望初、珠夜側
「みんな、大丈夫かな」
マヨタンは、ぼんやりと呟いた。
ここは店主の間。ゾメッチと一緒に希望学校へ帰ってきたところだ。
「なんか三傑を倒してるよ!?」
結空さんのびっくりした声が聞こえた。そっか、結空さんがいればいつでもみんなを帰ってこさせられる、安心だ。で、今何て言ってた?
「さすが、やるねぇ」
呪莉さんが嬉しそうに話す。さっきまで魔法屋に居たけど、炎帝さん、彩都さんと交替して一旦戻ってきたらしい。
「呪莉、この子、何者なん?」
栄華さんは不思議そうだ。その視線はユェンユェンに向けられている。
「確かにそれは疑問なんだぁよ。警戒しておくに越したことはなぁい」
呪莉も首を傾げる。
「とりあえず、みんな無事?」
ゾメッチが質問を飛ばす。
「無事っぽいわ」
結空さんがすぐに答える。
なるほど、良かった。
みんなが無茶して、ピンチだったらマヨタンがすぐに駆けつけようと思って準備運動はしてたけど。いらなかったみたい。
「何事もないといいけど」
いつの間にか結空さんの隣にいた遡楽さんが心配そうに遠くを見つめる。
「どういう意味ですか?」
ゾメッチが遡楽さんに尋ねる。
「帰りは襲撃されないといいねって」
遡楽さんが答える。
「確かに、その可能性は十分にあるんだぁよ」
呪莉さんもそれに頷く。
やっぱりマヨタン、みんなのところ行こうかな……
「すみません!大変です!」
そんなことを考えていたら、結空さんが突然声を荒げた。
「何が……?固有魔法、無属性……」
遡楽さんが不思議そうな表情をしながらも詠唱を開始する。
「空間結合!」
「時間遡行!」
結空さんが魔法を放つと同時に遡楽さんも魔法を放つ。多分、怪我人を速攻で結空さんが店主の間に呼び寄せて、遡楽さんが治療した感じだな。
「……おとなしくするわけないんだよ」
結空さんに呼び寄せられたのは見覚えのある少女。
「澄ちゃん、何があったの?」
違和感を覚えたのは澄ちゃんの服。これは確か、世界への反逆者が着ていたもの。澄ちゃん、まさか世界への反逆者に!?
「燈陰桃乃に服をすり替えられちゃったんだよ」
それはそれでまずい気がする。服のすり替えをする余裕があったら、澄ちゃんを完全に倒すことだってできたはずだ。だとすると、服をすり替えたこと自体に目的がある。希望学校の制服が欲しかったとか……
「あなた、世界への反逆者の仲間だったの?」
ゾメッチの冷たい声。
そう、仲間割れを促すとか。
「違うんだよ!」
澄ちゃんは必死に訴える。
「じゃあその服は?」
ゾメッチ……
「これは着せられたんだよ」
店主の間の空気が一気に険悪になる。
「2人ともやめてよ!」
マヨタンは口を挟むけど、完全に焼け石に水?
マヨタンの友達を思う熱い気持ちはゾメッチの冷めた瞳に通用しなかった。
「流泉澄を一旦拘束するんだぁよ、望初もそれで納得してくれ」
呪莉さんが提案する。
「分かったわ」
ゾメッチが大人しく引き下がる。
え、澄ちゃん縛られるの?
そんなことを考えている間に呪莉さんが澄ちゃんを連れて部屋を出ていく。そんな澄ちゃんには魔法による手錠が付いている。
「澄は何もしてないんだよ!」
2人が部屋を出て行ってしまう直前、澄ちゃんの叫びがはっきりと耳に残った。
「ゾメッチ、なんで?」
マヨタンは納得いかなくて、ゾメッチを睨みつける。
「ごめんなさい、珠夜。あなたが辛いのは気がついていた。でも、もう繰り返したくないのよ、子栗鼠を逃がしてしまった時のようなこと。守りたいものを確実に守り抜きたいの」
ゾメッチの主張は理解できる。できてしまった。
簡単に人を信じちゃいけないなんて、すごく残酷だね。
「……」
ゾメッチに何か言いたかったけど、言葉が出なくて。
何も言えなくて。
そしてなんだか気まずくて。
マヨタンは店主の間を出た。
ゾメッチに何も言わないまま。




