帰還
「翡翠ちゃん!」
目の前にいるのは珠夜さん。
そう、私、星月夜翡翠は希望学校へ無事帰ってきたのだ。
死神山の最下層から脱出した後の道のりは順調だった。強い死神に会うことも、道が見つからず八方塞がりになることもなく、無事帰ってこられた。
希望学校に帰って早々、私たちが向かったのは希望学校の中心である噴水広場。望初さん、珠夜さんにとりあえず無事を報告したかったので、二人がいそうな……というか誰か人がいそうな場所へ来た感じだ。
そして、今珠夜さんに会ったところ。
「珠夜さん、無事帰ってこれました。三傑さん倒せたんですよ!」
珠夜さんの顔を見て、帰ってきたという実感が湧く。
思い返せばかなり大変な旅だった。道中でとんでもないパワーを持つ日生蓮に襲われるし、三傑さんを追いかけて最下層まで行っちゃうし、最下層で出口を探していたら身体狩りの炒菜椿に会っちゃうし。
でも、これからはもっと厳しい戦いが待ち受けているんだろう。これが私の選んだ道だから。
決めたからには、やり遂げないと。
「お疲れ様、とりあえずゆっくり休んで!」
ただ、今は。
珠夜さんの言う通りゆっくり休ませてください。
噴水広場に望初さんはいなかった。だから、店主の間へも行ってみた。そこで、望初さんとも会った。
なんだか、望初さんと珠夜さんはお互いを避けているような感じがした。何かあったのだろうか?
その後、幽依先輩、明里先輩、メロディー先輩とは別れて、ユェンユェンと共に寮の部屋へ。一旦休もうということになったのだ。
「ただいま!」
部屋に着いてすぐ、私はそう言ってみた。でも、返事はない。
澄ちゃん、やっぱりここにはいないか。
「......澄、探す?」
ユェンユェンがそう言ってくれたけど、私は断った。
無理に探すべきじゃないって、なんとなく感じたから。
「ユェンユェン、死神をどうやって倒したのか教えてほしい」
私は単刀直入に用件を話した。
ユェンユェンがなんとなく強いのは、分かっていた。
でも、今回の旅路で確信した。
強さの格が違う存在がいる。
日生蓮とか、ユェンユェンとか、炒菜椿とか……あと、呪莉さんもかなり強い。
私も、それくらい強くなりたい。死神も、世界への反逆者も、倒すんだから。
「……教えても、いい……でも、翡翠にはできない」
ユェンユェンが俯きがちに答える。
「教えて、やってみせるから」
できないなんて決めつけられちゃうくらいには、まだまだ私は弱いと思う。でも、やる気ならあるもんね。
「……簡単な話だよ?私の固有魔法、対死神用だから……応用は効くけど?」
なるほど、固有魔法、か。
超えられない壁を感じた。
そこで私は昔、繭羽先生に聞いた話を思い出した。
固有魔法を奪ってくる悪質な死神がいると......確か、名前狩り。
いや、落ち着け私。ユェンユェンの魔法奪っちゃダメだろ。
「……私の魔法、神に匹敵……私だけじゃない、人間界と霊界ができる前、戦ってた人たちは、みんなこれくらいできる?……ひなせとかも、そういうこと」
え、神は最強じゃないの?
まあ、人間界も霊界もできる前ってことは、神が世界を作った神になる前ってこと?だとすると、その時代はだれでも世界を作ることができる可能性が……
よく分からなくなってきた。
「……ごめんね、役に立つ情報、なくて。でも、少し、知ってること、話す……笛吹呪莉……いや、今は~虹蝶呪莉かな?あと、ひなせ。それから、死神の総大将、それと……虹蝶みゆ。この四人は、私、知ってる......強いだろうから、注意?」
椿は違うんだ、あんなに強いのに。もしかしたらユェンユェンが知らないだけかもしれないけど。みゆさんも、怖いな。いつどこから現れるか分からないんだもん。望初さんの体を使って現れたりとかね。
「ありがとう、変なこと聞いちゃってごめんね。一旦休もう」
私はそう言って寝転がる。
ユェンユェンも私の横に倒れた。
それから私たちが寝落ちするまで、長い時間はかからなかった。
「やっほ~、呪莉がいなくなったっぽいから来たよ!」
またかよ。
私、虹蝶勇輝は魔法屋への侵略者へ視線を向ける。こいつ知ってる。秋月子栗鼠。死神三傑の一人。
「劫火牢!」
「極彩色世界!」
秋月子栗鼠が来る可能性についてはあらかじめ話しておいた。
ということで、すぐに炎帝と彩都が思いっきり魔法を秋月子栗鼠にぶつけた。
「って、魔法屋店主がいなくなったわけじゃなのか~い、帰る!」
なんか、三傑って案外ちょろいのかな、とか思っちゃう。
私が倒したわけじゃないから完全に虎の威を借る狐だけどさ。
呪莉とかの方がよっぽど強いじゃん。




