珠夜さん探し
私、星月夜翡翠が向かったのは噴水広場。行く当てがなかったから、自分が確実にたどり着ける場所にした。太い道を選ぶだけでいいんだもん。
珠夜さんに会える可能性は低いよね。闇雲に歩いているだけだもん。
ここから店主の間への道は分かる。そこへ行ってみるか。情報をもらえるかもしれない。
「お邪魔します」
私はそう言って、店主の間へ入った。
「お前!?」
虹蝶炎帝さんと真っ先に出会った。
そうだ、そういえば。嘘泣きして脱出したんだった。すっかり忘れていた。やばい、怒られる。
「無事でよかったな」
かと思ったら、なんだろう。拍子抜け。本当に、心配してもらっていたんだ。なんだか申し訳なくなってきた。
「この前は、本当にありがとうございました。それなのに、無理やり逃げてごめんなさい」
私は素直に謝った。善意の行動だったのに、完全に私が台無しにしてしまっていた
「気にするなって、俺でもあれは脱出する」
優しさが痛い。不思議な感覚。
でも、そんなことを考えている場合じゃない。強くならないと。
「珠夜さんを知りませんか?」
これが本題。
「珠夜……?言われてみれば、どこ行ったんだろうな。ちょっと待ちな、聞いてくる」
ありがたい。
炎帝さんを待ちながら考える。人間界に行ったところで、るるに魔法を貰えるのか。るるは承諾してくれる可能性が高いけど、仕組み的にそもそも可能なのかも分からない。まだ疑問がある。そもそも珠夜さんと出会えたところで人間界に戻れるのか。この前、人間界に行くことができた理由も謎だ。
「悪い、誰も知らないって」
炎帝さんが戻ってきた。どうしよう、手掛かりなしだ。
「ありがとうございます」
私はそう言って、店主の間を後にした。
自分の足で探すしかないか。あと珠夜さんを知っている可能性のある人は……
気まずくて話しかけられなかった人。
ルームメイトで珠夜さんの友達。
いや、行くしかない。気まずいとか言ってる場合じゃない。
私は部屋に帰る。部屋には澄ちゃん一人だった。ユェンユェンはどこか出かけたのかな?
「澄ちゃん……」
扉を開けるなり、私は口を開く。
虚ろな目で振り向く澄ちゃん。
「珠夜さんを知らない?舞羽珠夜っていう人」
ぼんやりとした澄ちゃん。いつも明るかった澄ちゃんからは考えられない姿。
「……ゾメッチ、って人に会いに行くって」
ふわふわとした声。まさに、心ここに有らず。
とにかく、情報は得られた。
「……ありがとう」
私は部屋を出る。魔法屋なら、行ける。普通は入れないらしいけど、私は壁をすり抜けられるから。
これでよかったのか、疑問だ。
なんで、私は強くなりたいって思ったんだっけ。みんなを守りたいからだよね。それなのに、あんな状態の澄ちゃんに何の言葉もかけられず、自己満足の強さのために一人で突っ走っている。変な方向に。
でも、止まりたくないんだよ。止められないんだよ。
何かをしていないと、狂っちゃいそうなの。
立ち止まったら、私、壊れちゃうよ。どうしよう。
だから、今はただ、進むしかなくて。
ぼんやりと歩く。
魔法屋に向かうとなれば、いろんな場所を通る。れみさんと話した場所、留年生と戦った場所。
そういえば、れみさんも、いなくなっちゃったんだったね。
みんな、いつかはいなくなっちゃうのかな。
魔法屋にたどり着く。
「干渉制御」
壁への干渉を外して中に入る。
「こんにちは」
望初さんも珠夜さんもそこにいた。
2人は全力で死神と戦っていた。
「重力制御」
私も加勢する。
「翡翠ちゃん!?超級魔法、風属性、爆風神刀!」
珠夜さんが驚いた様子で振り向く。
「固有魔法、翡翠神、属性奥義!何してるのよ?」
望初さんも不思議そうに振り向く。
「珠夜さんに会いに来ました!干渉制御!」
危ない、燃やされるところだった……
「固有魔法、魔法屋店主、侵入不可領域!何の用なのよ?」
望初さんが死神を止めてくれる。
「人間界へ行きたいんです」
望初さんも珠夜さんも目を見開く。
「もしかして、身体狩りの言葉に従うの?」
珠夜さんが不思議そうに私の目を見る。そういえば、霊界には関わるな的なことを言われたな。
「違います、戻ってきます」
私はその言葉を否定する。世界への反逆者を倒さなきゃ。
「どうして珠夜に?」
望初さんが怪訝な目をしている。
「なんか、呪莉さんの声を聴いた気がするんです。翡翠神と柘榴神の力がぶつかると、人間界に強制送還されるって」
望初さんが納得したように頷く。
「その話は栄華さんからも聞いたことがあるわ。その話は本当である可能性が高いわ」
望初さんの太鼓判。
「ということで、珠夜さん、お願いしたいんです」
珠夜さんに向き直って頭を下げる。
「ごめんね」
予想もしていなかった言葉。珠夜さんなら協力してくれるかと思ったんだけど、ちゃんと理由を説明しないといけないかな。
「マヨタン、柘榴神の力、使えないんだ」
さらに予想もしていなかった言葉が返ってきた。だって珠夜さんは人間界まで助けに来てくれた。それは、人間界に干渉できなければ、柘榴神の力がなければできないこと。
「そうね、一歩遅かった、といったところかしら」
望初さんが苦い表情をしている。
「ついさっき、使えなくしちゃったの」
珠夜さんの言葉に私は絶望するしかなかった。




