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第46話 「くくく。この俺様をよくもここまで追い詰めたものだ。褒めてやろう。だがそれもここまでだ。ここがお前たちの墓場と知るがよい!」

 俺を狙った射撃は、しかしトリガーを引くときに手元がブレたせいで、ミリアリアの胸に当たってしまう。


 際どいビキニに覆われた谷間を、水がヌルりと流れ落ちた。


 ……なんだろう。

 別に何の問題もないシーンなのに、なんだかとてもイケナイものを見てしまった気がした。


 あと、何のためらいもなく、さも当然であるかのように俺を狙ったような?

 これも気のせいか?

 ミリアリアより、俺の方が雑に絡みやすいとか?


「あらら、やられちゃいました。カケルパパの右腕と呼ばれるこのわたしを仕留めるとは、やりますねサファイア」


「あれ? むらさめ、ねらった、よ?」


 サファイアがこてんと小首をかしげる。


「手元がブレちゃってたな」


「ブレる……って? わかんない、かも」


「ふふっ、ではわたしが簡単に撃ち方を教えるわね。片手だと発砲時に手が動いちゃうの。だからこうやって両手で構えて、後はよーく狙って……はい、撃ってみて」


 ミリアリアの手ほどきでサファイアが引き金を引くと、


 ビュッ!


 見事、水弾は俺の胸に直撃した。


「やった! あたった!」

「ナイスシュート♪」


「やるな、サファイア。教えてもらってすぐにハートショットするなんて、サファイアには射撃の才能がありそうだ」


「ふふっ、将来有望ですね」

「人事課に俺の名前で推薦状を出しておくか」


「むふふ! サファイアは、できるおんな、なので!」


「じゃあ撃ち方も分かったところで早速、水鉄砲で遊ぶか」


 俺は海パンの後ろに差し込んで隠し持っていた水鉄砲で、サファイアを抜き打ちでヘッドショットした。


「わぷっ! いきなり、うたれた!?」


「油断したなサファイア? 俺が水鉄砲を持っていないと思っていただろう?」


「すごく、おもってた!」


「こう見えて俺はイージスの誇る強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズのエース。やられたままではいないのだ!」


「むらさめ、なんか、カッコいい、かも!?」


「一緒に過ごすようになって知ったんですが、カケルパパって結構、子供っぽいところありますよね」


 一見、呆れたような言葉を言ったミリアリアだが、その顔はなぜか嬉しそうだ。

 俺同様にミリアリアも、普段は見ない俺の一面を見られたことを、楽しんでいるのかもしれない。


「でも、つめたいおみず、きもちいー! あははっ! びゅー! びゅー!」

 お返しとばかりにサファイアが撃った水弾が、俺の顔に2連発で直撃する。


「けほっ、やるなサファイア。射撃のコツは完全に掴めたみたいだな」

「ママが、おしえて、くれたから!」


「ではわたしとサファイアで正義の味方チームを組んで、凶悪犯のカケルパパを砂浜に追い詰めたという設定で遊びましょう」


「……無駄に設定が細かいな」

「設定の作り込みは、ごっこ遊びに欠かせませんから」

「OK、とても納得した」


 その後、3人で水鉄砲で撃ち合いをして遊んだ。


「くくく。この俺様をよくもここまで追い詰めたものだ。褒めてやろう。だがそれもここまでだ。ここがお前たちの墓場と知るがよい!」


「むらさめ、なんか、すごく、わるものっぽい!?」

「カケルパパ、ノリノリですね」


「今の俺はムラサメでもカケルパパでもない! 世界を()べることを神に許された、神の代行者ホーリーキング・カケル様だ!」


「むふーっ!」

 俺の演技に、サファイアはとても興奮していた。


 もちろん俺は犯人役だったので、適度に反撃しつつ、サファイアの射撃には全部当たってあげて、最後はやられて砂浜に倒れ伏した。


「くくく、これで勝ったと思うなよ。俺が死んでも第2、第3のホーリーキングが現れるだろう……」


「むらさめ、まけおしみ!」


「難しい言葉を知っているな。偉いぞサファイア……ぐふっ」


「こうして神の代行者を名乗る、自称ホーリーキング・カケルことカケル・ムラサメの世界征服の野望は、砂浜に(つい)えたのでした」


 ミリアリアの締めのナレーションが入って、この物語は正義が勝って完結した。

 やっぱり物語の最後は、正義が勝って終わらないとな。


 その後は、水鉄砲で砂浜に置いたペットボトルを狙ったり、2丁拳銃でカッコよく乱射したり。

 初めての水鉄砲に大興奮のサファイアにいろんな遊び方を教えながら、家族3人で楽しく遊んでいたのだが――、


 ブブッ。

 俺が海パンの腰につけていた小型の無線機が突然、小さく震えた。


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