荒れた地で
「建物、ボロボロになっちゃいましたね」
私、星月夜翡翠は近くにいた魔法学校の生徒に話しかける望初さんを見ていた。
「……死神に不覚を取るなんてっ!」
話しかけられた生徒が苛立たし気に声を荒げた。
死神が攻めてきていたんだ……
望初さんが私たちのところへ戻ってくる。
「だとすると、希望学校に侵入してきた死神三傑の経路が分かるわ。魔法学校を通って来ていたのね」
ミレイユのことだと思う。なるほど、こうすると魔法屋を通らないで希望学校に来れちゃうわけだ。
「もう少し聞き込みできますか?」
とりあえず、魔法学校が死神に攻め込まれてしまったことだけは分かった。でも、それ以上は何も情報がない。
「分かったわ」
望初さんが別の生徒に話しかける。
「どうして死神が来てしまったの、辛いわ……」
望初さんが本当に苦しそうな声を出す。
「ゾメッチって演技うまかったんだ」
珠夜さんが望初さんを何とも言えない目で見つめている。
「望初さんって何でもできそうなイメージですけどね」
望初さんってすごいよな、本当に。
「いまいち分からないよ、生徒会も情報開示してほしいよね」
魔法学校の生徒が返事をする。
そして望初さんが戻ってきた。
「これ以上の情報は偉い人を探さないとダメそうよ」
望初さんの言う通りなので、私たちは再び姿を隠し、魔法学校の中を歩き回る。
「生徒会、マヨタンは会ったことあるけど……」
珠夜さんが複雑な表情を浮かべている。そんなにやばい人達なのだろうか?
ユェンユェンの妹とかなら話せたりしないかという淡い期待を持っているけど、結局は初対面なわけだし、そんなにうまくいかないよな。
生徒会長は希望学校の入学の許可をくれた時に一回見たけど、あんまり覚えていない。
「翡翠ちゃん、ちょっといい?」
歩き回っていた時、珠夜さんが不意にそう言った。
「誰か見つけたの?」
望初さんが珠夜さんに尋ねる。
「うん、あの子、闇空帆傘」
珠夜さんが見つめる少女は黄色のカッパを着ていた。しかも傘を持っている。その子の目は真っ黒で、なんか強そう。
「こんにちは」
珠夜さんがその子、闇空帆傘さんに声をかける。
「あらぁ、舞羽さん?本当に来てくれてうれしいわぁ」
帆傘さんは笑顔で答える。知り合いだったんだ。
「うん、魔法学校はひどい状態だけど、何があったの?」
珠夜さんが続けて尋ねる。
「もぅ、聞いてくださいよぉ。お姉様が突然希望学校との連絡も交流も断つとかいいだしてぇ……そしたら死神四天王が四人一気に来たんですよぉ。あの四天王どもがまず建物から壊すせいでこうなったのですぅ。建物の復興をしようと思えば狙われるのでぇ、隠れる場所もないからみんな疲れまくりな状態よぉ」
なんか、すごいいっぱい教えてくれそうな子だな。
「おそらく、この子の姉が生徒会長よ。生徒会長は闇空帆野歌だから」
望初さんがそっと教えてくれる。
「大変だね、でも四天王にここまでやられる?」
珠夜さんが首を傾げる。そうだよな、レンレンさんとかがめっちゃ力使ってるらしいし、それなりに戦力はあるはずだ。でも、四天王が全員そろってたらこうなってもおかしくない気はするけど。
「なんかぁ、言ってたんですけど……魔法屋に虹蝶呪莉がいるせいで突破できないから、希望学校への侵入経路を別で確保しようとしてるみたいなっていうのを盗み聞きしましたぁ。それにぃ、死神四天王だけじゃなくてなんか即死攻撃放ってくるやつまで来たんでぇ、被害は膨らんでますぅ」
聞いてないことまで答えてくれている。
確かに、呪莉さんがいるなら魔法屋の突破を諦めるのも納得だ。つまり、希望学校と魔法学校は連絡が断たれているから、希望学校からの援軍も望めず、しかも強いやつが別で来たから……みたいな大変な状況だ。
「即死攻撃って……」
望初さんが何かを思い出したように呟く。
「知ってるんですか?」
私はそんな望初さんに聞いてみる。
「知ってるもなにも、戦ったじゃない。ついこの前」
ん?
あ……
炒菜椿の人形のサソリ?
「それって人間とサソリが混ざったっぽい見た目してた?」
私たちの会話を聞いた珠夜さんが帆傘さんに尋ねる。
「そうですぅ、それですぅ」
帆傘ちゃんが頷いているので、多分それはサソリだ。
だとするとこの被害は納得だ。
サソリがいたら逃げるしかない。そうすればその辺一帯の建物は壊し放題。
「私たち、どうするべきかしら。魔法学校を援護したほうがいいのか、無視して帰るべきなのか」
望初さんは考え込む。
「この状況見て無視は流石にできませんよ」
私は望初さんに言い返す。
「いや、死神はあくまでも希望学校に侵略するためにここを占拠したとしたら、死神の狙いは絞られる」
なるほど、望初さんは希望学校の守りを固めたいと思っているのか。
「でも、もし私たちが頑張って魔法学校が完全に占拠されなければ、それはそれで希望学校守れますよ」
望初さんを説得したい。だって見捨てられないもん。
「分かったわよ」
望初さんが私の意思を感じたのか、しぶしぶ頷いてくれる。
「ねえ、マヨタンも戦うよ。マヨタンの友達2人もね」
珠夜さんがそれを聞いて、帆傘さんにそう言った。




