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第二十二話「スカルドラゴン」


 テクの町から逃げるように旅立ってから三ヶ月が経過していた。


 北に進むにつれて襲ってくる魔物も強くなった。

 俺達は町に着く度に数日間滞在し、最低限の金を稼いでまた北へ進むと繰り返していた。


 北へ進む度にセリアのことを知っている人間は増えた。


 しかし、今どこにいるかは不明だった。

 最近噂を聞かないだとか、ルカルドでは見なかったとか。


 セリアはパーティに加入せずに動いていたらしく、親しくしていた人間は少ないようだった。

 唯一ライトニングというAランクパーティと懇意にしていたらしい。

 そのライトニングはまだルカルドに滞在しているとのこと。

 そのパーティなら何か知ってるかもという話だ。


 とにかく、俺達の目的地はルカルドだ。

 

 そして急いでいる俺の旅に何一つエルとランドルはついてきてくれている。

 エルの体力もついてきて旅の進みは早くなった。


 ランドルも随分と腕を上げた。

 ランドルは強敵と戦う度にめきめきと腕を上げているようだった。

 ランドルは一度グリフォン討伐の依頼を受けた時、一人でやると言った。

 もちろん着いていきはしたが、討伐はランドル一人で戦った。

 助ける必要がないほど、簡単に倒していた。


 

 最近は旅にも慣れて早朝に剣の素振りをする余裕もでてきた。

 剣の稽古をしていた俺をランドルは興味深そうに見ていたので誘った。


 そして時折二人で流派と扱っている武器は違うものの、稽古をする様になった。


 闘神流の闘気の扱い方を教え打ち合った。

 ランドルはいつもの大斧で寸止めもできない。

 最初はランドルも遠慮していたが、

 俺が簡単に食らわないとわかると全力で斧を振り回してくるようになった。

 

 もちろん俺も最初は振り回される斧にびびったが。


 ランドルも強くなっていくのが分かったし、

 俺も自分の成長を感じて楽しい稽古だ。


 旅も順調で、ルカルドの町へは予定より二ヶ月ほど早く着けそうだった。



 今俺達のランクはCランク。

 そしてこの依頼が終わればBランクに昇格できる。



 今受けている依頼はスカルドラゴンの討伐。

 Bランクの討伐依頼だ。


「骨とはいえ竜との戦いは緊張するなぁ」


 険しい道を歩きながら俺はのんきに言った。

 そんな俺の言葉に二人も慣れた様子だ。


「でかいだけでブレスも吐かなけりゃ筋肉もないみたいだしな。

 飛べない竜なんてなんとでもなるだろう」


 返事をするランドルも余裕そうだ。

 この男、本当にどんどん巨体になっていく。

 本当に人種なんだろうかと思ってしまうほどだ。



 そして討伐するスカルドラゴンについてだが。

 倒した竜を後処理をしないで放置すると、長い年月が経って骨だけになると動き出すことがあるらしい。

 この世界の現象で理解できないことの一つだ。

 

 この大陸に竜は少ないので結構珍しい依頼らしい。

 少ないどころか、ここ数年は生きた竜がカルバジア大陸に現れたことはない。

 そして、骨になる前はSランクの竜だが、骨になると生きている竜より遥かに弱い。

 しかしその巨体と骨の硬さから簡単に地形を破壊する力はある。

 

 明らかにCランクパーティ三人組で達成できる依頼ではないが。

 俺達は全員余裕でCランク以上の実力があるだろう。


 エルも戦闘に慣れてきたし使える魔術も増えている。

 エルは魔術師として優秀どころか完全な天才だった。

 普通はどれか一つの中級を使えれば優秀と言われるのだが。


 エルは火、風、水、光の四種類の属性の中級を使える。


 その属性の中の中級にも色んな種類がある。

 そしてエルの使える魔術の数は常人の域を遥かに超えていた。

 未だに魔力切れを起こした所も見ていない。


 そしてたまに俺が簡単な体術を教えている。

 エルが敵に接近された時に最低限捌けるようにだ。

 絶対に俺とランドルが全ての敵の注意が引ける確証がない以上、必要なことだ。

 才能があるとは言えないが、以前と比べると全然動けるようになった。

 

 二人共頼りになる仲間だ。

 

