いざ出発
何も考えずに私、星月夜翡翠は店主の間を出てきてしまった。
目的地である魔法学校がどっちにあるのかも分からないのに。
「何をしているのよ」
店主の間の外で珠夜さんと特訓をしていた望初さんに呆れたような目で見られる。
「あ、すみません」
私は事情を説明した。
るるの兄の失踪について調べたいから、何か事件が起きているであろう魔法学校へ行きたいということ。
そして、勢いよく飛び出したはいいが、魔法学校がどこにあるのか分からないということ。
「マヨタン、一緒に行こうか?」
珠夜さんが行く気満々と言わんばかりに飛び跳ねる。
「……いいんですか?」
すごく嬉しいけど、死神山にも付いてきてもらってしまったし、今は特訓中だろうし、なんだか申し訳ない。
「いいよ!…………」
珠夜さんが元気な返事の後に、私の耳元でそっと囁いた。
内容は、望初さんがスパルタすぎると言うものだ。
「珠夜?」
望初さんはそんな珠夜さんの考えなどお見通しなのか、冷たい目で珠夜さんを見ている。
「……ゾメッチだって翡翠ちゃんのこと、助けたいでしょ?」
珠夜さんはあくまでも私を助けるためだと言い張るつもりのようだ。特訓が嫌ということは隠し通すらしい。ばれてるけど。
「まあ、だからこそ力が必要じゃない?」
望初さんも食い下がらない。
「でも、いくら力をつけたところで、その時戦場にいなかったら意味ないじゃん」
珠夜さんは必死だ。純粋に私の心配をしてくれているのだろうか?それとも特訓から逃れると言う明確な目的があるからだろうか?
「はぁ、仕方ないわね」
しばらく論争みたいなことが続いたあと、望初さんが折れた。
「さて、いったい何が起きてるんだろうね」
珠夜さんがワクワクとした顔で言い放つ。無事特訓から逃れられたから喜んでいるわけではない、よな……?
「気をつけて、油断は禁物」
望初さんが珠夜さんを宥める。
「分かってるって、じゃあ行こうか」
そう言って歩き出した珠夜さんに着いていく。なんだかんだ魔法学校って行ったことないな。希望学校みたいに噴水広場とかあるのかな?建物かっこいいのかな?
なんかワクワクしてきちゃった。
結構歩いた気がする。
魔法学校までにはまださらに距離があるらしい。
「ゾメッチ、翡翠ちゃん、あれって……?」
珠夜さんの視線の先には魔法学校の人がいる。
「見張り、かしらね」
望初さんの言う通り、その人は周囲を鋭い目で見渡している。散歩中に景色を楽しんでいる可能性とかもあるけれど、そういう雰囲気じゃない。
「一応見つからないようにしますね」
私は2人の手を握って見張りらしき人への干渉を外す。これで見えないはず。
「……忘れてたけど、そういえばあなた神だったわね」
望初さんが一言呟く。そうだよな、能力は十分チートなはずなのに私より強い人ばっかりなのはなんなんだろう。
「それにしても多いね」
珠夜さんの言う通り、見張りが大量にいる。すでに20人は見た。
片っ端から干渉を外してるけど、そのうち見つかりそうで怖いな。
まあ、数人に見られただけならその人たちの見間違いになるから大丈夫なんだろうけど。
そんなこんなで魔法学校へ辿り着いた。
「何があったんでしょう……」
それは酷い光景だった。周囲には無事な建物が見つからない。
でも、魔法学校の生徒たちは元気そうに走り回っている。体が元気そうとはいえ、表情に余裕はなさそうだけど。
「望初さん、虹の蝶を外したら一般人として魔法学校の生徒と対話出来ませんか?」
希望学校から魔法学校へ行く道へ見張りがいたということは、希望学校からの生徒を拒絶しているということ。
制服を着ている私と珠夜さんは追い出される。
「やってみるわ、珠夜お願い」
望初さんが珠夜さんに虹の蝶を渡したので、望初さんと繋いでいた手を外す。
さて、うまく行くといいけど。




