215話 だからお前は廃人なのだ
少し遡り。
「さーて、どうやって攻略しようか……レースイベントだけど、妨害ありありだし、戦闘力は増やしておきたいしなあ」
イベント概要を閉じて一息入れて、どうするかと考える。とりあえずレベルとしては35まで、あと5個上げるのは確定で、残りは防御力だな。
新しいスーツも欲しいから、ゴリマッチョの所に行くのも必要か。
そうしてとりあえずやる事をぱっと思いつくままにいつものメモ帳につらつらと書いていくのだが、実はそこまでやる事はなかったりする。
銃弾を増やすと言うのはそもそもガンナーとしての宿命なので何かあるたびに銃弾を用意するのは当たり前、結局のところレベリングと装備を揃えるって部分で後は立ち回りくらいだ。
じゃあどこでレベリングをするかって話にもなる。
ただ、あまり銃弾をケチるとレベリングの効率が下がるし、かといって使わない程度の相手してもそこはレベリングの効率がまた悪い。
「場所的には……うーん、とりあえずエリア2の30ちょいの所で考えておくとして、先に防具をどうにかするか」
で、やってきたのが、毎回防具の発注を頼んでいるゴリマッチョの所。
相変わらずの札束ビンタでスーツを頼むだけなので、受付の呼び鈴をじゃんじゃんと鳴らす。
暫くするとゴリマッチョ……ではない、別のクラン員が下りてくる。
「いらっしゃいませ、ご用件は」
「あれ、薫の奴は?」
「クラマスはリアルで用事があるとかで」
「ふーむ……スーツ頼もうと思ってたんだけどなぁ」
「何着か作ってあるもので良ければ今すぐご用意できますが」
「んー、それでもいいけど、要求が低くないから、数打ち品はなあ……」
「大丈夫ですよ、クラマスが作ったスーツなので」
だったら、と言いながら何着かの試着をするが、現状のスーツの方が性能がいいから、なんとも言えない。
決して悪くはないのだが、カラーバリエーションくらいしか価値が無いな。
わざわざ試着室まで作って色々着替えてからまたいつものスーツで試着室から出てきて、一息。
「やっぱりオーダーメイドじゃないと駄目だわ。悪くはないけど、今より性能が低いし。とりあえず薫の奴に私が着てるスーツよりもう1段階くらい強いスーツをイベント前に用意してって伝えて」
「えっと、それ、自分に作らせてもらえませんか?」
「無理だな、薫以上に良い装備作れるって確証も無いし時間が無い。じゃあ予算は25万から30万、そういう訳だから伝えておいて」
「じゃあ、時間があれば?」
「時間を掛けりゃいいってもんじゃないのよ。こっちの指定した時間で納得できるものを作れるってなら専属にしてやってもいーわよ」
とりあえず防具に関しちゃこれで良し。
注文を口頭でついでに言えば人伝で頼んだが、まあ明日以降にもう一度こっちからゴリマッチョに連絡入れればいいだろう。少し改良していいスーツ作ってくれんだろ、あいつなら。
で、防具に関してはとりあえず保留って事で、後はレベリングだ。
とりあえずパッと思いついた所で北東エリア2だな、丁度よく人型だし、数もいる上に接近戦の練習もできる。
前にやった時はパイプ爆弾のごり押しで攻略したが、今回はガチで接近戦で良いだろう。
戦い方だけで言えば、ガンシールドで受けてからの反撃と、銃の入れ替えに、複数に狙われるのを考えると2丁拳銃は欲しいな。
後は合わせてガンナーギルドのスキル取得促し系のクエストもやりつつって所か。
うーん、このイベント前の急な強化ってのが多い気がするな。
それでもいつもに比べればまだマシって所か。
「とりあえずガンナーギルド行って、クエスト受けてから北東エリアに行こか」
そういう訳でさくっとギルドの受付でクエストを受け、ついでにあのクソ精度のマシンガンを追加購入。レース物だと乗っている物によっては当てやすいだろうから、使い道はありそうだし、何よりもフルオート。
ついでにマガジンもギルドショップで購入できるようになっていたので数本買っておく。
そういえばマガジンも銃弾と同じく、ある程度兼用できる親切設計。拳銃用、マシンガン用、SMG用と、専門性は分かれるが、それでも煩雑化を抑えているわけだな。
それから後はもう、ひたすらレベリングして、たまに自宅に戻ってジャガイモ収穫して、金作っての繰り返し。
北東エリアの三つ巴マップでオークやらコボルトやらドレイク相手にガンシールドを駆使しての切った張った、撃ちまわってどうこうするって感じに進めていく訳だが、結局30から35になるまではほぼみっちり通い詰め。
ついでに言えばスキルも3個ほど新しく手に入れたので、残っていたのと新しく追加されたSPの割り振り、5ポイント分は全部STRに回してやっとケロ銃を装備。
これがまあ時間のかかる事で、イベント開始の半日前くらいまで掛かったかな。
「それで、服はどうなったんだ?」
「んー?結局ゴリマッチョの奴から貰ったよ、ただ価格的には20万だったけど」
「予算よりも大分少ないな」
「そう、受付してくれた子がゴリマッチョと一緒になって作ったからってのと、その子が少し金額出したんだって」
「本当にうちの専属になりそうだな」
「まー、それもありかなあ、あとは本人の気持ち次第じゃない?」
葉巻を咥えてぷかっといつもの様に煙を吐き出しつつ、何をやっていたかの話を続ける。
「それで、あのFWSはどこで手に入れたんだ」
「あー、あれ、35Lvになってガンナーギルドで話してたら貰えたかな、ケルベロスの専用スキルって事でね」
「他の職と変わらないよぉ?多分それって二次職の特殊スキルだねぇ」
知らない間にバトルジャンキーも話に加わっておとなしく人の話を聞き始めている。
「あー、そんな事言ってたわ、もう何個かあったけど、それはそれで別のタイミングで貰えるって」
「あたしの強化もそっち系だねぇ、超強化と部分強化はそれぞれ35と45の時に手に入れたしぃ」
「儂の場合はマイカに出した突きがそうだが、奥義と言うよりも使い勝手のいい技だったが」
「職によるっぽいねぇ、強力なのはデメリット含めておっきいけどぉ、そこまで強力なのじゃないと万能って感じぃ」
やはり戦闘関係はバトルジャンキーが優秀だな。
どこで仕入れてきたんだって話が結構あるので戦闘以外も結構役に立つんだな。
「で、まあ、準備としてはそこまで大きくやってないのよ、今回ばっかりは」
レベリングと金策して、後は立ち回りの意識を変えたって所、新スキルを何個か覚えてそれにSPを振ったって位だな。
新しいスキルは新しいスキルでまた別の機会と言うか、べらべら話す必要も無いので、特にはいいか。ももえとバイパーと話す時に言えばいいし。
「後はあれ、乗ってた機体の種明かしは?」
「ああ、あれね、それはだな」
『アカメ様、お客様がクランハウスにお見えになっております』
『あー……今そっち行くわ』
『ではお茶をお出ししておきます』
「悪い、ちょっと出てくるから、話はまた後で」
「終わったイベントの話だからな、忘れんうちに頼むぞ」
「アカメちゃんもてもてー」
ひゅーひゅーと今時の子もやらないような事をされるのでぺしっと軽く頭を叩いてからクランハウスの方に転移する。
たまり場の移動がしやすいと便利だな。