「骨だけの竜ってどうやったら死ぬの? もう死んでるのに」


 エルがそんなことを言っていた。

 確かに、俺もそんなこと知らない。

 斬ればいいとか簡単に思っていた。


 うーん……と考え込む俺の横でランドルが言った。


「体から離れた部位はしばらくは動かないらしい。

 バラバラにして最後に砕いたらいいってよ」


「ランドルには聞いてない」


「いちいちうるせえなお前は」


 そして二人の仲は相変わらず良くならなかった。

 仲良くしろとは言わないが険悪にならないでほしい気持ちはずっとある。

 何度も仲を取り持とうとしたが、逆効果だった。

 エルの機嫌はどんどん悪くなるし、

 ランドルも最初は無視していてもエルの棘のある発言に少しずつ苛々し始める。

 俺のできることは二人が喧嘩しないように注意することくらいだ。

 まさに、こういう時だ。俺はさっと話を変える。


「ランドルよく知ってるね」


「知り合った冒険者に聞いたんだよ。

 お前もそろそろ知らない魔物に警戒したほうがいい」


「肝に銘じとくよ」


 ランドルにこんなことを言われる日がくるとは。

 確かに、俺は今まで苦戦してこなかった。

 初めてB級モンスターのネオクグリズリーを討伐した時も、正直余裕だった。

 俺に限らず、エルもランドルも倒せるだろう。


 でもさすがにそろそろ知らない魔物の知識を深めたほうがいいか。

 ランドルの言う通り、こういう油断から足をすくわれるんだろう。

 

 分かっていてもついつい油断してしまうのは、エルの魔術の安心感だろう。

 毒を食らっても解毒があるし、体が切断されない限り治癒魔術で治ってしまう。

 旅を出る前はエルを連れていくか悩んでたのに、今では頼りっぱなしだ。

 

 うん、少し注意していこう。

 仲間に情けない姿を見せるのも嫌だしな。



 

 しばらく荒れた地面を進むと、崖があった。

 崖から覗き込むと下までは十メートル以上ある高さだ、

 そして地面には欠けた骨の欠片が散っていた。

 欠片は一粒が大きい。

 ここが巣で間違いないだろう。


「よし、戻ってくるのを待とうか。

 一日経っても戻ってこなかったら少し捜索してみよう」

「分かった」

「うん」


 二人とも素直に従ってくれる。

 


 崖から少し離れ、焚き火を起こして囲んでいると陽が落ち始め少し薄暗くなる。

 それからしばらくすると。


 ガシャン ドン ガシャン ドン


 と何かが擦れ合わさる音と重い物体が地面を鳴らしている音が聞こえた。

 恐らく、骨だ。

 骨だけになっても重量があるらしく、地面が悲鳴を上げている。

 少しずつ音が大きくなり、止まった。


 恐らく崖を覗けばそこにいるだろう。

 俺達は顔を見合わせ頷くと、立ち上がった。

 

 ゆっくりと崖のほうを覗き込むと崖の下を見るまでもなく、いた。

 あの高い崖より背丈があるらしく、首から上が見える。

 運良く、俺達と反対方向を向いているようだった。

 

「あいつ目とか耳とかあるのかな」

「知るかよ。でも多分、見えるし聞こえるだろ」


 小声で言うとランドルも小声で答えた。

 

 打ち合わせ通りの手はずで動こうとする。

 エルの顔を見るとエルは頷いた。


「聖なる光の鎧 全てのものを拒絶せん 聖壁(バリア)


 初級の障壁魔術だが、エルの篭められた魔力の障壁は硬い。

 この竜相手でも役に立ってくれるだろう。


 エルの詠唱と共に俺とランドルに光が舞うと、事態が急変した。


 恐ろしい速さでスカルドラゴンが振り向いたのだ。

 何故……そんなこと考える暇もなかった。


 俺達は石でできたドラゴンの大きい瞳と目が合う。

 一瞬ぞくりと身が竦んだ。


 動いたのは、相手のほうが速かった。

 咆哮を上げるかのように大きく口を開けるが、声は出ない。

 しかし、崖を食うように骨の顎で崖の先端を削った。

 俺達は数歩後ずさりする。

 

「おい! どうする!」


 ランドルが怒声を上げる。

 エルも冷や汗を流しながら俺の指示を待ってる。

 冷静になるんだ。


「大丈夫だ! 飛べないしどうせ登ってこれない!」


 俺がそう言うと、二人は少し安心したように頷いたが、そう甘くはなかった。

 スカルドラゴンの骨の手が、崖を掴んでいた。

 崖が削れる音と共に少しずつドラゴンの見える範囲が増える。


 よじ登ろうとしているのか!


