虹蝶勇輝
ここが魔法屋か。
死神がたくさん来るのか、緊張するな。
「ねー」
そう思っていた矢先、何者かに声をかけられた。
振り向くと、そこにいたのは茶髪に水色の目をした死神。
「何用?」
尋ねてみる。
「何言ってるの?希望学校滅ぼしに来たに決まってんじゃん〜。四天王にここで活躍されたら、私たち落ちぶれちゃうからね~。先んじて~ってかんじぃ」
死神の服が変わる。茶色ベースの長袖ワンピース。
「やるか?」
また尋ねてみる。そっちがその気ならやるしかない。
「……魔法屋店主、変わったん……ですか?」
なんか、死神のしゃべり方が弱弱しくなった。さっきみたいなハイな感じは一切ない。
「そうだ、私は102代目魔法屋店主、天ぐ……虹蝶勇輝だ、今日変わったばっかり」
すると、死神が悲しそうに俯いた。
「……私、会いに来たのに……銀髪の……翡翠神の魔法持ちに……」
おそらく、それは前の魔法屋店主の望初のことだと思われる。
「悪かった」
相手に乗せられているのは分かっているが、申し訳ない気持ちになる。落ち着け、相手は死神……
「……私、死神じゃ、ない……死神の格好しないと、狙われる……ので」
あれ、さっきノリノリで希望学校滅ぼしに来たとか言ってた気がするんだけど。
「……本当、だよ」
相手が私の目を思いっきり見つめてくる。
「そうか」
なんでだろう、絶対おかしいのになぜか納得してしまった。
「私……秋月子栗鼠……匿ってほしいの……」
気が付いたらその言葉にうなずいていた。
いや、おかしい。
秋月子栗鼠、知ってる。
栄華と昔、思いっきり戦った死神三傑。舞羽なんとかっていう人が騙されたから、警戒しろって言われていた。
秋月子栗鼠も偽名を使えばいいのに間抜けだな。
とはいえ、私はどうするべきだろう?
魔法屋から外部に連絡ってどうするんだ?
「あの……あっち見ててください」
秋月子栗鼠に言われたように体が動いてしまう。
え、もしかして……
魔法屋、乗っ取られた?
「はい、そこまでなんだぁよ」
次の瞬間、秋月子栗鼠の後ろに誰かが立っていた。その人は笛みたいなもので秋月子栗鼠の肩をたたいている。
すると、秋月子栗鼠の衣装が死神のものに戻る。
「へ……?」
秋月子栗鼠は不思議な表情をしていた。まるで狐につままれたかのように。
「全く、これだから三傑は弱いんだぁね」
その人は詠唱もせずに風を吹かせ、秋月子栗鼠を壁にたたきつける。
よく見ると、その人の頭には虹の蝶が付いていた。私と同じ、魔法屋店主。
聞いたことがある。唯一、無詠唱魔法が使える魔法屋店主、虹蝶呪莉。
この人が……?
「まあ、手を抜いて倒せるというレベルではないだろうからねぇ、本気でいかせてもらうんだぁよ」
呪莉は笛を吹き始める。
そして、笛を吹きながら魔法を放っている。
笛の音によって秋月子栗鼠の動きが鈍っている。そしておそらくだが、風を操って私にはダメージが入らないようにしてくれている。
「なんでぇ……こんなのいるとか聞いてないし!……これじゃぁ虹蝶栄華に苦労してる場合じゃないじゃない……」
私をかばいながら戦っているにもかかわらず、秋月子栗鼠はただ何度も壁にたたきつけられている。
「帰るんだぁね、ここで殺すつもりはないんだぁよ。君を殺したことで怒り狂った死神が来る方がやっかいだからねぇ」
どうやってるんだろう、笛を吹きながらしゃべってる。
「フンっ!」
秋月子栗鼠は呪莉を思いっきりにらみながらどこかへ消えた。帰ったんだろう。
「強いですね」
呪莉に話しかける思わず敬語。
「君もこれくらいやってほしいけどねぇ」
呪莉は苦笑いした。無詠唱とかできる気がしないから呪莉の願いは叶わないだろうな。
「まあ、頑張りはします」
私はあいまいに返事をする。
「で、今の霊界の状況は異常なんだぁよ。三傑が魔法屋にさりげなく来ちゃうくらいにはねぇ。だから、魔法屋店主一人でここを守るのは厳しいと判断したんだぁよ。だから私もここで過ごす」
なんか、恐ろしいことと心強いことを言われた気がする。
呪莉がいるのは助かるが、それってつまり……
「ほかの三傑とか、四天王とかも来る可能性があるってことですか?」
怖いけど聞いてみる。
「あるねぇ。場合によっては二冠も。厳しかったら他の元魔法屋店主も呼ぶつもりだぁよ」
あ、怖い。
「どうしてこんなことに……?」
さらに尋ねてみる。
「魔法学校が希望学校との連絡を断った。その上、柘榴神とか世界への反逆者とかで希望学校が混乱している。つまり、希望学校は今攻めるチャンスになってしまっているんだぁよ」
魔法学校が……?結構友好的なイメージだったけれど。
「とにかく、申し訳ないが君には厳しい戦いをたくさんしてもらうことになるんだぁよ。一緒に頑張ろうねぇ」
私は頷きたくないけど、現実から目をそらしたいけど、頷いた。
魔法屋店主になったからには、希望学校を守るために戦うんだ。
今までの魔法屋店主がそうしていたように。




