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入学式

初投稿です!




あぁ、マジかよ......




ステージの上で全校生徒を見渡し1人の生徒を目にした瞬間、桐ヶ谷(きりがや) 隼人(はやと) は前世の記憶を思い出した。


入ってくる情報量が多く、思わず顔を顰めそうになったが何とか表情を保つ。



こんなことってあるのか?


俺はあいつを知ってる


それにこの世界は......



早く記憶を整理したかったが、今は新入生代表の挨拶の最中だ。

考えることを放棄し、全校生徒が見惚れてしまうほどの笑顔で挨拶をする。

実際女子は、頬を染めてたり周りと笑顔でヒソヒソと話していた。




「____以上で挨拶を終わります。」


素早くステージをおり、席に着く。いまだに生徒の拍手が鳴り止まないがそれは昔から慣れている。小学、中学とステージに立てば過剰なまでの拍手や歓声をいつも貰えた。

周りが掛けてくれる労いの声に返事をしつつ思考を巡らせる。




俺の前世は30で事故死するまで充実した人生だった。家は普通だったがそこそこイケメンで頭が良く運動もできて、物凄く良い会社に入り、モデルと思うほどかわいい彼女ができ、結婚し子供もできた。周りから見れば俺は幸せの絶頂にいただろう。実際そうだった。


俺が30の時、家族で旅行に行ったのだ、ネズミのテーマパークに行く途中で娘がトラックに轢かれそうになり無我夢中で助けて俺が死んだ。まぁ、轢かれてからも少しだけ息があったし家族に別れを言えた記憶があるので大丈夫だろう。貯金はあるし嫁は強いから金持ちと再婚でもする筈だ。




そして現在、俺は転生していた。

しかも嫁がよく読んでいた少女漫画の世界に。

やり直したいと思うほど大した未練も無く、最後に娘を守れたし満足の行く人生だったのに何故俺がここにいるのだろうか。



今世の俺は社長の息子として生まれている。人格が形成されていくにつれ断片的に前世の記憶を思い出していたのか、この体のスペックも相まって、読み書きや計算は人より早く出来たし体の使い方を覚えるのも早かった。対した努力もせずに殆どの事が出来てしまう。

そしてなにより驚くほど美形に生まれたのだ、それこそ前世のそこそこイケメンだなと思える俺の顔が普通顔だなと感じてしまうほど。サラサラストレートの黒髪に桃花眼の黒目、シュッとした鼻筋、柔らかそうな薄い唇。身長は180cmで細マッチョ。



こんなチートぶりだからこそ前世の記憶を思い出してもいないのに何か裏があるのではと一時期疑心暗鬼になったりもしたのだが、やはりそうなのだろう。



ステージの上で目に入ったのは少女漫画の主人公にして、この世界の主人公、(あずま) 理子(りこ)だ。

ふわふわの茶髪に黒目、顔は中の下くらいでどこにでもいる普通顔。まぁ少女漫画の主人公はだいたい普通なんだよな。頭は悪く、運動はそこそこ。性格は純粋で繊細、曲がったことが嫌い。これも少女漫画主人公あるある。





この少女漫画の名前は「恋を始めるには。」

略して「恋はじ」はアニメ化、実写映画化までした超人気漫画だ。


理想の王子様に憧れる恋を知らない主人公東理子が学園一のイケメン(俺)に一目惚れし、両想いになるために色んな壁を乗り越えながら奮闘していく青春ラブストーリー。


正直なにが良いのかよく分からなかったが前世の嫁の猛烈な勧めで漫画全巻読みアニメを見て実写映画は公開当日に見に行った。パンフレットも読んだしファンブックも読んだ。好きでもないのにここまで詳しいものはこの漫画くらいだろう。


恋はじでの俺の立ち位置は学園一のイケメン。そして東理子と同じクラス。人当たりがよく、男女から好かれる人気者だが、実は母親のいない冷めきった家庭で育ち冷酷な性格をしている男なのだ。



......全然そんな事ない。裏の顔とか持ってない。


確かに母親は男作って出て行ったし父さんは素っ気ないけど子供との接し方が分からないだけで記念日は仕事を空けているし、その癖俺を誘えないのか何も言ってこないから俺がさり気なく話すタイミング作って出掛けたりして徐々に距離は埋まってきてる。去年なんて誕生日プレゼント貰ったからな!



冷酷な方の隼人を東理子に見られても変わらず好きだと受け入れてくれることに隼人が驚き、徐々に心開いてくっていう肝心な設定の部分だったんだけど、そんなシーン一切来ない。



まぁ物語の隼人と今の俺は全然違うから東理子がさっきの代表挨拶で一目惚れしてるか分からないけど、原作との相違からしてここは現実だ。東理子と結ばれるのが運命なんてことは無いだろう。なんせ性格も顔も俺のタイプではない。


ため息を付きたくなる。この先の展開を考えると俺は東理子のせいで色々巻き込まれてくのだから。どうにか回避したい。面倒くさい。




入学式の間、周りからの熱烈な視線を浴びつつ悶々とテンプレ回避計画を立てていた。

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