 エルの魔術の奇襲はもうできない、もうガチンコだ。

 俺は焦りながらも言った。


「やるしかない! エルは下がっててくれ!」


 そして剣を抜く、ランドルも斧を構えた。

 骨のドラゴンに火魔術も水魔術も効かない。

 エルの風魔術の奇襲から戦闘に移ろうと思っていたのだが失敗に終わった。

 風魔術は味方にも被害がでるから戦闘中に使うのは難しい。


 今回エルは下がってもらうしかない。

 本人もそれが分かっているようで素直に数歩下がった。


 闘気を大きく爆発させる。

 赤い闘気が俺の周囲を包んだ。

 さすがに全開にはできないが、帰りは痛みに襲われるだろう。


「いくぞランドル! まずあの手だ!」

「あぁ!」


 それだけ言うと俺たちはドラゴンに向かって飛び掛る。

 そして崖を掴んでいる指を切断した。

 俺が左手を切断すると、ランドルも右手を斧で叩き折っていた。


 成す術もなくスカルドラゴンは背中から地面に崩れ落ちる。


 その隙を逃がさないように俺とランドルも崖から飛び降りた。

 十メートル程の高さがあるが、これだけの闘気を纏えばびくともしない。


 俺達が地面に足を着くと、スカルドラゴンは立ち上がろうとするが。


 俺はスカルドラゴンの支えの足を斬った。

 巨大に纏った闘気によって、硬いといわれる分厚い骨は豆腐のように切れた。


 ドラゴンはバランスを崩すが、俺を迎撃しようと分厚い尻尾を振り回した。


 俺は高く飛び、回避する。


 ランドルは自分に向かってくる振られる尻尾とタイミングを合わせると、大きく斧を振り上げ、振り下ろした。

 巨大な斧によってドラゴンの太い尻尾が切断される。

 

 俺は落下中にドラゴンの首の骨に狙いを付ける。

 そしてその勢いで剣を振り落とした。


 首がドシンと落ちると、首から先は動かなくなった、が。

 体はまだ身をよじっていた。


 俺とランドルは無心でとにかく細かく斬り刻む。

 五分ほど斬っていただろうか。

 そこにはバラバラになって原型をとどめていないスカルドラゴンの姿があった。

 もう動かない。


 俺とランドルは顔をあわせて頷くと、

 足に闘気を集中させて踏みつけて骨を砕いていった。

 一瞬ヒヤッとしたが、終わって見れば掠り傷一つなかった。


 

 砕き終わると、俺とランドルは崖の上に向かって飛んだ。

 ランドルの闘気も結構大きくなったようで、なんとか届いたようだ。

 

「二人共、怪我はない?」


 俺達を待っていたエルは俺とランドルの顔を見て言った。

 こういう時エルはランドルを差別しない。

 仕事上ではしっかり治療するし、サポートもする。

 二人の仲が悪くてもあまり声を上げて俺が文句を言わない理由もこれが大きい。


「大丈夫だよ」

「あぁ」


 俺は闘気を抑えると、体に痛みが走った。


「痛っ……」


 そう言って少し腕を押さえると、エルが少し焦った。


「お兄ちゃん!? 怪我してるの?」


 そう言って駆け寄って俺の服の裾を捲るが、普通の腕だ。

 何も怪我はない。


「闘気の使いすぎだ、お前の体であの量を纏えばそりゃ痛む」


 あんなに必要なかっただろう、と付け加えてランドルは言った。

 実際そうだ。

 俺の体はまだ子供の体だ、巨大な闘気に体が耐えられない。

 ランドルは体がしっかりしているようで、問題なさそうだった。


「そうだね、臆病すぎたよ」

「ま、油断して死ぬよりマシじゃねえか」


 ランドルはそう言って少しフォローしてくれた。

 別に呆れられてる訳ではないらしい。


「それにしても、何で気付かれたんだろうね。声が聞こえたのかな?」


 俺がそう言うとランドルが口を開いた。


「いや、声がきっかけには思えなかったな。

 どちらかというと……」


 そう言ってエルを見た。

 そして俺も思い出す。

 そういえばドラゴンが振り向いた瞬間はエルの魔術からだ。

 

