再会
天宮さんは町で有名だそうだ。いきなりとんでもないお嬢様がやってきたみたいな感じで。
よるさんは迷わず歩いていく。私、星月夜翡翠はその後ろを付いていく。
すると、すごい豪邸が見えた。
大きな門。天宮の文字。
間違いない、これが天宮さんの家なんだ。
「こ、これ、押すん……ですか?」
萎縮してしまうほどに立派なインターホン。
声が震えているのを自分でも感じる。
「え、ええ。押す、わよ」
よるさんも声が震えていた。
「じゃ、押してください」
私はよるさんに丸投げすることを試みる。
「いや、遠慮しなくていいのよ、押して、いいのよ」
どうやらよるさんも同じことを考えているらしい。
「仕方ないですね、一緒に押しますよ」
私は諦めて、開き直る。
「分かったわ、せーの」
よるさんの合図でボタンを押す。
私はボタンを押した。よるさんは押さなかった。これが意味すること……裏切られた!?
「……はい、天宮家でございます。……いかがいたしましたか……翡翠?」
インターホン越しに聞こえた声は夢叶さんのものだった。
知り合いなら安心だ。
「はい、翡翠です!るるはいませんか?」
用件を簡潔に話す。
「知り合いか……」
よるさんがぼんやりと呟いている。その声には安心が含まれている気がした。
「……るる、いるよ。隣にいるのはteluna?」
ん?この人は花苗よるって名乗っていた気がするけど。てるなって言った?
「夢叶さん……この人は……」
「待って」
夢叶さんに説明しようと思ったらよるさんにさえぎられた。
「そうよ、私はteluna。でも、今は花苗よるっていう一般人として扱ってほしい」
よるさんが堂々と言い切る。
「telunaってなんですか?」
初めて聞いたぞこの言葉。
「……アイドル、有名なはずだけど、施設なら情報が入ってこないのも無理はない」
夢叶さんが説明してくれる。
なるほど、私たち、アイドルは天花様しか見てないからな。もう故人なのに。しかも、霊界で本人に会っちゃったし。
telunaってなんか響きがいいな。かっこいい。
「……待ってて、光輝に聞いてくる」
そう言って、インターホン越しの通話が切れる。
「翡翠って好きなアイドルとかいるの?」
夢叶さんを待つ間、よるさんに質問された。
「天花様しか知らないです。天花様が好きです」
私は素直に答える。実際会ってみたらわかったけど、あれは美人なんてもんじゃない。どんな言葉を尽くしても表現できないとはまさにこのこと。
「分かる!私、天花様に憧れてアイドルになったの。天花様はまず顔がいいし、次に顔がいいし、そして顔がいいし……」
よるさんも私と同意見のようだ。
「入っていいんだぜ」
しばらくすると、操乗ちゃんがやってきて、門を開けてくれた。
「お、お邪魔します」
こんな豪邸に入るなんて、緊張するな。壊したらやばい調度品とかありそうだし。
「翡翠ちゃん!よるお姉ちゃん」
広い庭だなと思いながら歩いていると、向こうからるるがやってきた。
よかった、見つかった。
「るる!」
よるさんがるるに抱き付いている。
「よるお姉ちゃん!」
るるもなんだかうれしそうだ。再会できてよかった。
「操乗ちゃん、ありがとう」
なんだか2人のきずなが思いのほか深くて気まずくなったので、操乗ちゃんに声をかけてみた。
「光輝に頼まれたからなんだぜ。お礼は光輝にいってくれよな」
相変わらずの忠誠心。
「るる、なるを知らない?」
よるさんがるるに何か尋ねている。なるって確かよるさんの弟だよね。
「お兄ちゃん、連絡が付かないの」
るるが俯きがちに答える。
大変そうだ。
ただ、私は私の用事を済まさないといけない。
「るる、魔法を私に頂戴!」




