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1話 ゲーム開始

『To The World Road』





 今話題のVRMMOの新作ゲームになる。


 3週間ほどのβテストの後に、正式発表及び発売日の告知がなされると同時に予約殺到。

 ソフト本数5万本に対して予約数1500万とかいう倍率300倍を潜り抜け当選したラッキーウーマンが私だ。

 しかも初回販売に関しては日本国内のみでの販売なのにだ。ついでに追加生産分でまた5万本の出荷らしいのだが、それも予約いっぱいとのことだ。



 開発発表辺りではそうでもなかった予約数だが、公式が公開した動画やβテスターの配信等で一気に火が付いた。とにかく世界が広い、3週間びっちり使っても全体の2割程度しか解明されなかった程らしい。フルダイブ系のオープンワールドのゲームとはいえ、もう少し解明されるものと思っていたのだが全くそんなことはなかったらしい。



 そういうわけでとてつもなく広大で没入感も良し、種族も職業も豊富に用意してあるし、ガチ勢もエンジョイ勢もどうぞ。ただ世界観と運営的にPKはあまり合わないと言う事で基本的に対人はなし、所謂PvEのみとなってる。勿論資源の奪い合いや、騒動になるようなボス関係もしっかりと調整済み。


 大人も子供もおねーさんも、のようなキャッチコピーで、みんなで楽しく異世界を楽しんでください。というのが売りである。それに伴ってトラブル関係の対処も24時間対応します。という気合の入り具合。


 ガチ攻略するのも良し、生産職でユーザー間の商人生活するのも良し、ロールプレイで楽しんで良し、とにかく異世界での生活を楽しめるという事だ。





 そんなわけで私もこのゲーム、略して『T2W』を晴れてやれることに。

 ああ、なんて運がいいんだろう、いろいろなゲームをしてきたけど、VR系と言うのが初めてだし、なにより話題のフルダイブだし、やらないわけがない。


 っていうかゲーマーだったらこんな大型タイトルを敢えてやらないという捻くれたタイプもいるけど、私は違う、なんなら新しいゲームで廃人プレイでトッププレイヤーになるのを狙うほうに燃えるタイプ。




 そして、このゲームを開始するにあたってβテストの情報や公式サイトを読み漁り、操作法を始めとするシステムに関しては予習済み。


 月額課金タイプなので、課金しなくてもいいのも素敵で、最初のランダム要素さえ突破すれば後は自由に異世界生活を堪能できるというものだ。


 それでも最初のスタートは同じラインなので後はどこまでゲームを出来るかどうかだ。流石にゲーム中に死人を出すわけにはいかないのでフルダイブ中であっても、リアルタイムで12時間経過すると強制的にログアウトするようになっている。




 ここ数か月の給料もこのゲームの廃人プレイにつぎ込み、有休取ったり仕事の引継ぎ済ませたり、家の環境を整え食糧等もため込んだり。社会人している廃人なら大なり小なりこの辺の準備をやる人はいるだろうが、流石にここまで徹底的に備えているのはたぶん私だけだろう。


 フルダイブ系の以前には自分が現実で体を動かすタイプのVRも流行ったのだが、流石に360度マルチランニングツールとか、部屋にワイヤーを張ってアクロバティックな動きが出来るようにするとかはハードルが高すぎた。賃貸の部屋に用意するもんではなかったからな、あれ。


 とにもかくにも、ゲームをやる環境は揃ったので、後はサービス開始を待つばかりという事だ。



「これで死んだら本望よねぇ……流石にその辺の安全装置はばりばりについてるわけだけど」


 Webマニュアルを見つつ、時代は進んだなあとしみじみ。どっかの馬鹿が72時間だかずっとゲームしてたせいで煩くなったなあと思い出す。流石に廃人とは言え命あってのゲームだというのに。


 ……と、思ってたけど、20時間くらいFPSをやり続けた私が言う事ではない。あの時はまだVRなんてなかったのにとまたしみじみ思い出しながらマニュアルを読み進める。


「そういえば説明書読んでワクワクしてたのも結構昔なのよねえ、歳とったわぁ」


 今じゃどのゲームもネット接続前提のWebマニュアルだなあと、アラサー女子の悲しい思い出。でも時代が進んだからフルダイブゲームなんてできるわけだし、ゲーム内じゃ歳とか容姿とか関係ないし?なんなら自分の反応速度でゲームのステータス以上のこともできるみたいだし?やばい、現実に戻ってきたら心折れる自信あるわー。