「もしかして、私何かした?」


 そう言って俺の顔を不安そうに見る。

 別にエルのせいではないだろうと、うーん……と考える。

 そして、閃いた。


「スカルドラゴンってアンデッドになるんだっけ」


 俺がそう言うと、二人も気付いた様だった。


「あぁ、なるほどな」

「光魔術……」


 エルが少し青い顔をして下を向いてしまった。

 アンデッドは光魔術に敏感だと言う話を聞いたことがある。

 きっと障壁魔術に反応したのだろう。


「ごめんなさい」


 少ししんみりとエルが言った。

 これはエルは全く悪くない。

 前もって話し合って段取りを三人で決めていたのだ。

 誰も気付かなかったんだから全員悪い。


「エルは悪くないよ、誰も気付けてなかったしね」

「あぁ、今回はお前が悪い訳じゃねえよ」


 ランドルも珍しくエルをフォローした。

 エルはその言葉でようやく顔を上げた。

 俺は微笑みながらエルの頭を撫でてやる。

 するとエルは安心したようで少し微笑んだ。


「さ、一晩休んで朝になったら帰ろう」


 そう言って俺達は焚き火を囲んで野営を始めると、朝になるのを待った。



 そこから二日掛けて町に帰った。


 今拠点にしている町はテュカの町。

 セルビア王国の都市の一つで、大きい町だ。

 さっそく冒険者ギルドに向かって報告する。


「お疲れ様でした。こちらが報酬になります」


 どこの町に行っても大体美人の受付嬢から報酬を渡される。

 報酬は銀貨八枚。

 四日仕事で三人で分ける報酬だとすればいい額だろう。

 

 そしてランクの昇格を申請すると、俺達はBランク冒険者になった。

 もうAランクの依頼も受けられる。

 この町ではBランクの依頼はそこそこあるが、Aランクはあまり見かけない。

 

 ランクも上がったし少し休息したらまた北へ登ることになるだろう。

 受付から離れると、テーブルを囲んでいる一つのパーティから声が掛かった。


「おーい! スカルドラゴン討伐どうだったよ!」


 その声は俺じゃなくランドルに掛けられたものだった。

 ランドルはその集団に近付いて行った。

 俺とエルもその背中を追いかける。


「あぁ、情報通りで助かった」


 ランドルが礼を言っている。

 これは結構珍しいことなのだ。

 ランドルはこの人から話を聞いたのか。

 ランドルの情報がなかったらそのまま砕かないで帰ってきただろう。

 絶対に、後から問題になったはずだ。

 感謝だ。


「そりゃよかったよ、人種の子供だらけのパーティなのにほんと強えんだな。

 てっきりリーダーはランドルだと思ってたが。

 そこのアルベルってのが一番強いんだって?」


 その言葉に、少しきょとんとする。

 ランドルがそんなことを話したのだろうか。

 

 昔ならそんなこと言わなかった気がする。

 そもそも積極的に他の冒険者と交流しようとも思わなかっただろう。

 やっぱりちょっと、変わったかな。

 いい方向に。


 俺はというと一応謙遜しておく。


「仲間が優秀ですから。戦いやすいんですよ」


 実際そうだしな。

 そう言って少し笑うと、その中の一人。

 少し艶っぽい女性が俺に近付いてきた。

 十代後半だろうか、なんかフェロモンが凄い。

 俺の腕を掴むと豊かな胸を押し付けてくる。


「可愛いのにあなた、強いのねぇ……好みかもぉ」


 そんなことを言いながらねっとりと視線を送ってくる。

 振りほどこうかと思ったが、こういう経験が皆無な俺は固まってしまう。

 顔は、きっと赤い。


 すると横にいたエルが間に割って入り、女を引き剥がした。

 苛々した様子で口を開いた。


「お兄ちゃんに触らないで。触っていいのは私とセリアお姉ちゃんだけなの」


 怒りながらそんなことを言っている。

 そして俺のほうを見た。


「お兄ちゃんも、浮気はだめだよ」


 もちろん誘惑してくる女には少し戸惑ってしまったが。

 さすがにホイホイ着いて行くことはない。

 というか浮気って……セリアを追いかけてはいるがセリアは俺をどう思っているかわからない。

 

