プロローグ
日々を寂しく生きていた。
かといって暇な毎日を送っているわけではない、むしろ真逆。
朝から晩まで汗水垂らして肉体労働に勤しんでいる。
俺の歳は十六歳。仕事を探す際、体を資本とする職種しかなかった。
俺は物心つく前に親を事故で亡くした。
身寄りがなかった俺は孤児院に入ることになった。
別に孤児院で辛くひどい思いをした訳でもない。
職員の人はみんな自分の子供のようにとまでは言えないが、良くしてくれた。
しかし子供同士は乱暴な奴が多く、喧嘩はしょっちゅうだった。
争いが嫌いな俺は隅でそっと隠れていることが多かったが。
俺は中学を卒業すると同時に、孤児院を飛び出した。
高校に行く選択肢ももちろんあった。
人付き合いが苦手な俺だったが、脳みそは人並みだった。
高校に通い、親が居ないながらも人並みに生活することもできたかもしれない。
友達ができて、もしかしたら彼女もできたかも。
でもどうだろうな、高校に行っても友達もできず孤立したかもな。
やっぱり就職しておけばよかったと思ったかもしれない。
全部結果論だが、やるせない。
常に心が満たされない気持ちが続いていた。
孤児院を飛び出して就職して一人で生きれたら。
そしたら何かが変わるんだと思っていた。
だが実際はどうだろう、月から金、朝から晩まで体を酷使して金を稼ぐ。
家に帰って食事してシャワーを浴びて倒れるように布団に潜り込む。
それの繰り返しだ。
でも何も考えないで時間が過ぎ去っていくことは案外悪くはなかった。
なぜなら休みの土日が苦痛だったからだ。
家族も友達もいなければ彼女もいない。
一分、一時間、一日がとてつもなく長く感じた。
横になりながらスマホで何回も同じ動画を見たりネット小説を読んだりしていた。
どうしても辛くなった時はなけなしの金を使った。
金を使えば退屈が少しは紛れた。
ネットカフェに行って漫画を読んだり、一人でカラオケに行ったり。
一生この生活が続くんだろうか。
そう考えると心臓が締め付けられる思いだった。
今の状況を人のせいにしたいわけでもない。
他人に心を開けなかった自分に原因があるのはわかっている。
自分の愚かさを考えると死にたくなるが、もちろん行動には移さない。
人間そう簡単に死ねるようにできていない。
でももしやり直せるなら……。
家族の温かさを知ってみたい。
「はぁ……」
俺は溜息を吐きながら、ありえない想像に思いを馳せ、眠りについた。