世界はかわいていた
世界は乾いていた
空気は熱くも冷たくもない
ただ舌に貼り付く乾き
息をするたびに消えていく水分
閉じた唇がかさりと音を立てる
弾力のない薄い壁を叩くような
どこにも繋がらない扉のノブを掴むような
透明なコップに一杯水を汲んだ
傾けた瞬間に蒸発している
溢したくないのに溢れていく
大きく開けた口の中に落ちる一粒
水滴は舌に届く前に消え
白一色だった
何もなかった
光のない空よりも乾いていた
追いかけて
手を伸ばして
捕まえて
掴んで
崩れて
溢れて
溶けて
満たされない
世界は渇いていた