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激闘 ナズナ vs 一閃丸

帰路、ナズナは立ち止まった。


雨上がりの空気の中、ただひとつ異質なものがあった。


──殺気。


ナズナは全身の細胞に緊急警戒を命じる


視界の先に立っていたのは、異形の侍だった。


全高十五メートル、腕は十本。 それぞれに、三メートル級の刀を構える。


「……我は一閃丸。」


低く、澄んだ声が夜を切り裂いた。


「遥か昔より、世界を越え、剣を以てのみ生を示す者。」


大体把握できた。この雰囲気感じたことがある、あの石柱のクルサルと同じだ。それにこの姿は千界に不老不死の薬を打ってもらった時に見せてもらったセリカの召喚の映像に映っていたからだ


ナズナはすべての刀の数センチの動きにも警戒を崩さず、問うた。

「目的は?」


一閃丸はわずかに首を傾げ、告げた。


「一週間後。お主と戦いたい。」


──それだけ言い残して、影のように消えた。


いきなり襲われなかったのは助かった、なぜ一週間後かはわからない、歴戦の戦士の礼節なのか?顔がアンテナみたいなとこを除けばほとんど侍みたいだった


不可能のシミュレーション

それからの一週間、ナズナは無数に戦闘シミュレーションを繰り返した。


結果は、全敗。


どうやっても勝てない。


一閃丸の一撃は、空間ごと裂き、常識の速度を超える。


未来を予測しても間に合わない。


仮に防げても、次の瞬間には木端微塵にされる。


不老不死の力があっても、"砕かれたら"終わりだ。


(……無理だ。)


そんな言葉が、何度も喉元に上がった。


それでもナズナは、止めなかった。


もし、あんなのが世界に沢山出現したら、世界は終わってしまう。今はセリカによってその境目にいる、止められるのは自分しかいない


雷雨の森、開戦

選んだ場所は、深い森。


遮蔽物が多く、雨が視界を奪う。


──少しでも、動きを鈍らせるため。


その中で、一閃丸は現れた。


悠然と、しかし絶対的な殺意を纏って。


私は、ラズナリアを両手に持ち構える──かつて最果ての人に仕える剣士との戦いに勝利した際に授けられた魔導の剣だ。


「──始めよう。」


一閃丸の声とともに、世界が弾けた。


逃走、そして焦燥

斬撃が、大気を引き裂く。


──速い。


──重い。


──広い。


リーチ十メートルの死線が、雨を切り裂き、木々を爆散させる。


範囲内の物質は超高速な刀のスライスに一瞬で粉々になる


異常なくらい移動も早い。侍?違う。これはそんなレベルではない異世界の剣士のレーティングは遙に人間の上なんだろう


ナズナは走った。跳んだ。転んだ。


泥を這い、木々を盾にして逃げた。


身体強化魔導を纏い、雷雨を駆け抜けた。ラズナリアは剣というよりは魔導の塊でここから引き出す魔導で身体強化やいくつかの属性的現象を起こせた。初めて使いながらそれを理解した


だが、限界は見えていた。


体力は削れ、精神はすり減り、呼吸は荒れた。


(このままじゃ、終わる......)


けれど、私は戦い進むことをやめない


──負けられない


逆転への点火──パラグラム発動

この消耗戦ならいずれ負ける、パラグラムで打開するしかない。体力、精神どちらもかなり消費してしまうのでタイミングを計ってたがもう今しかない


──パラグラム、発動。



脳が焼けるような痛みの中、ナズナは"未来"を視た。10秒前後を自分の想像できるイメージに限りなく近づけることができる、ある程度の体の損傷も元に戻る。要はそのイメージを信じれるかで、この相手に対して私はイメージができずにいたのだ