 そんなことを思いながら前日はごろごろと過ごし、ついにサービス開始当日。

 ベッドにばふっと横になり、ヘッドマウントディスプレイを装着。完全リラックスモードになってからゲームへ接続を開始する。

 勿論ログインするのには連打だよね、これMMOの常識。サービス開始とギルド対抗戦とかイベントマップとか人気マップに行くのに何度もサーバー接続に失敗しました、なんて表示を見たことか。

 って、思っていたけどあっさりログインできるんだよね、現代の鯖強すぎる。



『To The World Roadへようこそ』



 あからさまなシステム音声が響きながら、ゲームスタートの表示が現れる。 

 まだアバターというかキャラクターを作っていないので光ってる人型、所謂白ハゲみたいなのを操作してキャラクター作成に入る。サーバーの負荷軽減なのかキャラ作成に時間制限付きという珍しいタイプだ。

 とはいえ、容姿や名前なんかはあらかじめ決めておいたものを選択できる上に、容姿に限りゲーム内でもフル変更できるので、ここはてきとーにやって後の方に時間を割くのが基本らしい。まあ、ゲーム内容に直接絡んでくる所は厳選するに限るんだけど。


「名前は、アカメ、と……もうちょっと捻ってもよかったかしら」


 ほぼ本名っていうか下の名前。ちょっとだけもじったけど。

 容姿は長身の黒髪ロングで名前にもある通り赤い目の四白眼、目つき悪いなー。

 種族はドラゴニアンという、角と尻尾の付いた竜人。体に所々鱗が付いてたりする。

 T2Wは種族での差がそこまで大きく出るわけではないが、取得スキルや伸びやすいスキル傾向が若干違うらしい。やろうと思えばトカゲとか人外みたいな容姿まで出来るらしいが、それは課金要素。ちょっとだけ種族特性が変わるって話らしい。


「ビジュアルはあらかじめ決めておいた設定を読み込ませて……」

『キャラクター作成をサポートしますか?』

「はいはい、微調整はよろしくっと」


 開発側で用意してくれてるサポートは細かい調整で美人やらイケメンに補正してくれる。どのゲームでもそうだが、やっぱりかっこ良いものを作りたいわけだし、使いたい。

 この手の話題でよく言われるのが、これから何時間も見るであろう自分のキャラクターがイマイチな出来でモチベーションを保てるかって話。

 なんなら私だって可愛い女の子で作って可愛い姿を堪能しながらゲームしたい。かっこいいのはまた別の話になるが、見た目って大事。マジ大事。

 そんなわけでさくっと長身の目つきの鋭い美人が出来上がる。いいよね、こういうギャップがある子って、ストレートに美人とかかわいい子より愛着とかいうか楽しめるし。


『ステータスを設定してください』

「さーて、本番ね」


 残り1時間で職業とステータスを吟味するわけだが、まず最初の廃人ポイントがここだ。

 まず最初の職業。数十種類ある職業からランダムで表示される4種から選択するのだが、目当ての職が出るまで引き直し。一応1枠だけレア職業が確定で出てくれるがまあ気休めだ。そうして欲しい職業を選んだらステータスの吟味に移る。


 後者もランダム制で6つのステータス項目からトータル30ポイント分を振り分けるわけだが、ここも結構難所になる。せっかくレア職業が手に入ったのにステータス吟味で手を抜くとなんとも中途半端に戦えないとか序盤で時間を食われるようになるのでスタートダッシュが切れない。

 とはいえ、どちらも満足いくまで引き直せるし、ステータスはある程度妥協しても構わない……が職業は妥協できない。目当ての職業が選択肢に出ても、再抽選ボタンを連打してたせいで引き直し続行、なんてのも十分考えられる。


 そういうわけで最初の職業ガチャ。


 狙っている職がガンナーと呼ばれる銃使いなのだが、これがβテスト時に信じられないくらいの猛威を振るった。とにかくダメージも命中率も高い上に、固定ダメージ付きで序盤の敵は一撃、ボスに関してはちゃんと立ち回ればノーダメでほぼ一方的に射殺出来るほどのDPSを叩き出せる。その代わり中盤~後半に関しては装備が揃わないと一気に最弱候補になる程のバランスめちゃくちゃな職だが。


 しかし、そんなことより何より、私にとっては銃が使えるというのが一番でかい。異世界物のRPGなのに思い切り現代銃まで出てくるのは何故かと言うと、ここの開発のそういうのが好きなスタッフがダダをこねたという話らしい。しかも結構上の人が。


 流石に実銃の名前は使えないとかライセンスの関係があるから違うけど、すげえ似せてるところは評価できるよね。あそこが違うとか、ここが違うとかぎゃーぎゃーわめく奴らが多いけど、私に言わせればガチ勢でも何でもない、ただのクレーマー。挙句の果てには再現性がないからとか言ってわめき散らすとかよく遭遇してたし、リアルじゃもっと強いとか、リロードが云々……まあうるせえよって話で。

 

 フィーリングとか大事じゃん?

