戦いの後
「すべて事実だコン」
小狐丸鈴は紡琴羽に戦いの報告をしていた。
「疲れたわ……あ、あれできないじゃん」
鈴の後ろには気だるげなティアラと何もしゃべらない燈陰桃乃がいる。
その三人を囲むように世界への反逆者の他の幹部達が集まっている。
「でも、どうして鈴さんが耐えられた攻撃を桃花さんは耐えられなかったんや?」
夜光ミチヨが疑問を口にする。
「身体狩りの後遺症でしょう?そんなことも分からないの?」
ティアラが嘲るような口調で返事をする。
ミチヨはティアラの嘲りなど意にも介さずただ納得したと言わんばかりに頷いている
身体狩りによって欠損部位のある人物は、ダメージに弱くなる。そう言われているのだ。桃花は発声の器官が丸ごと奪われていたから、その分弱体化していたと思われる。それゆえにしゃべれないからあんなに静かだったのだが……
「そうだね〜。桃花のことは残念だけど……まさか結界奥義まで使えるようになってるなんて~、厄介なの~」
琴羽が考え込む。
「理恵〜、潜入できる?理恵のことちょうどよくみんな忘れてそうだし~」
琴羽は虹蝶理恵を指名する。
「任せてください、誰に化けます?」
理恵はその特徴のない声で答える。容姿も声も特徴がないゆえに記憶に残りにくい、それが理恵だ。
事実、翡翠も理恵のことは忘れてしまっている様子が見て取れた。世界への反逆者の加勢に来る人物として夜光ミチヨしか警戒していなかったのだから。理恵を見たことあるにも関わらず。
「化けなくていいよ〜理恵はそのままで行けるから〜。制服だけ準備しないと」
そう言った琴羽は桃乃を見る。
「桃乃~?報復がてら制服奪ってこない?」
桃乃は虚ろな目で琴羽を見る。
そして、首を傾げる。
「桃乃?」
琴羽が強い口調で桃乃を呼ぶ。
桃乃の目に光が戻る。慌てたように頷く。
「たのんだよ~」
私、星月夜翡翠は店主の間に来ていた。
なぜか?なんとなく。
なんか話したくなったから、魔法屋店主のみんなと。
「それ言ってたら始まらないでしょ!」
天花様から厳しい指摘を受ける。
世界への反逆者と戦った話をした。1人倒せたけど、不安要素が残っていること。その人は相手にとっては大切な人だったこと。澄ちゃんがもう復讐しか考えられなくなってしまっていること。
全部聞いてもらった。
「自分にとって正義ならそれでいいじゃない」
天花様の持論はよく分かる。私もそう思って世界への反逆者と戦う決意をした。ちゃんと決意していたはずなのに、今の私は揺らいでいる。
一体どうしたらよかったんだろう。
「気持ちは分かるの~。世界への反逆者は戦いたく無いね~。気分が悪くなるの~」
繭羽先生が優しい言葉をかけてくれる。
天花様の言葉も繭羽先生の言葉も、どっちも正しいのに矛盾する。
どっちも正しくないのだろうか。
「まあ、仕方ないよな。奪うっていうのはそういうことだからな」
炎帝さんがうまくまとめて?くれる。
みんながいろいろ言ってくれるけど、何も心に響かない。私、どうすればいいんだろう。
「考えてみなよ、世界への反逆者に味方してる自分」
炎帝さんに肩をたたかれる。確かに、それは想像つかないかも。
「誰にも恨まれずに生きるってのは、無理だ」
なるほどな。完璧は求めちゃいけないってこと?
「ほら、敵はまた来るんだろう?だったら強くなるだけ」
炎帝さんがまぶしい。
そう、考えてもいいのかな。
「それよりも、復讐に憑りつかれてる流泉澄のほうが心配だけど」
天花様がごもっともなことを言う。それはそう、澄ちゃんは狂ってしまっている。寝る間も惜しんで修行して、体も壊しそうだ。
ユェンユェンはいつも通り?のんびりしているけど、それで余計に澄ちゃんが狂っているように見える。
こんなところで迷ってなんかいられないよね。
死神とも戦わなくちゃいけないのに。
「繭羽先生、天花様、炎帝さん、ありがとうございます。なんか見えてきました」
頭がスッキリとしてきた。
「世界への反逆者も、死神も、倒します!」
もし、私がもっと強ければ、敵すらも救えたのかもしれない。でも、私は味方に守られてばかり。神って最強なんじゃ……?と思わなくもないけど、事実として私は強くない。私よりもっと強い敵がたくさんいる。
だから、それに全力を投じてぶつかる。それがこんな私にできること。
「訓練、お願いできますか?」
そんな私のお願いに、みんなが力強く頷いてくれた。それはもう怖いくらいに……
「前回結構やられたからな、俺はもう全力で行くぜ」
炎帝さんのやる気はすごい。
「また、天花様を付き合わせるって言うの?ふざけんじゃないわよ、まあ、やってあげなくもないけど!」
天花様……わざわざありがとうございます。
「私も参加したい」
そう言ったのは、右目を眼帯で隠し、反対の目を前髪で隠したサイドテールの魔法屋店主。
「星月夜翡翠です、よろしくお願いします」
この人とは話したことないかも。
「虹蝶彩都です。よろしく」
なんか強そうだな……頑張ろう。
「うちも……」
「「「却下!」」」
声をかけてくれた栄華さんを、何人かが問答無用で拒否した。強すぎるというのも大変なんだな。




