クラス
入学式が終わり、クラス表を見に行くために中学の時のグループと合流する。
「隼人ー!挨拶よかったぜ!!」
大声で寄ってきて肩に腕を乗せてきたのは土井 龍二。野球好きの熱血系イケメンで純度100%の脳筋である。情に厚くてすげーいい奴。脳筋だけど。
「ちょっと龍二、ただでさえ目立つんだから静かにしなさい」
呆れ混じりの声を掛けているのは雪野 紫苑。人形の様に整った顔をしている美少女でツンデレ。キツメの顔に見られることもあるがデレ顔は可愛い。
「し、しーちゃん待って〜〜」
紫苑の後追うように早足でやってきたのは飛鳥 紗奈。髪で顔を隠す癖があるがこれまた美少女。超の付く人見知りで小柄だが出てるとこは出てる。
「ごめんごめん寝てて挨拶聞いてなかったわ」
悪気も無くあくびしながら謝ってきたのは椿 直哉。チャラいにステータス全振りしたような男に見えるが本気を出さないだけで俺に匹敵するようなチート持ち主。もちろんイケメン。
「バカ、ちゃんと聞いとけよ」
「隼人の声が良くてね〜いやはや罪深い」
俺含めこの5人は中学からの仲で、何となくフィーリングが合い、仲良くしてたら美男美女のド派手グループになった。中学もそうだったが何かと注目を浴びる5人組だ。
実はこの4人も恋はじの漫画に登場する。
龍二、紫苑、紗奈はたまに登場する位のモブだったが、直哉はヒロインに惚れて他の女子との繋がりを断ち告白するがフられてしまう役で東理子と隼人の仲を引っ掻き回す重要な役割なのだが、多分直哉は紗奈が好きなので東理子に惚れることはない......と思う。多分。
『ねぇ!あの5人組なに!?超美形じゃん!』
『ほんとね〜首席のイケメンもいるし』
『私中学一緒だったけどその時から目立ってたよ』
『美男美女と同じ学校とか最高すぎるよ!』
『あの女子2人可愛いー気強そうな方に踏まれてぇー』
『俺あのちっさい方の泣き顔が見たい』
俺らと一定の距離を開けてザワザワと話している。最後の方は聞かなかったことにしよう。
「やっぱりこうなったわね」
ハァと息をつきながら紫苑が言う。
「み、見られてる......無理...人間無理...」
「さーな、落ち着いて」
ガタガタと震え出す紗奈の頭を撫でる直哉。...好きだと思うんだけどなー。
「俺ら目立ってるな!?お?お?」
「いつもの事だから、落ち着いて脳筋」
男には結構辛辣なんだよな直哉、言われなれて何の反応もしない龍二もどうかと思うが。
「とにかくクラス表見に行こうか」
俺が提案しクラス表が貼ってある下駄箱前まで歩く。何もしなくても勝手に道が開けるからあら不思議。
クラスはAからFクラスまであり1クラス40人だ。俺たちは全員Aクラスだった。漫画に出てきてるのが同じクラスっていうのは分かっていたが、まさか本当に同じになるとはこれが物語の強制力なのだろうか。
「うっそまさかの全員一緒〜?」
「偶然にしちゃ出来すぎてる気もするわね」
「良かった...良かった...」
「おっ運がいいな!!」
「じゃ〜俺ら5人、また1年間よろしく!」
「「「「よろしく〜」」」」
東理子とその親友もAクラスなので、同じクラスになれたのは心強い。
とりあえず皆でハイタッチした。くぅ〜!青春してるな〜!中身は30過ぎてるからかハイタッチ一つで感激しそうになる。
「なーなー!早くクラス行こーぜ!」
龍二が急かすので2階の1-Aの教室に向かう。
やっぱり俺らが歩いているだけで道が開く。中学でも散々体験したが、はたから見たらどこの少女漫画だよってなりそう。少女漫画なんだけど。
クラスに入ると半分程いたが一斉静かになり、ザワザワと話し始める。その中には主人公東理子とその親友の姿もあった。
皆好きな席に座っているようだったので5人纏まって座れるとこを探すと、窓側の後ろが丁度空いていた。
なるほど。物語において窓側一番後ろとは主人公、又はそれに限りなく近い人用の席ってとこだからかな。そんな事を思いながら窓側の後ろから2番目の席に座る。
一番後ろは直哉、その隣は紗奈、紗奈の前が紫苑で、俺の前が龍二となった。
いつものように俺が話の中心となって話してると、龍二の隣に女の子が座った。やたらとこっちを見てくる女の子は東理子だった......
わざわざ移動してきたのか...東理子の前には親友が座っている。
「――――あのっ!私、東理子って言います!これからよろしくお願いします!」
会話が途切れた今がチャンスだと思ったのか、俺だけを見て自己紹介してきた。
あからさまだな、これは一目惚れされたパターンか......。東理子の目には確かに熱が篭っていた。そういや原作もここで初めて声をかけられるんだった。他の4人が何も言ってこないのは俺が何とかしろってことだろう。できればあまり関わりたくないのだが。
「あー、よろしく。俺は桐ヶ谷隼人。でこいつらは中学からの親友。」
そう言って4人にも自己紹介を促す。俺だけ関わるなんてまっぴらごめんだ。
「あ、えと、こっちの人は朝香 真由里で親友、です!」
東理子は前の席に座っていた親友を腕を引っ張って紹介する。朝香真由里は東理子とは比べ物にならないほど美女で原作ではサポートキャラの様な役割だったが、大人の色気があって謎が多く、朝香真由里を推してる人はは結構いた。前世の嫁もそうだった。
「朝香真由里です。よろしくね」
そう言ってすぐに席に戻った。声も色っぽい。龍二が珍しく見とれている。直哉は靡いていない。その割には無駄に女の子口説くからなぁ。
東理子はもっと話したそうに見つめてきたが先生が入ってきたので諦めていた。
担任は女の先生だった。プリントぶちまけていたのでドジ属性持ちだな?
説明等が終わり、自己紹介タイムになったのだが、東理子の時は、一部女子の視線が怖かった。まぁ、どんな理由であれ目立つグループにしかもあからさま俺に話しかけていったらそうなるんだよな。原作じゃすぐにギャル女子から呼び出しくらうんだっけ。俺が止めた方がいいのだろうか。
俺らの自己紹介は好印象を持ってくれたみたいだ。伊達にクラスの中心人物をやってない。
下校時刻になると質問攻めに合いそうだったので5人でさっさと玄関まで行く。
「なんか色々面白かったわね」
「入学早々猛者がいたな!」
「朝香さん、色っぽかった...」
「隼人、なんか厄介事に巻き込まれそう」
――俺の勘が告げてるよ、そう言ってくる直哉に否定出来なかった。
「そう思うならフォロー頼むわ」
「え、めんど」
くだらない掛け合いをしつつ、寄り道場所を探しながら帰った。
脳筋 ツンデレ 人見知り チャラ男 首席...