魔法屋店主、虹蝶勇輝
「今は呪莉、いないんだね」
魔法学校が死神に占領されてしまったという知らせが届き、魔法屋にいてくれた呪莉がそっちへ行っていしまった。
今までも何度か呪莉がいなくなることはあり、その時は代わりに別の魔法屋店主の人が何人か来てくれていたんだけれど今回は誰も来る気配がない。
魔法学校もよっぽどピンチなようだ、情けないね。
まあ、私はこんな上から目線で言えるような強さはないけどさ。
「チャンスじゃん、滅ぼすよ!」
さて、そんな私は虹蝶勇輝。現魔法屋店主だ。
そして目の前でさっきから不穏なことを言っているのは秋月子栗鼠。死神三傑の一人だ。私一人では到底敵わない相手だ。
「やれるもんなら」
自分を鼓舞するためにも強気なことを言ってみる。
私がやらなきゃいけないんだ。
ここで私が負けて、希望学校が死神に攻め込まれてしまったら、呪莉さんが魔法学校へ行った意味もなくなってしまう。
大丈夫、いくら私が傷ついても、秋月子栗鼠を通しさえしなければいいんだ。
「……あの……えっと」
秋月子栗鼠の服が変わり、弱々しい口調になる。
もうこの手には引っかからない。
「固有魔法、無属性、光槍雨」
私は容赦なく槍の雨を秋月子栗鼠に降らせる。
「ちっ……」
死神の服に戻った秋月子栗鼠が舌打ちをしながら全ての槍を鎌ではじく。
今一気に畳み掛けるしかない。
「固有魔法、魔法屋店主、強制送還」
そう、これでいいのだ。魔法屋店主は死神を通さないことが仕事であって、倒すことが仕事ではない。
「えいっ」
しかし……
いやそんなのありかよ!?
秋月子栗鼠が鎌で軽く強制送還をはじいてしまった。
鎌ごと強制送還されてくれれば楽だったんだけど。
「固有魔法、無属性、光雨槍」
だったらひたすら攻撃を続けて時間稼ぎを……
今魔法屋が大変な状況であることはみんな知っている。
だから、必ず援護が来るはずだ。それまで持ちこたえないと。
「それっ」
秋月子栗鼠が鎌を振りかざして飛び掛かってくる。
相手は三傑、斬られたら私が死神になる。
「固有魔法、魔法屋店主、蝶ノ舞」
だから、魔法を使って回避に専念した。私が死神になるのは最悪の事態だよね?
「初級魔法、草属性、葉弾」
秋月子栗鼠も魔法を打ってきた。この魔法を避けたら、鎌に当たる。だったら当たるしかないか。
そんなことを繰り返していると、ダメージも溜まってしまう。
かといって、詠唱する隙もあまりない。
どうしたら……
でも、避けるのを止めたらそれはそれで詰んでしまう。
反撃なんて考えるな、時間を稼ぐんだ。そう自分に言い聞かせてるけど、やっぱり何も攻撃しないで耐えるというのも精神的に苦しい。
魔法によるダメージが着々と溜まっていく。体力も……まずいな。
せめて斬られないように。私は死神にならずに死ねるように。
思いついたのは、自殺だけだった。
「固有魔法……」
最後の力のつもりで回避しながら無理やり詠唱しようとしたところだった。
「よく頑張った」
呪莉が、戻ってきた。
「えー、もう少しだったのに」
秋月子栗鼠は苛立たし気ながらも呪莉には敵わないことが分かっているからか、撤退していった。
「呪莉遅い!もう少しで自殺してたぞ」
私は呪莉に文句を言った。本当は助けてくれたことに感謝をするべきなのに。
「信じてたんだぁよ、ちゃんと守り抜いてくれるって」
呪莉の言葉に私は間抜けな顔をしていたと思う。
少しだけかもしれないけれど、呪莉は私を認めて、期待してくれた。
なんだか、嬉しかった。
「つかれた」
私はそう言って何も考えずに寝転がった。
「全く、私も魔法学校で死神と戦ってきたばかりなんだけどねぇ」
呪莉は苦笑いしながらも私が休んでいることを咎めない。
私は自分でも思っていたより追い詰められていたようだ。すぐに眠気が襲ってきた。
「休みなさい」
絶対的に安心するその声を聞いて私は眠りに落ちた。
また強くなりたいな、と思いながら。
少し遅くなりましたが、三章も完結できました。
もしここまで読んでくださった方がいらっしゃれば本当に感謝です。
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