神殿とステータス恩恵
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すみません
俺は神殿の前にまでやってきた。
クリーム色の丸い石柱が何本も並んでいて古代ギリシャの建築物を彷彿とさせるような外観だ。石柱とかがひび割れている点なども何だかそっくりだ。
補修する金がないんだろうか?
俺は入り口の前に立っていた神官服を着た若い男性に声をかける。
「ステータス鑑定をして貰いたいんだが?」
「……そうか。銀貨十枚だが払えるか?」
……あ。今更だけどこの世界の通貨がわからないぞ。
俺が持っているのって金貨が一枚っきりなんだよな。
「これで足りるか?」
「……よし、ならばついてこい」
俺は神官の男性の後へと続く。どうやら金貨一枚で足りるらしい。
神殿の中程まで進むと入り口に立っていた男性はおっさん神官に引率役を引き渡す。
男性は入り口の持ち場へと戻り、俺はおっさん神官に儀式場のような石造りの祭壇がある小部屋へと連れて行かれた。そして俺に対して祭壇の上に寝るように指示を出す。
おっさん神官は祭壇の前に立つと神に対しての祝詞を唱え始めた。お経と同じように一般人には理解できないような言葉の類だった。
しばらくするとおっさんの周りに異世界の文字列が並び始めた。
そしてその文字列は規則正しく並ぶと渦を巻いて俺の方へと迫ってくる。
文字列は俺の外縁部を通過し、同時に頭から足先に向けて妙な熱が通っていく感覚があった。
俺の体を通り抜けていった文字列は再びおっさんの元へと走って行き、おっさんは待ち構えていたかのようにいつの間にか取り出していた羊皮紙を掲げてその文字列を受け止めた。
おっさんの祝詞は間もなく終わり、俺へと話しかけてくる。
「これでステータス鑑定は終了となります。つきましては神殿を維持するために参拝者及び神殿の施設利用者には寄付をお願いしております」
寄付って事は払わないでもいいんだろうか?
等と一瞬思ったが、神殿で働く人の収入が減ってしまう事にすぐに思い至り、俺はポケットから金貨を取り出しておっさん神官に手渡した。
「おお、これは豪気な。多大な寄付を感謝致しますぞ」
「あ、え?」
おっさんは懐に金貨をしまってしまった。釣りを出す気配はない。
……俺は銀貨十枚分だけ渡すつもりだったんだけど。
「いや、違っ!」
「感謝致しますぞ。このお金があればしばらく日に二食食べることが出来ます」
この神殿、どんだけ困窮してんだよ!
「……あ、ああ。いいです」
今更返せとも言えないし、元々神さまから貰ったお金だ。
神さまを奉っている貧乏な彼らにそのお金が行くほうがある意味自然かもしれない。
神さまによるとステータス恩恵は俺は受けられないという話だが、所持技能の方は乗るはずだ。
失った分のお金はこれから稼げばいい。よし、頑張ろう。
俺はおっさんからステータス鑑定結果を貰う。
ちなみにだけど鑑定結果はおっさんは見ていない。
ステータス情報は個人情報で本人の意思で開示する場合を除き、他人は見てはいけない類の物らしい。
ウトウ・ライト AGE15
LV0 NEXT 0
ジョブ ――
HP0/0
MP0/0
ATK0
VIT0
SPD0
INT0
LUK0
武器技能
剣LV0 槍LV0 弓LV0 斧LV0 棍LV0 爪LV0
魔法技能
火LV0 水LV0 風LV0 土LV0 光LV0 闇LV0
???
『a%ヴ≧@』
……いやぁ。なんという予想通り。見事に全部0並び。最後バグっているのは神さまから貰ったパンチ力一億倍とかいう能力のせいだろうか?
俺の魂がこの世界の規格と合わないって事も、もしかしたら要因にあるかもしれないな。
あと、さりげに二十才くらい若返ってるんだけど、これはサービスなのかな?
金貨払ったんだからこれで仕事斡旋してくれなかったら、ギルドのおっさん恨むぞ。
■□□■
神殿を出た後、金を稼ぐためにもう一度ギルドへと向かった。
受け付けに立っているおっさんに声をかける。
「おっさん。こんな結果が出た。どうしたらいい?」
俺は神殿から貰ってきた鑑定書をおっさんに提出した。
するとおっさんの目が見開いた。
「……なんだこりゃ。全ステータス0じゃないか。レベルも0なんてあり得ないぞ」
「なんか俺、ステータス持ってないらしいんだよね。で、鑑定書持ってきたけどこれで依頼を受けられる?」
「こうなると、斡旋してやれるのは資格不問の依頼だけだぞ。それでもいいか?」
「何でもいいよ。今晩泊まるだけの金が貰えれば」
「悪いが今日は無理だぞ。明日の分の資格不問の仕事を斡旋することは出来るが」
「仕方ない。じゃあ、明日の依頼を受けさせてくれ」
「悪いな。それも出来ないんだ。資格不問の依頼は取り合いになっている。一人だけに特別措置で事前融通してやるわけにはいかないんだ」
「まいったなぁ」
ギルドの仕組みがそうなっている以上は仕方が無い。
俺はパンチ力一億倍のスキルがあるから戦闘自体は出来るだろう。神さまはこの能力があれば生き延びられると言っていた。
だが、それはこの世界で認知されていない部類の力だ。だったらその力も認知されないように振るうべきなのではないだろうか?
よし、決めた。
俺は依頼掲示板の前にやってきた。目的は討伐依頼。討伐依頼の紙には魔物の特徴と簡易的なイラストが描かれている。
俺の目に留まったのはレッサーウルフ。緑色の肌のゴブリンや青いゲル状のスライムと違って、何となく焼けば食えそうな見た目をしている。
出現場所はタルジの森。
掲示板の横に張ってあったこの近隣の地図から同じ地名を探す。
それから俺はギルドを出た。
目指すのはタルジの森である。