呼び出し
入学してから1週間が経った。
東理子は何かと接触してくるし、その親友の朝香真由里はその後ろにいるだけで会話に入ってこない。
東理子が先輩女子に呼び出されても表情崩さず見送るだけだった。本当に親友か?無関心にもほどがあるだろ......原作ではたまにめちゃくちゃ良い助言してくる百戦錬磨の様なサポキャラだったのだが、まさか本当に助言だけするヤバイ性格してる?
原作知識はあるけど朝香真由里については謎だらけだったしなぁ。
時期は違うが原作には先輩女子2人に連れられ旧校舎で水をぶっかけられるシーンがある。今まで呼び出してたのが同学年だったので今日のは少し一致している。
「あー東さんまた呼び出されてんじゃーん」
直哉がチュッパ○ャプスを舐めながら東理子を見る。
「自業自得ってところもあるけれどね」
「ありゃ心臓に毛が生えてるな!」
「昼休みに毎回呼び出されてる人初めて見た...」
入学式してから1週間で俺ら5人は学園カースト最上位まで昇り、花よ○男子のF4状態だった。そのうちF5って呼ばれそう。いやC5の方かな。
「で、隼人どーすんの?俺は良いけど紗奈にこの空気はね〜」
どうする、とは東理子を助けるか捨てるかだろう。クラスの雰囲気はきごちないし、俺らに話しかける度に雰囲気が悪くなっていってるのに気づかないほどだ。朝香がいなけりゃハブられてたと思う。
仲良くなるはずだったモブ女子まで関わりたくなさそうな顔をしている。
「過保護だな」
「俺らの総意だよ」
「はぁ、行ってくる」
丁度昼食を食べ終えたので立ち上がる。
「あまり気乗りしてないのね」
紫苑が紗奈の弁当にトマトを入れながら言う。
「厄介事は嫌いだ」
「隼人くんは平和主義だもんね、あっ、しーちゃんニンジンは食べよ?」
「別に、分けてあげてるだけよ!」
俺は廊下で捕まえた生徒に先輩女子がどっち行ったか聞いた。東理子を探しているというアピールでもある。この学校は学年ごとに階が違うので違う学年が来るのは目立つので見ていた人は結構いたみたいだ。
...あぁこの方角、完全旧校舎だな
「調子のんなっつってんの!」
早足で旧校舎に入るとそんな声が聞こえた。近くにいるらしい。木造の校舎なのにキーンと響く。
「つかさ、その顔でF5に近寄るとか何様って感じなんだけど」
F5言われてたーー!!!えっ、ま?俺ら花の5人組とか言われてんの?原作違くね??
「私はただ、仲良くしたいって思っただけです!何様でもありません!!」
東理子の声も聞こえた。この角曲がればスグそこにいるだろう。
「だからそれが生意気なんだって!キモイから!」
あ、この言葉の次に水かけられるんだった。
そう思い出してすぐに東理子の前に駆け出す。
「―――――っつめてぇ...」
止めるのが間に合わなく東理子を庇うだけになってしまった。
俺が水ぶっかけられてどうすんだよ...クソ、F5とか言われて悶えてる場合じゃなかった。
「あ、あ、F5の桐ヶ谷くん......」
ホースを持ってた先輩は誰に掛けたのか分かったらしく水を流しながら後ずさっている。
もう1人の先輩は何が起きたのか理解してないみたいだった。つか本人の前でF5って言うな!
「桐ヶ谷、くん...どうして」
東理子は目を見開いて驚いている。少し顔が赤い。
「先輩、なにしてんすか。」
蛇口を捻り水を止めて先輩を睨みつける。
「これは、その、ちょっと、遊んでて、」
先輩女子2人は顔を青ざめさせて震えている。カーストトップに睨まれるのはさぞ怖いだろう。知らんけど。
「やりすぎですよ」
「ご、ごめんなさっ」
そう言って先輩女子2人は走って逃げてった。
2人きりにしないで欲しいのだけど。
「桐ヶ谷くん、どうしてこんなところに」
東理子のせいでクラスの雰囲気が悪くなるからです。
「連れてかれるの見たから追いかけた」
「巻き込んで、ごめんなさい!!」
東理子が勢いよく頭を下げてきた。
「いや大丈夫、俺が勝手にやったことだから」
上着を脱いでネクタイを取る。濡れてんな〜今日明日で乾くか?これ。
原作での隼人はホースを手で塞いでたんだよな。知ってるくせにこれじゃ間抜けじゃんね。
「た、助けてくれてありがとう!ほんとにごめんなさい!いつものとは今日は違くて、まさかこんなことになるなんて。」
顔を真っ赤にして俯きながら話しかけてくる。
「呼び出しにほいほい付いてくのもどうかと思うんだけど」
「だって!何も悪いことしてないのに文句言われる筋合いはないし逃げてるみたいで嫌なの!」
助言をしたらムッとした顔で反論してきた。相変わらず顔は赤い。
あ〜いるよね、悪意に真っ向勝負で向かっていくやつ。周り巻き込みまくってるけど。
「そ、じゃ俺保健室寄ってくから教室帰ってなよ」
話すだけ面倒くさい気がして帰りを促す。できれば一緒に戻ってクラスの雰囲気変えたかったが上が濡れて戻れば色々言われそうなのでやめておく。
「いやいや一緒に保健室行くよ!私も悪いし!」
「いらない、悪いと思うなら床拭いていきなよ誰かが滑ると危ないし」
床は今広範囲で水浸しだった。
「え?床?――――っきゃ!!」
東理子が足を滑らせて俺の方に倒れてきた。
ブレザーを両手で持っていた為とっさの手が出なくて2人して倒れてしまった。
最悪だ......テンプレ2連続は辛い
俺が下で東理子が上。距離があった為、顔と顔が近いってことにはならなかったし、マウスtoマウスにもならなかったのでセーフだ。
無駄に柑橘系の匂いがする。そう言えばそんな設定だったな。
「うわぁ!ごめんなさい!」
爆発するんじゃないかってくらい顔が赤くなる。
謝るよりまずどいてくれ。
「どけてくれる?」
そう言うと、すぐさま立ち上がった。
まさか自分でフラグ立てて自滅するとは失態だな。原作にもこのシーンあったし。マウスtoマウスの。危ねぇ、時期とかじゃなくただ東理子と一緒にいたらマジで巻き込まれる!
「ブレザーびしょびしょ...」
落ちたブレザーを拾い上げると大量に水を吸い込んでいた。
「ごめんなさい......」
この時間で謝罪を何回聞いただろう。
鬱だ。
進まない...伏線の回収どうしよ