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プロローグとなるぼくの回想

 ジャンルがファンタジーなのは、まあ作者の頭の中がファンタジーだからそんな作者が書いてる作品なんだからそれはもう間違いなくファンタジーじゃん、ということでファンタジーです。


 誰かこの作品の適切なジャンルがわかる人がいたら教えて下さい。

『男は戦いから逃げちゃあならねえ』


 お父さんは仕事から帰ってくると必ず「ただいま」という言葉の代りにぼくの頭を力一杯撫で回しながらそう言った。よく憶えている言葉だ。他に憶えているのはぼくが小学生のとき、どんなに抵抗しても頭から手を離さず高笑いを続けるお父さんにぼくはムカついて脛を蹴ってやったらマジギレされてその丸太のような太さの足をお父さんはコンパクトに折りたたみ全力も全力のお前それは子供相手にやってもいいレベルの力加減じゃあないだろと突っ込みを入れさせてほしくなるほどの膝蹴りを鳩尾に入れてきやがったことだ。内臓が全部ぐちゃぐちゃになってしまったぐらいの衝撃を感じて、事実それは入院してみると約七割がフィクションではなかったことがわかった。色々な意味で絶望に駆られながらぼくがベッドで寝ていると病室にお見舞いにやってきたお父さんは「死ななくて良かったな。流石は俺の息子だ。アッハッハ」と大笑いしながらぼくの右腕をバンバンと叩きその力加減もまたできておらずぼくの右腕の骨は折れた。さらに怪我が増えたことにお父さんは怒り「だから牛乳を飲めって言ってるだろうが」と叫んでぼくの両足首をつかんだその一秒後にぼくの両足首はほとんど粉砕されていた。


 ぼくのお父さんは警察官だ。と言ってもそれはどこにでもいるような駐在さんみたいな警察官ではなくて戦争とか大きな争い事が起こったときにその最前線で重火器を両手に構えて特攻したりするような頭のネジが全部取れてしまって脳味噌がどこかに転げ落ちてしまって物事に対して思考を働かせられなくなってしまった警察官だ。警察官ってそんなことまでしないといけないのか、そんな危ないことをしているお父さんは果たして本当に警察官なのかどうなのかと疑問に思ったことがあってお父さんにそれを訊いてみるとお父さんは警察手帳を開いて見せてくれた。お父さんは本当に警察官だった。でも、右腕の骨折が治ってそれから奇跡的に歩けるようになるまで回復して退院した当時のぼくには正直信じられなかった。だから「どうしてお父さんが警察官になれたの」と訊いた。その直後ぼくの意識はなくなって目が覚めたら病院のベッドの上で寝ていて二日経っていた。またぼくは入院していたのだ。何でそうなったのか看護師のお姉さんに訊いたら、ぼくはお父さんに全力で頭を殴られてそのせいで生死の境を彷徨っていたらしい。頭蓋骨にはひびが入っていて、もう少し当たりどころがずれていたら本当に死んでいたらしい。そのことをお医者さんがお父さんに話すとお父さんは「俺の息子が死ぬわけないだろうが」とキレてお医者さんの頭を殴ってお医者さんを入院させてしまった。そのときぼくはお父さんの本当の職業がわかった。お父さんは本当は悪魔の化身で色んな人達を不幸にしてそれを楽しむことを仕事にしているのだ。ぼくはお父さんのことが怖くなった。


 中学生になってからぼくは勉強を頑張るようになった。将来の夢は警察官になってお父さんのような警察官を全員刑務所にぶち込むことに決めた。だから勉強をして有名な高校に進学して偏差値の高い大学に進学してエリートになるために頑張った。嫌いだった勉強もストレスを溜めることなくできるようになって勉強が好きになって中学校を卒業するまで成績のトップは誰にも譲らなかった。地元の有名な高校に進学してそこでも卒業するまで成績のトップは誰にも譲らなかった。国内で一番偏差値の高い大学に進学してそこで初めてぼくは家を出て一人暮らしをしてお父さんから解放された。勉強がはかどるようになって成人式を迎える前には警察官が知っていなければならない知識とか法律とかルールとかを覚えた。お酒が堂々と飲める年齢になって参加したサークルの飲み会で警察庁長官の息子と友達になってコネができてぼくの進路は約束された。それからもぼくは努力を続けてぼくの成績は常にトップだった。大学四年生になった。その年の六月に戦争が起こりかけてそれを防ぐためにぼくのお父さんが死んだ。


