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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
干渉制御
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終戦

 目が覚める。

 珠夜(たまよ)さんが目の前で倒れていた。フード付きマントは消えていた。なんかどっかの制服のような服を着ていた。もう大丈夫。そう確信した。望初(のぞめ)さんも向こうで倒れていたが、死神が来ないということは、侵入不可領域が展開されているということなので、望初さんも無事だ。

 私、星月夜翡翠(ほしづくよ ひすい)は安心して、その場に寝転がった。疲れた。

 そして、もう一度深い眠りに落ちた。


 るる、花苗るるは、目を覚ました。知らない部屋。手には点滴がつけられている。

 起きあがろうとするが、全身に力が入らない。

 翡翠ちゃん! と叫びたいが、大きな声は出ない。小声でつぶやく程度だった。

 私はどうして無事に病院へ来れたのだろう。あそこは、結構入り組んだ道の中にあった。怪我人が発見されるまで時間がかかる気がするのだ。

 きっと翡翠ちゃんが救急車を呼んでくれたのだろう。そうだと思う。あの時、翡翠ちゃんは私を守ろうとしてくれた。嬉しかった。

「るる!」

 声が聞こえた。誰かが部屋に入ってくる。

 青い髪に赤い瞳をしている。お兄ちゃん、花苗なる、だ!髪を切ることすら面倒がって、髪は腰あたりまである。お兄ちゃんは高校の2年生。でも、学校にはほぼ行っていない。施設の問題児、引きこもりお兄ちゃんだ。

「るる!目が覚めてる!よかった!」

 お兄ちゃん、久しぶりに会うな。

「お兄ちゃん。普段施設から絶対出ないのに、今日はわざわざここまできてくれたんだね」

 ちょっとおちょくってみた。

「それは……るるが倒れたって聞いたから……家族として当然のことで……別にるるのためなんかではない!」

 お兄ちゃんは早口で捲し立てる。

「それでもきてくれて嬉しいよ。ありがとう。お兄ちゃん大好き!」

 これは本音。

「………………っ」

 お兄ちゃんは下を向いて黙ってしまった。

 病室の扉が開いた。二人の人が部屋に入ってくる。

 一人はオレンジの髪にピンクの瞳をしている。バイトもしながら、モデルもやってる私のお姉ちゃん。花苗める。花束を持っている。

 もう一人は青い髪に赤い瞳をしている。「伝説のアイドル天花を超える!」が口癖のアイドルやってる私のお姉ちゃん。花苗よる、だ。

 二人は同い年で、大学の3年生。

 私は二人が来てくれたことが嬉しくて、二人のことを呼ぶ。

「めるお姉ちゃん。よるお姉ちゃん」

 めるお姉ちゃんは、私の無事を喜んでくれた。

「るる!目が覚めてよかったわ!全く、心配したんだから!何やってたのよ」

 よるお姉ちゃんは、まだ下を向いてだまってるお兄ちゃんをイジっている。

「なる〜!久しぶりの外出に、久しぶりの妹に、ツンデレですか〜!なるは可愛いな〜!」

 お兄ちゃんはよるお姉ちゃんから距離を取る。

「やめろよ」

 その距離をあっさりと詰める、よるお姉ちゃん。

「やめないよ〜!」

 そんな二人を横目にめるお姉ちゃんが持っていた花束を渡してくれた。

「はい、早く良くなって、しっかりね!」

 名前は知らないけど、綺麗な赤い花だった。

「ありがとう。めるお姉ちゃん」

 めるお姉ちゃんが看病してくれて、よるお姉ちゃんがお兄ちゃんをイジって、シビレを切らしたお兄ちゃんが反撃して、そんなこんなで時間は過ぎていく。

 そんな中、私は思い出した。私たちのこと。

 私たちには父も母もいない。今でこそ私とお兄ちゃんは施設にいるが、昔は4人で暮らしていた。

 そう、施設に入ったのは、私が中学生になった時、最近なのだ。

 そんな中、私が無事に小学校に通い続けるために、めるお姉ちゃんも、よるお姉ちゃんも働いて、お兄ちゃんは引きこもって動かないことで、エネルギー消費を減らし、食事代を浮かすという偉業?をやっている。

