結界奥義
「翡翠ちゃん?どういうこと?」
るるが首を傾げる。
「強くなりたいの。るるが使う結界奥義の魔法がほしい」
私、星月夜翡翠はなんとか説明する。
「……虹蝶呪莉がそうしたように、るるにも魔法の返還を求めている」
夢叶さんが意訳してくれる。ありがたいな。
「翡翠ちゃんの気持ちは分かった。でも、るるも力が欲しいの」
るるが首を横に振る。
「……」
私は何も言えない。力が欲しいのはお互い様だから。
「お兄ちゃんと連絡がとれない、お兄ちゃんを探したいの。それに、人間界にまた死神が来る可能性もある。そのためにも、力が必要なの」
そっか、なら、貰えないな。
「分かった、変なこと言っちゃってごめんね」
私は頭を下げて謝る。
「……るる、魔法を翡翠へ」
「戦力なら、ロボットを強化してあるんだぜ」
夢叶さんと操乗ちゃんがるるに言葉をかける。
「どうして?」
私は不思議だった。なんでこの二人がそんなことを言うんだろう。
「……光輝なら、そう言う」
「光輝が言いそうなことを言っただけなんだぜ」
すごいな、忠誠超えて信仰だよね。
「るる、どうしたらいいんだろう?」
るるが俯いて考え込んでしまう。
「るるが決めていいことなんだよ、しっかり考えてみよう」
そんなるるを横からよるさんが支える。
「そうだよ!るるは気にしなくていいから、私は他にも強くなる方法考えるよ」
なんだか迷惑をかけてしまっているので、私は慌ててその場を去ろうとした。
「待つのでございます」
そしたら天宮さんが目の前に立ちはだかってきた。
「るるを困らせに来たわけじゃないんです」
私は天宮さんを説得しにかかる。
「他に当てがあるのでございますか?」
そういわれると、ない。一応、望初さんも翡翠神の魔法を使っていた記憶があるんだけど、望初さんは死神と戦う魔法屋店主。それこそ戦力が少しでも必要だ。あと二つ、どこかに魔法が封印されているはずだけど、それらが見つかる気配はない。
「ない、ですが。探します」
だからといって、るるを困らせ続けるのも違う。
「操乗、縛りなさいませ」
なんか、天宮さんが恐ろしいことを言った。
「了解だぜ」
操乗ちゃんがどこから取り出したのか、超小型ミサイル的なものを打ってくる。ミサイルは私の横で展開され、網が出てくる。
速い……!
なすすべもなく縛られる。
「どうして、るるにはるるの意見があるんだから!」
私は天宮さんを睨む。お嬢様の気配にだって萎縮しない。それだけ、感情があらぶっていた。
「待って、翡翠ちゃん!魔法、あげる」
るるが駆け寄ってくる。
「やめっ!」
抵抗しようにも、網が邪魔すぎる。
「んっ……!」
るるが私の胸に触れる。変な声出ちゃった。何かが体の中に流れていく感覚。
「るるは、頑張るから。るるは翡翠神じゃない。だから、この魔法は翡翠神である翡翠ちゃんのもの。返すのは当然だよ」
そんなことない。私は翡翠神といっても、記憶も何もない。あるのは本当にわずかな力だけ。
「るるが、強くなる方法を見つけるから。翡翠ちゃんはやらなきゃいけないことがあるんでしょ」
そういわれてしまうと、なんだか申し訳ない。今の私にはっきりとした目標はない。世界への反逆者を潰したいとか、死神に狙われても負けないようにとか、いろいろな思いはあるけど、目標と呼べるようなちゃんとしたものは何もない。
「ごめん、ありがとう、るる」
私にできたのは、謝ることとお礼をいうこと。ただそれだけ。
そっか、魔法をもらっただけじゃ強くなれないんだね。ちゃんと成長していかないと。
「るるこそ、ごめん。借り物の力なのに、自分のものみたいに思い上がっちゃって」
借り物……
るるは悪くない。
でも、かける言葉は思いつかない。
「……用事は済んだはず」
夢叶さんがそう言いながら網をほどいてくれる。
体に自由が戻る。
「翡翠ちゃん、行って。るる達も頑張るから、翡翠ちゃんも頑張って」
るるが背中を押してくれる。
「頑張りなさいよ!」
よるさんも背中を押してくれる。
「るるは任せるんだぜ」
操乗ちゃんが頼もしい感じに銃を振り回す。銃……?
「……翡翠なら大丈夫」
夢叶さんが薄っすらとだけど笑ってくれた。
「行きなさい、ここに長くいれば、別れが辛くなるのでございましょう」
天宮さんが扉を開けてくれる。お嬢様の手を煩わせてしまった。
「ありがとうございます!行ってきます」
私はそう言って、屋敷を出た。天宮さんの言う通り、別れが辛くなる前に。
振り向くことなくただ歩いた。
「アキステノホムユリワ」
ふと呟いてみた。
人間界から霊界に戻るとき、珠夜さんが言っていた言葉。あいうえお表を斜めになぞる感じだったから一発で覚えちゃったよ。
すると、目の前の景色が切り替わる。
希望学校の噴水広場。戻ってきた。
さて、どこへ行こうか。
まずは、澄ちゃんのところかな?




