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第4話 ダイゴス・ザ・ビースト(ダイゴス・プラムフィールド)

 突入任務から数日後。


 俺はイージスの長官を務めるダイゴス・プラムフィールドから呼び出しを受け、長官室へとやってきた。


「強襲攻撃部隊アサルト・ストライカーズ隊長カケル・ムラサメ、出頭しました」


「一仕事終えたばかりなのに呼び立ててしまって済まなかったね」


 出迎えてくれたのは、柔らかな物腰と柔和な笑顔が印象的な中年男性。

 この部屋の主にして、俺やミリアリアの上司であるダイゴス・プラムフィールドだ。


 今年で50歳になるはずだが、若々しく引き締まった身体つきは、見る者にまったくといっていいほど老いを感じさせない。


 その経歴は輝かしく、かつてイージスの絶対エースとして、圧倒的な戦闘力でもって数多の反社会的勢力を壊滅させ、裏社会の悪人どもから『ダイゴス・ザ・ビースト(野獣)』と恐れられた傑物である。


『物理』と呼ばれる打撃特化のレア魔法を極め抜き、どんな相手もどんな魔法も『物理(魔法)』で殴って解決してきた。


 さらに言うと俺の魔法の才能を見出し、新人の時にあれこれ教えてくれた――というか叩き込まれた――恩師でもある。

 ちなみにファーストネームから分かるように、ミリアリアの父親だ。


「それでご用というのはなんでしょうか? ターゲットの研究者に逃げられたことでしたら、全ては隊長である俺の責任です。本当に申し訳ありませんでした。どんな処分も受け入れる所存です」


「いいや、あの施設に想定外の隠し通路があったことは、完全にこちらの調査不足だ。まさかあれほどたくさんの地下トンネルが縦横無尽に張り巡らされているとは思いもしなかった。それについては、決して君のせいではないから、気にしないでくれたまえ」


 突入作戦の後にイージスは大々的に秘密研究所を捜索したのだが、そこで無数の地下トンネルが確認された。


 もちろんイージスも地下トンネルがあることは事前に把握していたのだが、俺たちが知っていたのは本来のトンネル網を偽装するための、囮の地下トンネルだったのだ。


 これに関しては、完全にしてやられた。


「そう言っていただけると助かります。では、先日の突入任務の報告書に不備でもありましたか? でしたら今日明日中に再提出可能しますが」


「報告書もよくできていたよ。ま、広義にはその件なのだがね。実は君に父親役を頼みたいのだ」


「……急に何の話でしょうか? 父親役と言われましても、おっしゃる意味がいまいち分かりかねるのですが」


 いきなり父親役と言われても正直困る。


「君とミリアリアが保護した例の少女、なのだがね」

「なにか分かったんですか?」


 またまた急に話が飛んだな?

 父親役の話はどうなったんだ?


「分かったこともあるが、分からないことも多いと言ったところだね。名前はサファイアというらしい。物心ついたころにはあの施設にいたそうだよ」


「……まさかそれだけですか?」


「そう言わないでくれたまえ。どうにも我々には心を開いてくれなくてね。少し困っているところなんだ」


「おそらくは人間不審でしょうね。あまりに可哀想な境遇でしたから。幼い時分に、地下の研究所で小さな檻の中に閉じ込められて研究材料にされる――そんな経験もすれば、誰でもそうなります」


「まったくもって同意見だよ。あの子は心の傷――トラウマを抱えている。しかしね。あの子の心を開くことができた人間がいたんだ」


「それは朗報ですね。さすがはイージス、いい人材が揃っている」

「控えめな君が自画自賛とは珍しいね」


「……はい? 自画自賛とは、なんのことでしょうか?」

「その人間とはズバリ君だよ」


「……えっと? 今なんと?」

「ズバリ君だと言ったんだ」


「申し訳ありませんが、おっしゃる意味がさっぱり分かりません。自分は救出時以外に、あの子と接点を持った覚えはありません。しかも一言二言、会話をしたくらいです」


「だからだよ」

「と言いますと?」


「正確には君だけではなく、君とミリアリアに心を開いているようなのだ。どうやらあの子は、助けてくれた君たちのことを父親と母親だと思っているようでね。心当たりがあるだろう?」


 まさかパパとママかと尋ねられて、安心させるためにYesと答えたの原因だってか?


「いえ、あの。あれはその場の成り行きでして。というか、どうも俺の理解を越えた方向に話が進みつつあるのですが」


 ダイゴス長官の話に、俺は困惑を隠せないでいた。

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