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第21話 ◇ミリアリアSIDE◇

◇ミリアリアSIDE◇


 今日、わたしは母親になった。


 と言っても結婚したわけでも、子供を産んだわけでもない。


 イージスの任務で、わたしがママに、カケルがパパになって、サファイアという女の子と家族(仮)になることになったのだ。


 その名もオペレーション・エンジェル。


 母親の役をするのが任務だということは分かっている。

 だけどわたしは嬉しさを隠せないでした。

 大きな好意を抱いているカケルと夫婦になれたからだ。


 もちろん非道な人体実験をされたサファイアの境遇に同情し、母親になってあげられるならなってあげたいと思う気持ちは真実だ。


 だけどそれと同時に、カケルと本当の夫婦になりたいと強く願う自分がいることに、わたしはもう見ない振りをすることはできなかった。


 わたしはカケルが好き。

 正義感に溢れていて、まっすぐで、強くて、素敵な男の人。


 イージスで一緒に任務をこなしていくうちに、わたしの恋心はどんどんと大きくなっていった。

 だけど今の関係を壊すことが怖くて、ずっと自分の気持ちを伝えられないでいた。


 だからこれは降って湧いたチャンスなのだ。


 サファイアはわたしとカケルにだけ懐いている。


 そして3人でいたがるサファイアのおかげで、自然とカケルとの距離も近くなるし、そうすると当然、関係も深まるはずだ。


 事実、今日は一緒にお風呂に入ってしまったし、今もこうして同じベッドで横になっている。

 もし昨日のわたしに今日のことを話しても、絶対に信じてもらえないだろう。

 それくらいに奇跡のような状況だった。


 あとはカケルが私のことをどう思っているのか、ということなのだが、それについては正直、あまりいい感触は持っていない。


 カケルは色恋沙汰に関してどうにも鈍感だ。


 自分を見出してくれたダイゴス長官に恩義を感じているのもあって、イージスの任務に精力的に取り組んでいるのが一番の理由だろう。


 過酷な任務に懸命に取り組む姿もまた、とても魅力的ではあったものの。

 すぐ近くで好意をアピールし続けているわたしの気持ちにまったく気付いてくれないことに、最近のわたしは小さな不満を覚えずにはいられないのだった。


 でも。

 少なくとも。


「一緒にお風呂に入った時、カケルの身体は反応していました。わたしのことを魅力的だと思っているのは間違いありません」


 だったら今回の任務を絶好の機会として、カケルにわたしの想いを知ってもらえばいいんです。


 任務を完璧にこなし、母親としてサファイアと仲良くなり、その身を守り、そして同時にカケルに気持ちを伝えて本当の夫婦になる。

 わたしはこっそりと、そんな秘密のオペレーションを胸の内に抱いていた。


「知ってますか、カケル。こう見えて、わたしは欲張りさんなんですよ?」


 わたしは今回の任務を通して、わたしの願いも成就してみせます。


 すっかり寝入ってしまっているカケルとサファイアの寝息に、得も言われぬ幸福を感じつつ、わたしは胸に強い決意を抱きながらそっと目を閉じたのだった。


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