 ぼくが住んでいる国は島国だから周りには海しかなくて大陸から離れている位置にある。だから国内で手に入らないものは国外から取り寄せる必要があってその輸入の手段として使われるのはほとんどが大型貨物船だ。ぼくが大学四年生になった年の六月。とある大国から超強力な爆薬が大量に積まれた大型貨物船が首都港に向けて自動操縦で運行されていることを政府が知って、それの動きを止めるために警察は大量の人員を使ってその先陣にぼくのお父さんはいた。これは警察庁長官が話していた話を聞いた警察庁長官の息子から聞いた話だ。お父さんの小隊はどんどん首都港に向かってくる大型貨物船にヘリコプターで近付いて乗りこんでそして動力を止めて爆薬を処理する予定だったんだけど大型貨物船の動きを止めるとスイッチが入って大爆発が起こるような仕組みになっていたらしく、爆発の被害が首都まで届かないギリギリの距離まで大型貨物船がきたところでお父さんの小隊が犠牲になることが決定して、数秒後にその日のニュースでどのチャンネルでも同じ映像が映されるほどの大爆発が起こった。


 ニュースでは、爆発の原因はエンジンの整備不良が原因で動力部に火災が発生して燃料に点火したこと、幸い自動操縦で運行されていたため犠牲者は一人もいなかった、そんなことを全ての局のアナウンサーが言っていた。世間的には社会的にはそういうことにしておかないととある大国と戦争をしなければならなくなり、そうなったら大敗することは目に見えているから事故だったことにしたらしい。これも警察庁長官が話していた話を聞いた警察庁長官の息子から聞いた話だ。あんな大爆発を見たらただの整備不良による事故なんてもんじゃないことぐらい想像できそうなんだけどニュースや特番で大学教授やコメンテーターの人が事故事故と連呼していると誰もが事故だと思い込むようになっていた。この国の人間は頭がおかしくなっていると思った。


 実家から電話がかかってきて、お父さんの葬式の日が決まったことをお母さんが泣きながら伝えてくれた。通話時間は三時間二十七分八秒という今までにない記録を作った。ぼくは携帯電話を閉じると、目を閉じて深い眠りについた。


 お父さんの葬式は警察庁が置かれている中央合同庁舎第二号館で行われた。会議室にお父さんを含めた六人の遺影が飾られているだけでお父さんの骨はどこにもなかったけど葬式を行った。来ていた遺族の人達はみんなが泣いていて久し振りに会ったお母さんとお姉ちゃんと弟も泣いていたけどぼくは泣かなかった。「次はお兄ちゃんの番」と言ってお母さんがぼくの背中を軽く押してぼくはお父さんの遺影の前に行ってお辞儀をして顔を上げて久し振りにお父さんの顔を見た。とても真面目そうな顔をしていて子供の内臓を破壊したり骨を折ったりするような人の顔には見えなかった。カッコイイと思った。そう思ったら涙が流れた。呼吸が苦しくなって鼻水も出てきて背中に嫌な汗が大量に噴き出して涙が止まらなかった。小さい頃の思い出が次々に出てきて涙が止まらなかった。お母さんとお姉ちゃんと弟がぼくに抱きついてきてさらに苦しくなったけど涙が止まらなかった。お父さんに会いたくなった。小さい頃の嫌な思い出が全て美化された。ぼくがここまで勉強を頑張ってそして警察に進路を決めることができたのはお父さんが悪役を演じていてくれたからだと思った。ぼくはお父さんみたいになりたいと思った。『男は戦いから逃げちゃあならねえ』。この言葉の意味を、ほんの少しでも理解することが出来たと思うから。


 大学を卒業してぼくは警察という組織の一員となった。大学は首席で卒業した。エリート中のエリート。研修が終わって配属先を決めるときぼくは自分の希望するところに配属してもらえることになった。勉強を頑張ってきて良かったと思った。きっとぼくみたいに優遇される人間は数えるほどしかいないだろう。本当に頑張ってきて良かったと思って、ぼくはお父さんが所属していた小隊に入りたいと言った。


 ぼくはその小隊に配属されることになった。



       ○



「じゃあ、とりあえず自己紹介しちゃって」


 配属された初日。都心から少し離れた距離にある山の中に建てられた建物の地下三階の隅の方にある何もなくて薄暗くてカビ臭い十二畳ぐらいの広さの部屋で、ぼくの前に横一列に並んでいる五人の人間の中の真ん中に立っているホストクラブに勤めていそうなスタイルと顔立ちをした男にそう言われて、ぼくは「はい」と返事をしてから全員と視線を合わせた。


「今日からこの小隊に配属されることになりました、窪澤太郎(くぼさわたろう)です。ぼくの夢は、昔はあったんですけど今はありません。一人でも多くの人の安全を守ることが出来るように頑張ります。よろしくお願いします」


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