世界への反逆者
私、星月夜翡翠はその場所へたどり着いた。
「来たコン。琴羽様の言う通りだったコン」
いた。世界への反逆者。
確かあれは、小狐丸鈴。銉ちゃんを殺した張本人。
「倒す!」
私は力強く言い放つ。
「ここにいるのはコンだけじゃないコン」
この前見かけたビームの子とかもいるのかな?
「私だって、一人じゃない」
私は後ろを向く。そこにいるのは澄ちゃん、ユェンユェン、ツェンツェン。心強い仲間がいるんだ。
「熱くなっているところだけど悪いコン。コンは帰るコン」
ん?
え!?
「私達がぁ、相手しますよぉ」
茫然としている間に小狐丸鈴の姿はどこかへ消えた。代わりに金髪の巻き毛をおろした少女が目の前にいるんだけど。
その隣にはその少女とそっくりな子。金髪の巻き毛を頭の後ろで一本に束ねている。
双子の可能性が疑われるレベルで似てる。
「……」
髪を結んでいる方の少女は何も話さない。口を開くことすらしない。
「さぁ、生き恥でも晒しなさい。ぼこぼこにしてあげるよぉ」
それに対して髪をおろしている方はすごくよくしゃべる。
「翡翠?……さっきの黒い狐?帰ってない……警戒、しておいて?」
ユェンユェンが私の耳元でそっと囁く。黒い狐って小狐丸鈴のことでいいのかな?だとすると、幻影は要警戒だな。
「私はぁ、燈陰桃乃ですぅ。で、こっちは最高すぎるお姉さまであるぅ、燈陰桃花ですぅ」
ご丁寧に名乗ってくれた。頭の中でややこしかったんだよな。
髪おろしてるほうが桃乃で結んでるほうが桃花か。
「まぁ、これくらいでいいでしょうかぁ。行きますよぉ。上級魔法、草属性、花弁舞ですぅ」
いきなり来た。視界を埋め尽くすほどにたくさんの花びらが飛んでくる。
「花弁舞は毒攻撃なんだよ」
澄ちゃんがそう言った。
結構ゆっくりだ、花びらの数は多いが、魔法ではじけば問題なく避けられる。というか、相手が魔法屋店主でないなら、避ける必要すらない。干渉制御で魔法を透かしておく。
「やーっ!」
ツェンツェンが自分の周りの花びらすべてを蹴り飛ばしている。正確に、確実に。やっぱり強い……
ユェンユェンはうまいこと体を動かして全部回避してる。これはこれですごいな。
「わぁっ!?」
突然、澄ちゃんが弾き飛ばされる。
「澄ちゃん!?」
どうして、澄ちゃんも花弁舞はちゃんと回避できていたのに。
「どうですかぁ、あ、もしかしてもう聞こえてないですかぁ?ふふ、舐めないでほしいですわぁ、お姉さまのことぉ」
お姉さま……桃花、しゃべらないほう。
気が付くと、桃乃の隣にあった桃花の姿が消えていた。
どこに行った?
「ツェンツェン……?右行け」
ユェンユェンがなぜかツェンツェンに指示を飛ばす。
「長姉の言うことなら従うけど?」
ツェンツェンは不思議そうながらもきちんと従う。
ツェンツェンが右へ移動した瞬間、ツェンツェンの横を魔法が走り抜けた。その魔法を打ったのは桃花。
詠唱がなかった。
「こっちも忘れないでくださいよぉ。超級魔法、草属性、森羅万象ぅ」
桃乃の方からも魔法が飛んでくる。草花を束ねたビームみたいな感じだ。
やばい、今ので桃花を見失った。桃花の位置を把握しないと、どこからかいきなり魔法が飛んでくるっていう状態になる。私はどちらにせよ大丈夫だけど……
澄ちゃんは何とか立ち上がれているけどきつそうだ。
桃乃がうるさいせいで桃花に注意が払えない。そういうことか。
桃花を探しつつ桃乃の攻撃は確実に避けるみたいな感じか……
「澄……足元、来る?」
ユェンユェンは桃花の位置、狙いはすべて把握できているようだ。これなら、みんなは大丈夫かもしれない。
私は自由に動ける。だったらみんながしのげている間に反撃しないと。
桃乃からのほうがやりやすいよね。
結界奥義を横向きにして、桃乃に向かって攻撃する。
「わぁ、なんですかぁ?これ?」
桃乃は片手で結界奥義を受け止めた。なんで!?
「なんで、斬れない?」
不思議すぎて相手に尋ねてしまった。
「それはぁ、私が幻だから、ですねぇ」
そっか。小狐丸鈴のことを忘れていた。
つまり、私は今、桃花だけでなく桃乃も、小狐丸鈴も見失っている。敵が見えていない、これじゃ前回と同じだ。
「どうしたら、いいの?」
少しは強くなったと、思っていた。
でも、そんなこと、なかったのかな?