 みんなのおかげで、私は支えられて生きている。だから、翡翠ちゃんみたいな困っている子を助けたいのだ。助けてもらえると、他の人を助けたいと思える。そうやって、助け合いの輪を広げたい。自分がそうしてもらっているように……

 そんな中、瞼を閉じた。

 元気になったらしたいことを思い浮かべて。



 目が覚めた。

 私、星月夜 翡翠は起き上がる。

 望初さんも珠夜さんもまだ倒れていた。無理もない。完全に忘れてたけど、望初さんは、軽く300体の死神及び死神見習いを倒している。普通にエグい無双劇だった。望初さんもチート使いの疑いがある。それについて行く珠夜さんもチート使いの疑いがあるが……

 そして、私が使った魔法を思い出す。そして、もう一回詠唱してみた。

「固有魔法、翡翠神、干渉制御」

 おそらく、詠唱した後に対象を選ぶ感じだ。私は、試しに壁への干渉をはずす、と指定してみた。

 そして、壁に向かって歩いて行き、壁に触れようとした。

 触れられなかった。壁を透けて手は伸びる。壁に食い込んだような感じだ。

 確かに、これはチートだ。

 例えば、空気への干渉をはずせば、空気抵抗を受けずにめっちゃ速く走ることが可能になる。爆風への干渉をはずして中心に飛び込めたのも、そんな感じだ。

 今まで、魔法への干渉がはずれていたのだろう。それで、魔法が当たらなかったんだと思う。でも、望初さんの魔法は、僅かだが当たっていた。そこのところを質問してみようと思う。

 そんなことを考えているうちに、望初さんが起きた。望初さんが話しかけてくれる。

「……おはよう。…………珠夜は……?」

 やっぱり心配ですよね。でも大丈夫!

「望初さん!おはようございます!ここにいますよ」

 望初さんがこっちへくる。そして、しゃがむと、珠夜さんに声をかけた。

「珠夜。無事……?」

 珠夜さんが、至近距離で呟かれた声で目を覚ました。

 望初さんを見るなり、こういった。

「……ゾメッチ……ごめんなさい!」

 必死な目。死神見習いだった時からは想像もつかないほどに、感情を帯びた目だった。

「珠夜?」

 望初さんはただただ驚いている様子だ。

「マヨタン……ゾメッチよりすごいってゾメッチにも、れみにも、みんなにも思ってほしかった。すごいのは、魔法屋店主になったゾメッチだけじゃないんだって思わせたかった。だから……だから、一人で死神山に行っちゃった……」

 というか今更気が付いたけど、一人称マヨタンなのか......

 れみっていう友達もいるのかな。

「そう……ごめんなさい」

 望初さんがその場で深く頭を下げた。

「なんで……ゾメッチは悪くない……欲張った私が悪い!」

 あえて気にしてなかったけど、望初さんはゾメッチなんだね......

「でも、私は珠夜を止めることができた時がたくさんあった」

 二人とも、責任は自分にあると主張する。これは一生終わらないパターンなのでは?そこで、私は二人を止めようと決めた。

「あの、その話し合いは無駄だと思うんです!お互い謝ったのでそれでいいではないですか!もっと過去ではなく、未来を見ましょうよ!」

 望初さんは納得してくれた。

「確かにあなたの言う通りね」

 珠夜さんも納得してくれる。

「そうだね、マヨタン、みてた。あなた……も本当にありがとう!私のためにありがとう!」

 流石にそんな面と向かって言われるとても照れる。

「珠夜さんも無事でよかったです」

 照れ隠しに言っておいた。

「私からも言わせて、本当にありがとうございます!!」

 望初さんもお礼を言ってくれた。

 待て待てぇ!私の照れは限界だ!

 私は黙って俯く。耐えられないよぉ〜!

 そんな中、望初さんが話題を逸らした。

「あなたは、これからどうするの?」

 あ、そういえば私部外者ですね。

「あっ、はい、考えてなかったです……あっ、すみません。迷惑でしたよね。すぐ、帰りますから」

 私は扉に向かって走りだした。扉を開けようとしたところで、道がわからないということを思い出した。急ブレーキをかけるが、止まれない。そのまま扉の横の壁に突っ込んでしまった。

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