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第42話 オペレーション『ウォーターサイド・エンジェル』(水辺の天使作戦)

 その日は季節外れの高温だった。


 まだ春の終わり(=初夏の始まり)だと言うのに、夏の暑さが到来する。

 最高気温はなんと30度の予想だ。


 そんな季節外れの到来を告げる天気予報を見た俺とミリアリアは、サファイアのためにとあるミニ・オペレーションを計画した。


 その名もオペレーション『ウォーターサイド・エンジェル』(水辺の天使作戦)。


 作戦の舞台となるのは、我が家から日帰りで遊びに行けるビーチ。

 国が管理している保養施設の一つで、それをダイゴス長官にお願いして貸し切ってもらったのだ。


 さすがおじじ。

 孫には全力で甘い。


 というわけで、俺とミリアリアとサファイアは車で海にやってきていた。



「うみ! すごい!」

 眼前に広がる海を見て、サファイアがはしゃいだ声をあげた。


「そうだろう、そうだろう」


「キラキラ! おほしさま、みたい!」

「キラキラしていて綺麗よね」


 夏のような太陽の日差しが、水面に反射してキラキラと光っている。


「かぜも、きもちいー!」

「海辺に吹く風って、なんでこんなに気持ちいいんだろうな」


 吹き寄せてくる潮風が、実に爽やかに頬を撫でていく。


「えほんより、もっと、おおきい!」

「この海の先には、いろんな国があるんだぞ」


「みえる? どこ?」

 サファイアが手でひさしを作って遠くを眺めようとする。


「うーん、ここからじゃちょっと見えないな。海はものすごく広いんだ」

「うみ、ちょうすごい……! そんけーする!」


 サファイアがうんうんと、なにやら満足げに頷いた。


「でも海かぁ。久しぶりに来たなー」

「イージスの隊員は任務が忙しいので、なかなか遊びにも行けないですからね」


 なんて会話をする俺たちは、既に3人とも水着に着替えている。


 俺は黒地に、炎が燃え上がるような赤色の意匠がほどこされた、何年か前に適当に買ったハーフパンツタイプの水着で、特筆すべきことはない。


 サファイアは腰にスカート状のヒラヒラがついた、薄ピンク色のワンピース水着を着ている。

 胸のところに、デフォルメされたわんわんが泳ぐイラストが描かれていて、とても可愛らしい。

 長い銀髪は、シニヨンで左右2つのお団子にしてまとめていた。


 控えめに言って海辺に舞い降りた天使だった。



 そしてミリアリアはというと。


 薄い水色のビキニに、腰元には同じく水色だが薄くて半透明で透け感のあるパレオを巻いており、日差し避けにUVカット仕様のパーカーを羽織っている。


 しかしパーカーを閉じると暑いからか、肩に軽く乗っけるような感じでひっかけているだけで、身体はほとんど隠せていない。


 つまりUVカットよりも、水着と合わせてのオシャレが真の目的だろうと推察した。


 実際、ミリアリアはスタイルがいいので、なんていうかその、かなり攻めているというか、女の魅力を意識してしまって、俺はなんとも視線に困ってしまう。


 オシャレなサングラスでもかければ、どこぞのスーパーセレブかと見まがうほどだ。


 イージスの水泳訓練は、任務や実戦を想定した着衣水泳と、ダイビングスーツを装備した本格的な潜水が基本だから、普通の水着姿になることはほとんどないんだよな。


 なのでミリアリアのプライベートな水着姿はかなり新鮮で、とても刺激的だった。


 もちろん一緒にお風呂に入った時に、ミリアリアの裸も見てはいるんだが。

 太陽がさんさんと降り注ぐ屋外で、下着姿と変わらないビキニ水着姿でいるというのが、なんとも不思議というか、どうにも背徳的に感じてしまうというか。


 もしこれがオープンな海水浴場とかなら、四六時中ナンパをされまくって大変なことになっていたのは間違いない。


 ま、ミリアリアならナンパ野郎が不用意に肩に触れでもしようものなら、即座に手首を取って、後ろ手に捻りあげて制圧し、準強制わいせつで警備に突き出すだろうから、そういう意味では心配はいらないが。


 ああでも。

 ミリアリアにナンパ野郎が触れたのを想像すると、なんとも腹が立ってくるな。


 だがカレシでもないのに勝手に想像して勝手にムカついてるとか、最近の俺は少しミリアリアに対して過剰に意識し過ぎだな。


 今のこの夫婦関係は任務なんだから、節度は持たないとだ。


 まずは目の前のミッションに全力を尽くそう。

 パパは可愛い娘のためには全力を尽くす生き物なのだから。


 ってなわけで、まずはサファイアにカッコいいところを見せるとするか。


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