このライフル」
屋上に上がり、伏せの状態になってからアイアンサイト状態のライフルでレイドボスを眺める。
「いやー、でかいな……伏せ撃ちしなくても適当に撃っても当たるわ、これ」
全長40mくらいかな。でかい的だよでかい的。
『こいつ、でかいのが仇になってて、接近戦に弱いねぇ』
『油断すると手を噛まれちゃうんだよねー』
『マイカ、横からだ』
当たり前だが他のプレイヤーも同じように屋上に登って魔法攻撃だったり、マイカの様に飛び上がって近接攻撃を繰り出している。
その他のプレイヤーを薙ぎ払う攻撃の範囲内にいたのか、マイカがその攻撃を防ぎきれずに建物の一つへ叩き落とされる。
おー、こわ、あんのくらったら死ぬとか死なないの前に、めんどくさいわ。
『いったぁ!』
『油断してんじゃねーよ、バーカ!』
『他プレイヤーもいるから、それを考慮しないと駄目だろうに』
『そこがいつもと違うんだから、気を付けなさい、あんた達』
吹っ飛んだのを照準越しに見つめたが、まあすぐ復帰するとだろうと思い、110mm対艦ライフルの引き金を絞り、ドスっと鈍い音をさせながら攻撃を命中させていく。
まだ距離もあるし、このまま遠距離でちまちまダメージを与えて、最後にまたラッシュを掛けるか。
「こんな事ならFWSを最後まで取っておくのもありだったな」
こらー、うっかりしてたぜ。
名前:アカメ 種族:ドラゴニアン
職業:ケルベロス
基本Lv:36 職業Lv:42
HP:57/57 MP:23/23
STR:15 AGI:1(24) DEX:21
VIT:2 INT:2 RES:2
SP:残9
【スキル1】
カスタマイズLv5(MAX) ガンスミスLv5(MAX) トラッカーLv5(MAX)
銃剣Lv5(MAX) 装填Lv5(MAX) 大型銃器Lv5(MAX) HS.Lv2(OFF)
早撃ちLV1 局所撃ちLV0 銃捌きLV1 2丁拳銃Lv1 跳弾Lv1 曲撃ちLv3
銃格闘Lv3 二度撃ちLv1 調合Lv1
【職業Lv外】
幽霊退治Lv1 銃素材割引 銃弾取引権 生活火魔法 ボマーLv5(MAX)
FWS.Lv1(MAX) ボスキラーLv1
【スキル2】
木工Lv7 鍛冶Lv10 錬金Lv6 裁縫Lv3 細工Lv4
伐採Lv6 採掘Lv15 採取Lv5 料理Lv3 農業Lv10
【装備】
武器:110mm対艦ライフル(装弾×0)
防具:パンツスーツ(黒) コンバットブーツ 強化グローブ キャットスーツ
装飾:耐火コート ガンベルト(銃弾×20)丸サングラス(黒)
スキン:カジュアル服装(宇宙猫T)
その他:銃弾×62 双眼鏡
:G4シュバルベLM(装弾×18) CH(装弾×1)
:FWS専用砲身 カスタムM2ラビット(劣化)(装弾×5)
【持ち物】
HP下級ポーション×25 MP下級ポーション×25
葉巻×45 バケツ×20 マガジン(G4)×1
錬金窯 伐採斧 鍬 採掘つるはし 剣先スコップ
所持金:0Z(397,620Z) イベントP:10
状態:異常無し
【所属ギルド】
1:農業 Lv5 貢献度50
2:木工 Lv2 貢献度25
3:ガンナーLv7 貢献度110
【所属クラン】
ヴェンガンズカンパニー CLv3
Lクランハウス+1F広増設 地上3F地下2F
1Fショップ化、防音個室1、裁縫作業場試着室有り
2Fリビング
3F部屋空有り
地下1F 射撃場銃工房
地下2F 蒸留場
専用NPC
サイオン、アイオン、シオン
クラン資金3,472,170Z
【自宅エリア】
L家 地下3F(1~2F酒造樽×30) 庭(拡張1) 小屋1件
裁縫細工作業場 キッチン 鍛冶炉 錬金窯 木工加工場
L畑20面(ジャガイモ×2500) 硝石丘20㎏(生成中




