魔法学校奪還戦⑤
私、星月夜翡翠は結界奥義で死神に攻撃する。
「固有魔法、無属性、超治癒薬砲」
どれだけダメージを与えても回復してくる。
回復してくる敵と戦ったのは初めてだけど、ここまで厄介だったなんて……
「固有魔法、翡翠神、属性奥義」
「超級魔法、火属性、灼熱絶火」
珠夜さんと望初さんがタイミングを合わせて魔法を打つ。
「固有魔法、雷属性、巫女舞雷鳥」
死神がそれに合わせて魔法を打ち返してくる。
望初さんと珠夜さんの魔法がすぐに死神の魔法を打ち消したが、その一瞬の間に回避されてしまっている。
おかしいな、呪莉さんが笛を吹いているから少しは弱体化していていいはずなんだけど。
いや、そういうことか。
死神を一瞬で消し飛ばせるくらいの火力は私たちにも出せているのだ。
それなのに回復を許すということ……
死神のダメージを軽減している存在がいる。
「見つけた、少し遠いんだぁよ」
私がそのことに思い至るよりもずっと前に呪莉さんは気が付いていたらしく、既に死神を見つけたらしい。
「任せろ!」
炎帝さんが呪莉さんの指示する方向に駆けていく。
「おそらくもう一人の四天王だぁね。気を付けて……翡翠も行ってくれ」
呪莉さんにそう言われたので、私は慌てて炎帝さんを追いかける。
「さて、逃がさないこと優先で追い詰めてくれ」
呪莉さんは残った人にも指示を出していた。
「もちろんなのです」
幽依先輩はやる気満々だ。
「絶対負けないから」
明里先輩も気合が入っている。
さあ、はやくもう一人の四天王とやらを倒さないと。
「リズミック・ジムナスティックス!」
その声と共に降り注ぐのは流星。
メロディー先輩だ。
「ロディーちゃん!」
炎帝さんは嬉しそうにメロディー先輩に駆け寄っていく。
「いや、今戦闘中なので」
メロディー先輩はあっさりと炎帝さんを避ける。
「分かってるって。劫火牢」
今のやり取りは何だったのだろうか。炎帝さんはすごく自然に戦闘に加勢した。
「……」
死神は何も言わないまま全ての攻撃を捌いた。
避けてるわけじゃなくて、捌かれてるところが厄介だな。攻撃が当たってもほぼ効かないってことじゃん?
とりあえず干渉制御で死神と空気への干渉を外し、重力制御で死神のもとへ。そこから死神に干渉。
死神が破裂した。
ここまですれば流石に……
「あぶねえ!」
死神は破裂したはずなのに、後ろから鎌だけ飛んできた。
今、炎帝さんが間に入ってくれなかったら頭に突き刺さってた……
「大丈夫ですか!?」
それより、鎌が炎帝さんの腕に刺さってしまった。
「わりぃ、俺のこと殺してくれ」
炎帝さんが苦々しげな表情で言う。
確か、四天王以上の死神に鎌で斬られると、死神見習いになるみたいな……
「諦めないでください!元に戻れます、珠夜さんとか戻りました」
どうして、炎帝さんが……
「……」
メロディー先輩が何とも言えない表情で炎帝さんを見つめている。
「現実はそううまくはいかないよ。さあ、自我がなくなればロディーちゃんのことも翡翠のことも殺しにかかるだろうから、結局一緒だよ」
炎帝さんの声はとても優しくて、切なかった。
「でも……」
そんな炎帝さんに私は何もできなかった。
「こればっかりは遡楽でも無理なんだ、諦めてくれ。申し訳ないが殺してくれ、遡楽を泣かせないためにも、な」
遡楽さんで出来ないことは、誰にも出来ないだろう。
「……頼む、よ?……うぅ」
炎帝さんの目が虚ろになってきた。それは、もう後戻りできないことを示していた。
「……」
その時、メロディー先輩が勢いよく杖を振り下ろした。
地面に亀裂が走る程の衝撃が、炎帝さんを打ちぬいた。
『ありがとう、ロディーちゃん』
その声は炎帝さんの口から発せられたものだろうか?それとも、魂が消える瞬間の最後の言葉だろうか?
頭が追いつかなかった。
炎帝さんが私をかばって、死神になりかけて。メロディー先輩が炎帝さんを殺して。
「ほら ~、い、く、よ?」
メロディー先輩はいつも通りを装っているが、全身から悲しみがにじみ出ている。
私は最低だ。炎帝さんにかばってもらって、手を下すこともできずに。メロディー先輩の手を汚して。
「せめて戦えよ!」
メロディー先輩の口から紡がれたその言葉に耳を疑った。メロディー先輩のこんなにも苦しそうな声を聞いたことがなかったから。
メロディー先輩は私を恨んでいるだろうか?いや、恨まない理由がない。
だったら、出来ることはやらないと。
償わないと。
私は呪莉さんたちのいる場所へ走った。
重力制御を使った全力で。




