最下層にて
「えいっ!」
私、星月夜翡翠は重力制御を放つ。
目の前にいる5体くらいの死神を一気に倒す。
えっと、どういう状況かって言われるとなかなか難しいんだけど。
ゆっくり説明するね。
まず、私たちは死神三傑の一人である虹蝶九十九を倒すため、追いかけまわして最下層までたどり着いた。
そして、ユェンユェンが謎の力を使って華麗に虹蝶九十九を倒してくれた。
勝利の喜びに浸れたのもつかの間、私たちの目の前には大きな問題が転がっていた。
どうやって帰ろう?
何とか浮き上がって、落ちてきた穴から登っていこうと思ったんだけど、なんか、瓦礫が降ってきたりで穴がふさがっちゃっていた。
だったら穴を開けて登ろうかと思ったんだけど、私たちじゃ火力不足だった。こんな硬いものをあっさり壊して軽く最下層まで来ちゃった三傑さんって強かったんだなって今になって感じた。
「ここを進んで登れる場所を探すのです」
ということで、幽依先輩の提案にのって、最下層をさまよっているところだ。
そしてなんと、死神がたくさん出るんですよ。ここは死神山だから当たり前って言われてもさ、前に死神山を歩いていた時より多い気がするよ。
最下層だからなのか、それとも私たちが狙われているのか、よく分からないけど。
「固有魔法、雷属性、巫女舞雷竜!」
「リズミックジムナスティックス」
幽依先輩もメロディー先輩も精いっぱい戦っている。2人とも強いが、それでもなお抑えきれないほどの数の死神がいる。
「......ん」
ユェンユェンも死神の攻撃を捌いたり、殴ったり、戦ってくれているけど、それでも死神が多い。とにかく多い。
「上級魔法、火属性、焼焔」
明里先輩も攻撃をしなきゃいけないくらいに追い詰められている。
「いくらなんでも多すぎるのです!」
幽依先輩もだいぶきつそうだ。さっき頑張って三傑さんに魔法を打ち込んでたもんな。多分、雷の竜を二体以上出すのってすごく疲れるんだと思う。
「でも、弱いわね」
メロディー先輩はある程度冷静だ。確かに、ここにいる死神はどれも簡単に倒せるものばかり。
「とはいえ、油断は出来ないわ」
明里先輩も疲れてそうだ。だけど、頑張って気を引き締めている感じがする。
確かに油断はできない。でも、本当に死神は弱い。今まで戦ってきた死神に比べてもダントツで弱い。まず、魔法を詠唱し始めるのが遅すぎる。その前に先制攻撃するだけで倒せちゃうよ。
「弱いね、何でか分かるカナ☆」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえた。この声は忘れるはずもない、死神二冠の身体狩り、炒菜椿。
「なにものなのですか」
幽依先輩が発生源の分からない声に警戒する。
私も、椿がどこから話しかけてきているのかは分からないけどさ。でも、分かったことはある。今戦っている死神は椿が適当に作った人形だ。椿は強い人形も作れたはずだ けど、今この辺にいるのは弱い人形だけだ。
「じりじり削っていくとかいう意地の悪い作戦ですか?」
私は椿の問いに答えてみる。
「正解だゾ☆」
正解しちゃった、正解したくない答えだったけど。
つまり、私たちが削れるまで死神はこのまま襲い掛かってくる。事実上無限に死神が来るのだ。
だったら椿の方を見つけてたたかないと。でも、疲弊しているみんなには死神二冠と戦える余裕はないだろう。
私がやるしかない。私が抜けても、みんなを倒しきるほどの死神が出てきたりはしないだろう。なんせじりじり削る作戦なんだから。
「......翡翠、私も」
ユェンユェンがそんな私を止める。確かに、ユェンユェンはあんまり疲れてなさそう。
「いこう!」
私はユェンユェンと共に、声の発生源、椿の居場所を探すため、重力制御で浮き上がる。視界は広いほうがいいだろう。
「こんなに人形作れて、すごいですね!」
私は話しかける。椿に向かって
「椿様にかかれば、この程度楽勝なんだゾ☆」
返事が来た。
「......分かりそうだけどまだ分からない」
ユェンユェンが小声で言う。もう一言くらい椿にしゃべってもらわないと。
「どこからそんな力が......かっこいいです」
心にもないことを話してみる。
「椿様がカッコいいのは事実だシ☆」
ちゃんと返事が来る。もしかして椿って暇人なのかな。
「……分かった、向こう」
ナイス、ユェンユェン。
私はユェンユェンの指さす方へ飛ぶ。しかし、しばらく行ったところで、壁が私たちの前に立ちふさがった。壁なら破壊したことある。
干渉制御で壁にめり込んで爆破すればいいんだよな。
その方法で、壁を破壊した。
「......見つかっちゃったんだゾ☆」
壁の先には、優雅に座る椿がいた。




