世界への反逆者②
私、星月夜翡翠は世界への反逆者と戦っている。正直言って、追い詰められていた。
「大丈夫だよ!」
澄ちゃんが力強く話す。
「澄には蜃気楼なんて効かないんだよ、冷やすだけなんだよ。超級魔法、水属性、蒼海乱舞」
澄ちゃんが真上に向かって魔法を打ち上げる。すると、魔法が空ではじけて雨が降り出す。
辺りの景色がはっきりする。改めて、完全に幻影にかかっていたことを認識する。
そして見えたもの、小狐丸鈴の姿。
逃がさない。
干渉制御。
空気と小狐丸鈴への干渉を外す。
重力制御。
小狐丸鈴を重力源にして一気に近づく。
「コン!?」
近づいてくる私に驚き、小狐丸鈴は避けようとするが、そんなもの関係ない。今、私は小狐丸鈴に引き寄せられるようになっているのだから。
結界奥義。
小狐丸鈴の周囲に横向きの結界を展開する。小狐丸鈴の体が結界にめり込んでいる。でも干渉してないから今は何もない。
干渉制御。
小狐丸鈴に干渉。結界が小狐丸鈴を真っ二つに引き裂く。
干渉制御。
空気に干渉する。流石に息が苦しかった。
「はぁ……」
こんな状況だというのに、久しぶりの空気がおいしい。
「とりゃ!」
小狐丸鈴を真っ二つにしたことで、周囲の幻影が完全に解けた。静かな桃花でも、姿が見えれば流石に見失わない。
ツェンツェンが桃花に襲い掛かる。
桃花も負けじと魔法を打つが、ツェンツェンは危なげなく回避していく。
「鈴!?何をやってるのよぉ、お姉さまが見つかっちゃうのじゃない!」
桃乃が文句を言っているが、小狐丸鈴は反応しない。否、反応できない。
そういえば、霊界で死んだら体ごと消えるって誰かが言っていた。つまり、小狐丸鈴は完全には死んでいない。真っ二つになっているのに、どうしたら消えるんだ?
「そうねぇ、まあ重症というのも都合がいいのかなぁ」
桃乃はさっきから魔法を打たず、ただしゃべっている。
澄ちゃんが警戒しながら少しずつ距離を詰めている。
「うん、君の目キラキラぁ、そういうのきらーい」
桃乃はじりじりの後ずさり、澄ちゃんに距離を詰めさせない。
「勝負なんだよ!」
澄ちゃんが果敢に進んでいくが、桃乃はただ下がっていく。
「おじょー様、やっちゃってよぉ、お姉さまのためだよぉ」
ある程度下がったのち、桃乃がどこかに声をかける。
「澄……それ、罠!……さがって」
ユェンユェンが何かに気が付いたのか、澄ちゃんに指示を出すが、間に合わなかった。
「リバース」
新たな人影。この人も世界への反逆者の制服的なものを着ている。
その人は魔法を唱えた。
「えっ?」
聞こえたのは、澄ちゃんの茫然としたような声。
「遅すぎるコン、痛かったコン!」
そして、元気そうな小狐丸鈴の声。
そう、澄ちゃんが真っ二つになって、小狐丸鈴が復活した。
傷を移された!?
「翡翠、まずい……時間経過で、血が出て?澄……死ぬ」
ユェンユェンが慌てた様子で話す。
澄ちゃんまで死んじゃうの?
そんなの、ひどすぎるよ。
認めないからね、私が。
「干渉制御」
詠唱して、丁寧に魔法を放つ。魔力への干渉する。既に干渉しているけど、無理やり強める。
見える、みんなの、魔力の気配。
明里先輩、どこ?
血しぶきしか残ってなかったのに、復活できた明里先輩なら、澄ちゃんも治せるよね。
見つけた。優しい魔力。治癒の力。そこまで遠くない。
「干渉制御!」
空気への干渉を強める。音が遠くまで響くように。
「明里先輩!!!!!!!!」
声の限り叫ぶ。
「うるさすぎぃ」
「……」
なぜか今の叫び声で、近くにいた桃花と桃乃にもダメージが入ったようだ。
少し遠くにいる小狐丸鈴ともう一人の仲間は大した事なさそうだけど。
「……わぁ」
「震えるんだが!?」
ラッキーって思ってたら、ユェンユェンとツェンツェンにもダメージが入っていた。全然ラッキーじゃなかった。プラマイゼロじゃん。
干渉制御で、魔力と空気への干渉を普通に戻す。
なんか疲れた。
「あたし、もう役目なさそうだから帰っていい?てか、だるかったんだけど、今日予定あったのに……」
小狐丸鈴の隣にいる人が気だるげに話す。
「ティアラ、もう少しいてほしいコン」
小狐丸鈴が止める。さっき小狐丸鈴本人も帰ろうとしてたけど、棚に上げてるな。
ティアラっていう名前なのかな?
「お姉さまがダメージを、許せないよぉ」
桃乃は怒っているようだ。
そんなことより澄ちゃん……
「なにかあった……って!?固有魔法、無属性、超治癒回復!」
明里先輩!?
本当に来てくれた、助かります。
「なにか、不思議な気分だったんだよ」
澄ちゃんが復活している。
「澄ちゃん!」
私は澄ちゃんに抱きつく。
「だめなんだよ、ここは戦場だよ」
振り払われた、とにかく元気そうで何より。
明里先輩もいるし、もう少し、戦えそうだね。