 話が脱線しまくったけど、とにかく序盤から強くて後半も頑張れば維持できるって言う事。



 んで、その次の問題がステータスガチャ。

 6項目が「SAVDIR」というもので最大25最低1の数値でランダムで配置される。

 略してないのだと。

 

 STR(筋力)AGI(敏捷)VIT(体力)DEX(器用)INT(知力)RES(抵抗)


 と、なっている。

 で、狙いのガンナーに関して必要なのは、D≧A>S>V,I,Rとなる。

 DEXに関しては命中率のため、ベース命中が高いとはいえ、マップの条件等で命中率が下がるのと固定ダメージの関係で上げておいた方が無駄撃ちが少なくなる。


 次のAGIは単純に行動速度や回避、動作の素早さに関係してくるので低HPの分を回避と行動速度でカバー。

 そして最後のSTRは装備の必要条件を満たすためで、そこまで高くなくてもいいという感じ。

 他のステータス?そんなものありませんよ。

 理想数値は上から10、10、7、1×3だが、まあそこまで出せるかどうかは最初に職業が出てくるかどうかが問題になってくるわけで。



 最大の問題……私は、凄まじく運がない。ぶっちゃけこのT2Wに当たった段階で私の運はマイナスになっているだろうと確信できるくらいには運がない。だから運の絡まないゲームばかりやるわけなんだが。


「何で自由選択できないんだろうなー」


 半分死んだ目で何度も何度も職業の項目のリセットボタンを連打する。そういえばラスボスも一撃で倒せる最強の魔法を使うだけの縛りとかしてたなあと思い出すくらいには連打している。


『残り15分になります』

「うぇー、出ないなあ…」


 無慈悲なアナウンスを聞きながら連打連打。一度やり直してもう一回やればいいじゃないと思うかもしれないが、実は初回生産分に関してはキャラクリし直すのに手数料がかかる。これに関しては運営が、一度決めた運命を変えるのには対価(課金)が必要、と公言している。


『残り10分になります』

「ああ、やばいやばい、こんなに低確率なんて思ってなかったよ!」


 名人もびっくりの16連射を出来るんじゃないかというくらいには連打連打連打……こんなに連打したのなんてセミオート銃の連打してた時くらいだよ!

 そして暫く……。


『残り5分になります』

「よーし、でた!次、次ぃ!」


 やっとガンナーの項目が出現し決定、素早くステータスガチャ開始。こっちはこっちで数値を毎回確認しなきゃいけないのでさっきよりも連打が遅くなる。


 そしてここでも持ち前の運のなさを発揮する。狙ったステータスじゃない所に割り振られまくる。ちなみに時間いっぱいになるとその時決定していたステータスで次の画面に進んでしまう。

 とにかく時間いっぱい納得いくまで回しまくる。


『制限時間です、次の設定へ移ります』

「ガチャ嫌い……」


 本格的に始める前だというのに結構なエネルギーを消費した気がする。次の設定項目は初期スキルの選択とデフォ服装を選ぶだけなので、あらかじめ決めていたものを選びサクッと終わらせる。


『お疲れさまでした。これよりTo The World Roadへご案内致しますが……チュートリアルを行いますか?』

「はいはい、やるやる、一応最初に覚えておきたいし」


 このゲームのチュートリアル用エリアは真っ白な空間に青いディスプレイ一枚が浮かんでいるという割りと簡素な作りだ。ディスプレイから必要な項目だけを選んで受けられる。

 よくある報酬付きではないしマニュアルもちゃんと見たけど、復習はしておく。

 

 リアルタイム30分程でチュートリアルを終わらせて全体的な操作は完璧。

 っていうかよくよく考えたらスタートダッシュ切れてないじゃん。

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― 新着の感想 ―
[一言] ただ世界観と運営的にPKはあまり合わないと言う事で基本的に対人はなし、所謂PvEのみとなってる。勿論資源の奪い合いや、騒動になるようなボス関係もしっかりと調整済み。 ここ見落としてたとか思…
[一言] この作品pvp無いとかで離反した作品だっけとか思ったけど、これ見てて違いそうとか思った。結構文章似てるかもでも記憶が混ざってるとか、この作品前読んだ気がしても、別の理由で離反かもとかこの話よ…
[一言] あそこが違うとか、ここが違うとかぎゃーぎゃーわめく奴らが多いけど、私に言わせればガチ勢でも何でもない、ただのクレーマー。挙句の果てには再現性がないからとか言ってわめき散らすとかよく遭遇してた…
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