壁の外
結果は........
子栗鼠ちゃんは強制送還され……ない!!
子栗鼠ちゃんの潔白です!よかった!
「子栗鼠ちゃん!」
私、 星月夜翡翠は嬉しくて、子栗鼠ちゃんに抱きついていた。
望初さんも珠夜さんももう疑う余地はない、と言わんばかりにその光景を静かに見てくれている。
そんな感じで、子栗鼠ちゃんも無事!!仲間になれた。めでたし、めで……
「結局、あなたは、これからどうするの?」
望初さんはそう言った!
決めてなかったぁあ!
あぁどうしよう。さっきもこんな感じの流れがあった気がする。さっきここで子栗鼠ちゃんに聞いたが、今回はその選択が取れない。子栗鼠ちゃんは魔法屋にいると決まったのだ。私はどうしよう。
素直に言ってみた。
「ちょっと悩ませてください」
なんと、珠夜さんが肯定してくれた。
「いいよ!翡翠ちゃんも一緒にいたいし!」
望初さんも頷いてくれている。
「ここにいても、いてくれても、それはそれで嬉しいけど.……知っての通りここは危険だから、ちゃんと帰らせたいっていうのも本音」
私はその言葉に甘えて、手直な壁に寄りかかろうとした。しっかり考えたい。
頭から寄っかかれなかったァ!
思いっきり後ろに倒れる。一瞬、なんで!?と思ったが、すぐに原因が思い当たる。
「あぁ〜!」
壁への干渉、はずしたままだったし!なんかさっきと同じ流れだ。
「「「大丈夫!?」」」
珠夜さんと望初さんと子栗鼠ちゃんの声が聞こえてきた。
空が、まず目に入った。
とりあえず私は三人の声にこたえる。
「なんか広そうな空間に出ました!ちょっと探検してきます!」
それぞれ、「大丈夫かしら」「ゾメッチは心配性!翡翠ちゃんなら問題ないっしょ」「えっと……まぁ……そうですよね……」と言ってくれた。
薄暗い場所、太陽は見当たらない。でも、雲ひとつない綺麗な空だ。
また柱があって誰かいるとかないよな、と不安に思いながら私は立ち上がった。
目の前にある建物。なんか、私がいった中学校のように見えた。でも、すごく豪華だ。マンションのような集合住宅とかまで建っている。そして、中央には大きな大きな噴水があった。全体的に洋風な感じで、煉瓦や石でできた建物が多い。道にはカラフルな煉瓦が敷き詰められていて、綺麗だ。そして、歩いている人のほとんどが、珠夜さんが着ていた制服みたいなのと同じ服やちょっと違う形になっていて、涼しそうな感じの服を着ている。
ここはなんか道のはずれみたいな場所だ。すぐ近くに柵があり、その先に太い道がある。
思いっきり探検したい。私は柵をこえて道に入ってみようとした。
柵を越えようと手をかけようとした時、柵が透けて地面に手をついてしまう。ここは「霊界」だったのか。
地面への干渉はできているが、柵への干渉は外れているようだ。私は、これを良いことに堂々と柵を透けて道に入る。
そして、私は堂々と道を歩いてみた。みんなの着ている制服と、私の着ている制服は違うので、それなりに目立つはずなのだが、不思議と注目はされていない。
まぁ、思いっきり探索できるな。
私は道を歩く。たくさんの人たちが、おしゃべりをしながら歩いていて、とても賑やかだ。建物も色鮮やかだし、そこらじゅうに花が咲いているので、みていて飽きない。
30分くらい歩いた頃だろうか。不意に誰かに声をかけられた。
「迷子ですか?刺客ですか?、とれみは、れみも、れみ的な感じに、この希望学校の治安維持に貢献してみます」
橙色の髪に、黄色の目をした子だった。短い肩ぐらいまでの髪をハーフアップにしている。そして、珠夜さんとおんなじ服を着ている。
私は刺客、とか言う物騒な言葉に驚いたが、迷子でも刺客でもないので、否定して見る。
「私は迷子でも刺客でもないです。治安を乱したりしませんよ!」
「方法も、れみに、れみだけに見える理由も分かりませんが、なぜあなたは他人から姿を見えないようにしているのですか?、とれみは、れみらしく、尋ねてみます」
「えぇ!私の姿ってみんなんから見えなくなってたんですかぁ!?」
マジ初耳ぃ!
「無自覚のようですが、ここはどこか知っていますか?、とれみは、れみも、れみが、聞いてみます」
「わかりません……」
私は思った。マジここどこだよ。好奇心だけで探検しちまったぜ!
