るるの話
「るる、メルちゃんって知ってる?」
私、星月夜翡翠はるるの目を真っすぐに見て話しかける。
「メルちゃん……?あ、めるお姉ちゃんのことだね。知ってるよ、大事なお姉ちゃんだからね」
るるはどうしてしまったのだろう。
冷静に考えれば、炒菜椿の元人形であるメルちゃんがるるの姉であるはずがない。澄ちゃんのように洗脳?的なことになっている可能性もあるが、それは低いと思う。
おそらく、るるがメルちゃんを操っているのだから。逆に洗脳し返してたら、それはもう炒菜椿が反則級の強さということで……
「どうしたの、翡翠ちゃん?めるお姉ちゃんに何かあった?」
笑顔で言葉を追加して来た。るるの目が少し怖く感じた。
「るる、何が目的なの?」
怖いけど、ひるまず何とかるるの目を見る。
「ふぁ~」
勇輝さん、なんかしらけるから隣で寝ないでほしいんだけど……
まあ、今の話も全く分からないだろうし、仕方ないか。
「目的?翡翠ちゃん、どうしちゃったの?」
るるは何も話さないつもりのようだ。
メルちゃんを操っているのがるるじゃない場合もなくはないけれど……いや、るるがメルちゃんを知っている時点で操っているのは確定だ。
そうじゃないと、霊界の情報なんて知る余地もないはずだから。
「どうして、メルちゃんを操っているの?どうして澄ちゃんを……」
私が尋ねると、るるはにっこりと笑った。
「うん、気づいちゃってる感じか……」
そして、諦めたような表情で語りだした。
「お兄ちゃんが失踪しちゃったのは知ってるよね、それがまだ見つからないの。るる的には、身体狩りの炒菜椿とかに殺されたんじゃないかって思って、調べようと……」
そのためにメルちゃんを利用していたのか……
「だけど、制御はなかなか難しくて、日常生活はおろそかになっちゃうし、大変だよ。しかも、めるお姉ちゃん捕まっちゃうし」
るるの独白に耳を傾ける。
「……それで、反応が薄かった」
夢叶さんは納得したように頷く。
「めるお姉ちゃんはね、本物のお姉ちゃんだと思ってた。だけど、身体狩りに襲われて、お兄ちゃんと話して、気が付いたんだ。あれは人形だったんだって」
そのように話す、るるの目は、どこか辛そうだった。
「翡翠神の魔法を持っていた私を、監視していただけなんだって。しかも、魔法を翡翠ちゃんに返したら、めるお姉ちゃんの動き、止まったんだよ。放棄されちゃったんだよ」
るるの目から涙があふれだす。
「実は、めるお姉ちゃんが人形だって気が付いたのお兄ちゃんなんだ。その時まだ私は魔法を持っていたから、お兄ちゃん、消されちゃったのかなって。戦力が欲しいから近くにいた子、澄ちゃん?に話しかけたけど……」
夢叶さんがそっと近づいて、るるの頭をなでる。
「なるほどなんだぜ、身体狩りの狙いに気が付いた兄が、口封じに殺された可能性を追って、霊界を調べていたということだと思うんだぜ。ちょうど都合よくいい人形があったから」
操乗ちゃんが話をまとめてくれる。
「……没頭しすぎ」
夢叶さんがるるの頭を軽くたたく。
「うぅ……疲れた」
るるがその場に倒れる。今まで相当無茶をしていたのだろう。
「るる、聞いて。私が必ず身体狩りについて調べるから」
私はそんなるるの耳元でささやく。
「もう無理しないで」
そう言って、私は勇輝さんのもとへ。起こさないと。
「……翡翠ちゃんも、無理しちゃだめだよ」
るるの弱弱しい声を背中に受けて。
「……帰るの?」
勇輝さんが目を開ける。
「翡翠、一つだけ聞かせてほしいんだぜ。勇輝様は、いるのか?」
操乗ちゃんが尋ねる。
「いるよ」
私はただ、そう言った。
振り向くと、操乗ちゃんが泣いていた。
「アキステノホムユリワ」
魔法屋に帰る呪文。
それを唱えた。
「お帰りなんだぁよ」
魔法屋に帰ると、呪莉さんがのんびりと寝転がっていた。
「えいっ!」
勇輝さんが呪莉さんに勢いよくとびかかる。
人間界に強制的に送り込まれたことへの恨みだろうか。
「おっと、怖いねぇ」
呪莉さんがそれを軽く回避していく。寝転がっていたはずなのに、いつの間に立ったのだろうか?
「なかなか良い経験だったと思うんだけどねぇ」
呪莉さんが勇輝さんをなだめようとしているけれど、一切効果は見られない。
「まあ、寝れたと思えば」
言葉とは裏腹に、勇輝さんの表情には怒りがにじんでいる。
「あの、情報つかめました」
私は本題を話す。
「流石だぁよ、店主の間でぜひ話してほしいねぇ。結空?」
呪莉さんがそう言うと、目の前の景色が変わった。
「おかえりなさい」
目の前にいたのは望初さん。
やっぱり結空さんの力はすごいな。一瞬で来れちゃった。
あの後、勇輝さんと呪莉さんがどうなったのか少し気になるけど。
「成功した感じかな」
遡楽さんもいた。
「はい」
私は報告した。るるが兄を探すために、メルちゃんを使っていたこと。
そして……
「身体狩りについての情報は私が集めます」
るるに言われた通り、無理はしない。でも、できる限りのことはやりたい。
「なるほどね、いい目標じゃないか」
遡楽さんは満足げだ。
「望初さん、仲直りできたんですか」
あと、個人的に気になっていたことを尋ねてみた。
「ええ、もちろん」
こっちも詳細が気になる話だが、望初さんが怒ってしまいそうだから聞くのはやめておく。
さて、これからどう動こう。