 しかし、珍しく俺に対しても怒っているエルを見ると何も言えなかった。


「ははは……」


 苦笑いで返すと、少しまだエルはむすっとしていたが。

 女が離れると無表情ながらも可愛い顔に戻った。


「おい、子供をからかってんじゃねえよ」

「はいはぁーい」


 向こうのリーダーらしき男がそう言うと、大人しく俺から離れて席に座った。

 とりあえず助かった。


「そういえば見たか? セルビア王国からの依頼」

「何ですか? それ」


 セルビア王国、カルバジア大陸で一番の大国だ。

 確かここもだし、目的のルカルドもセルビアの都市だったはず。

 俺が一番印象に残ってるのは流水流が盛んで国内に道場があるという話だ。

 そしてここら辺の冒険者は流水流が多い。


「お前らが討伐行ってる間に依頼が来たんだよ。

 依頼というか冒険者に対する命令に近いけどな」

「それはどんな?」

「盗賊団の殲滅と、イグノーツ・セルビア王子の救出だ」


 正直よく分からない。

 さすがに国の王子の名前なんて知らないし、というか何があったんだ。

 俺達が首を傾げていると男は続けた。



 イグノーツ・セルビア第三王子。

 何があったか知らないが、お忍びで町に出てる間に攫われてしまったらしい。


 そしてヤダガラスと名乗る盗賊団から要求があったらしい。

 どうやらセルビア王国にヤダガラスの首領が捕らわれており、その首領の解放。

 すぐに処刑されるはずの首領だったが、そのせいで刑を引き伸ばされていると。


 正直、その王子には悪いが関わりたくないし関わってる暇もない。

 さすがに全く知りもしない王子の為に動けるほど善人でもない。

 それに、やばい政治の香りが凄まじいぞ。


「お前らくらい強かったらなんとかなるんじゃねえか?

 首領は相当強くて長年指名手配されてたけど捕まったし。

 他は数が多いだけで手練れが揃っている訳でもないらしいぞ」


 そんなことを言われるが。


「正直旅を急いでるので構ってられないですね」


 そう言って少し苦笑い。

 すると男はもったいねぇなぁと言いながら。


「どうやらこの町の近くに潜んでるって情報があってな。

 他のパーティは徒党を組んで探してるぜ。

 王子を救出すれば名誉と大金が手に入るだろうからな」


 まぁ、それはそうだろう。

 というか近くにいるかもしれないのか。

 旅の途中で出くわさないのを祈るしかない。


 エルとランドルの顔も一応覗いてみるが、二人共興味なさそうだった。

 これは予想通りだ。


「他の人達にまかせることにしますよ。

 スカルドラゴンの情報ありがとうございました」

「いいってことよ」

「じゃあな」


 俺とランドルが別れを言うと、冒険者ギルドから出た。


 宿に戻ると、相変わらずエルと同じ部屋だ。

 じゃあもうランドルはどうせ床で寝てるらしいし、

 一部屋で良くないかと提案したこともあるのだが。

 さすがにエルは嫌がった。

 ランドルもエルと同じ部屋で寝るくらいだったら野宿すると言い出すし。


 まぁランドルはともかく。

 エルに限らず女の子は身内以外の異性と同じ部屋で寝るのは嫌か、と俺は一人納得したが。


 そして絶対的なルール。

 ランドルは部屋に入る前にノックをすること。

 俺は、俺とエルの部屋に入ったら鍵を掛けること。

 

 あの水浴び事件からエルは徹底していた。

 さすがにランドルもこれは守っている。

 また宿が燃えそうになるのは勘弁だ。


 

 そうして俺達はテュカの町で二日間、体をしっかり休めると町を出た。

 もちろんひたすらに北に向かう。


 だがしかし、やはり旅というものは順風満帆とは行かないらしい。




 町を出た数日後。


 俺達は盗賊団と国の騒動に巻き込まれて足止めを食らうことになる。

あっさりした展開が続いたので夜にもう一話更新します。

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