「分かりました。れみは、れみで、れみの名前は、松浦 れみと言います。ここは希望学校。れみが、れみはあなたを家まで帰して見せます」
松浦 れみ。れみさんだ。
私は、今家より魔法屋に帰った方がいい。それでお願いしてみる。
「あの、魔法屋に案内していただけると助かります」
れみさんは魔法屋と言う言葉に異常に食いついた。
「魔法屋からきたのですか?望初様はいましたか??と、れみが、れみのために、れみの興味で、訊ねます!!」
望初さん。いた。珠夜さん。いた。子栗鼠ちゃん。いた。それを報告しよう。
「虹蝶 望初さんと、舞羽 珠夜さんと、秋月 子栗鼠ちゃんが魔法屋にいます」
「望初様だけでなく、珠夜様もいらっしゃったのですね!れみは、れみ的に、れみだって、行方不明の珠夜様が心配だったので、安心します」
珠夜さんって行方不明だった?あぁそうか。
死神見習いだったってことは、死神山にいたってことだよか。これは話すべきか。とりあえずれみさんに望初さんや珠夜さんとの関係を聞いてみたいと思った。
「あの……れみさんは望初さんや珠夜さんとどんな関係なんですか?」
ド直球で行くぜ!
「望初様と珠夜様は、れみの、れみたちは、れみと、親友です!」
そっか……それは心配だ。私も、るるが倒れた時、正直めっちゃ焦った。
「そして二人は、れみの、れみだけの、れみにとっての、恩人です!!」
すごく、深い関係のある人だと言うことは分かった。
私は名案が浮かんだ。子栗鼠ちゃんと手を繋ぐことで、子栗鼠ちゃんは壁を突破できた。じゃあれみさんとも壁を突破できるのではないか。そうすれば、れみさんは望初さんと珠夜さんに会える。
早速提案してみよう。
「あの……れみさんは、望初さんと珠夜さんに会いたいですか?」
こっちとしては会わせたい。
「当たり前、れみは、れみには、そうとしか回答できません」
れみさん、超即答……
「もしかしたら、魔法屋に入れるかもしれないんです!!一緒に行きませんか」
そう言って、私はれみさんに向かって左手を伸ばす。
れみさんは私の手に右手を近づけるが、
パッチン!
思いっきり叩かれた。
「知らない人についていかないと習ったと言うことを、れみは、れみが、れみすらも今、思い出しました。望初様や珠夜様の名前に惑わされたりはしません!!れみは、れみが、れみだって、譲れないことがあります!!二人に助けてもらった命、せいいっぱい守ります!!」
なんか辛い。とりあえず私はチャレンジャー!!れみさんから私への干渉を外したろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
そこで、れみさんを指定する。
そして、私はまた、れみさんに向かって左手を伸ばす。
パッチン!
思いっきり叩かれた。
「よくわからない固有魔法を詠唱して、希望学校に何をしにきたのですか!?と、れみだって、れみでも、れみが、物凄く怪しい者を見る目をあなたに向けます」
なんで??魔法は出たはずなのに。
私は世界の大原則のラスト2行、世界の干渉についての説明を思い出す。
原則人間界から霊界に干渉することはできないが、翠の石を使う神のみ鑑賞することができる。
原則霊界から人間界に干渉することはできないが、「魔法屋」の店主と赤の石を使う神のみ干渉することができる。
まさか………望初さんは魔法屋の店主だから、魔法も若干当たるのか………
つまり、私が干渉を外しても、望初さんが私に干渉しているということだ。
れみさんも、魔法屋店主か赤の石を使う神?まぁ神はないか……みたいなのかもしれない………
だから私は、場の雰囲気を無視して、れみさんにきいてみた!
「れみさんって魔法屋店主ですか?」
れみさんは、あまりに場違いな発言に顔をしかめた気がするが、即答する。
「論外です、れみのような、れみみたいな、れみなんかが、そのような地位につけるわけが無いじゃないですか!!」
望初さんこそが相応しい、と続けたいにだろう。
でも、これでれみさんが魔法屋店主でないことがハッキリした。じゃあ、やっぱり神なのか?と聞いてみようかな。
あぁ、私はどんどん場違いの空気の読めない人間に変わっていってしまうよ〜。
「れみさんって神ですか」
れみさんは、いきなりの神とかいうのに明らかに困惑したが、すぐに不審者を見るような感じになる。はい、不審者です。マジすみません。
「あなたは不審者のようですね、れみ的に、れみなりに、れみは、物凄く納得します」
こうなったらどうする!?
もちろん決まっている!!!
それは………
逃☆亡☆