一秒後、一閃丸がどう斬るか。


その一手、その足、その呼吸。


すべてを、先取りする。


私は、斬撃をすり抜けた。


その繰り返し何十回、何百回も


その時のナズナはとっくに限界は超えていた、それでも寸分狂わぬ計算とアクロバティックな回避、これを成す原動力は信念のみだった


いつか見た少年のように、自分よりも遙に上の存在にも虚勢や気持ちのみで圧倒していく、数秒ごとに限界が遙に高みに変わる


「勝てるかもしれない.....」ナズナはぽつりと曖昧だが確かな直感を呟いた。見える。全部見える。勝てる気がする


ぬかるんだ地面を蹴り、枝を利用して空中へ跳ぶ。


背後へ。


──たどり着いた。


一閃丸の背中。


ナズナに向けられたことのない、無防備な場所。


ナズナは叫んだ。


「この世にできないことなんて、なんにもねぇんだよ!!!」


魔導を、解放した。


空間が悲鳴を上げる。


周囲の雨粒が、一斉に氷へと変わった。


一閃丸の刀が凍り、動きを封じられる。


大地ごと氷結し、巨大な鎧を絡め取る。


──一瞬。


だが、十分だった。


ラズナリア。


ナズナはそれを、剣としてではなく、"両腕の鎧"として再構成していた。


両腕に纏い、全身を守る魔導の重装。


──今、この瞬間のために。


ナズナは空中で雨を裂き、氷を砕きながら。


そして、全魔導放出。絶対のイメージと渾身の力で──


「オラアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」


一閃丸を、全身で抱え上げた。


──バックドロップ。


天地を引っ繰り返すような衝撃。


雷鳴が轟き、地面が砕け、空が震えた。


一閃丸は地に叩きつけられ、すべての刀が折れた。


動かない。


……勝った。


静かな勝者

大雨の中、ナズナは泥だらけで立ち上がる。


両手は血に濡れ、身体中が痛む。


それでも、ナズナは笑った。


「できねーことなんて、ほんとに──なんもないね。ははっ」


雷雨の森に、私の声だけが響いた。



泥に沈む巨躯。


折れた十本の刃。


それでも、一閃丸は──動いた。


ガキィ……ガリィ……。


「まだ動くか.....」


ふらついた。

身体は、もう自分のものじゃないようだった。

それでも――ナズナは前に出た。


膝をつき、剣を──いや、砕けた刃の残骸を地に置く。


ゆっくりと、巨躯が頭を垂れた。


「……完敗。」


その声は、かすれていたが、 それでも確かに──**誇りと、敬意**を宿していた。


「我が刃を折り、我が心を折った。」


「お主こそ、真にして──刃の王。」


静かな雨音のなか、 巨躯の侍が、ナズナに跪く。


その姿は、敗者ではなかった。


誇り高き武人の、 心からの賛辞だった。


影の監視者たち──召喚体たちの眼差し

その光景を──誰かが、見ていた。


闇に紛れた無数の影。


スヴァレ、パラサイダー、強獣、ヴェルミエ…… セリカに呼び出された、異界の面々。


誰も声を出さない。


ただ、黙って見届けていた。


──この少女が、


己らの想像を、超えてきたことを。


スヴァレが、赤い眼を細め、 にやりと笑った。


「……あいつ人間か?ひひっ」


ひひっ、とかすれた笑い声が、雷雨にかき消えた。


フィルムちゃんが騒ぐ


「すごーーーーい!!えいがみたい!!ん??あのひとしってる....ナズナおねーちゃん??かも??じょゆうさんだったの??フィルムちゃんとおともだち♡なんだから.....えへへ」


他の面々も口には出さないが目つきが変わっていた。純粋な力の天秤を我々も試したいとでも言うように


玉座より見るもの──セリカの視線

さらに、もっと遠く。


──黒曜の玉座。


そこに座す、白銀の少女。


神代セリカ。


ナズナの激闘を、初めから終わりまで、 一切の感情を見せずに──観察していた。


セリカは、そっと笑う。


「……やっぱり、あなたは期待以上だわ。」


その声は甘く、けれど底知れず冷たい。


ナズナの決意──未来へ

雷雨は、まだ止まなかった。


泥だらけの身体、傷だらけの手。


ナズナは空を仰ぐ。


──私は探偵で.....推理する.....女.....あれ?なんで怪物をバックドロップしてるんだろ?


限界の体力の末、ふと我に返った


「でもまぁ……進むよ。」


ぼそりと、誰にも届かない声で呟いた。


ナズナは、さらに歩き出す。


誰にも負けない、たった一人の女王として。

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