琴羽
うちは夜光ミチヨ。
うち自身が説明するのも不思議な感じやけど、茶色の髪を短く切っとるんね。右目は普通の目やけど、左目はエメラルドグリーンに赤い罰点を描いたような感じや。そして組織「世界への叛逆者」の幹部やで。
「何をやってるの~」
同じく世界への反逆者の幹部である小狐丸鈴と虹蝶理恵が琴羽様に説教を受けているのを横目にうちはぼんやり考える。
ターゲットの翡翠神にはうちじゃ太刀打ちできへん。希望学校の切り札の一つ、強護封を突破できたのはええことやったけど……うちのビームは魔法じゃあらへんのや。だから、魔力強封は問題ないんやってだけの話なんやね。
「コンは……」
なんかよく分からないしゃべり方をしているのが小狐丸鈴やね。
「申し訳ございません」
なんか特徴がない声をしてる、固有魔法で模擬化けを使うのが虹蝶理恵やで。
うちらの、琴羽様の目的は世界への反逆なんや。
だから組織の名前が世界への反逆者なんやけどね。
うちも琴羽様の意見に賛成やから従っとるねん。
霊界も闇が深いんやで。
「紡姉妹とでも呼ぶんだぁよ、その二人は体の一部がなかった」
一旦私、星月夜翡翠は店主の間へ戻ってきていた。そこで、呪莉さんの話を聞いている。
繭羽先生について、そしてその妹の琴羽さんについて。
「虹蝶になる前の名字が紡なの~」
繭羽先生もそこにいるんだけど、なんで呪莉さんが率先して説明してるんだろう。本人がやればいいのに。
「身体狩り、会ったことあると思うけど、それのせいで体の一部が欠けた状態で霊界に来る者も存在するんだぁね」
あのやばいやつですか。身体狩り、強いうえにひどいんだな。
「話は戻るが、紡姉妹はいずれも体の一部が欠けていた。姉の繭羽は右目が、妹の琴羽は右目と左手、右足が……」
ひどい状況だな。2人とも。悲惨だ。
「霊界にはそれの専門家、サイボーグ職人的なのがいるんだぁよ。ただ、作れる数は限られている」
魔法がある世界って、本当に何でもありだよね。そういえば、繭羽先生の右目は義眼って本人が言ってたな。改めて見てみるけど、ほぼ違和感ない。
「だから、琴羽は後回しにされたんだぁよ。完治させるにはたくさんの部品が必要になるからねぇ」
人の体を部品って……
とにかく、琴羽さんの状況の厳しさが見えてきた。
「いつまでたっても、琴羽には何もなかった。それは世界を恨むのも当然の摂理と言わんばかりの境遇だぁね」
そんな……
「琴羽の心にとどめを刺したのは、繭羽に義眼が届いたことなんだぁね。繭羽はその義眼を琴羽に譲るように暴走して、押さえつけられ、怒られ、殴られで、強制的にその義眼をはめられた」
繭羽先生は琴羽さんのことを大事に思ってるんだろうな。
「琴羽が心配なの〜。あんまりやりすぎると虹蝶みゆが黙ってないから~」
繭羽先生が遠い目をしている。いいな、深い絆って。
「同感だぁね。琴羽は強いとはいえ、みゆなら組織ごと滅ぼせるだろうから」
みゆさんって怖いよな。いきなり望初さんを乗っ取ったり。
紡姉妹、繭羽先生と琴羽さんの話は終わった。
そろそろ、ずっと避けていたことを話さないと。
「銉ちゃんは……?」
呪莉さんが黙って首を横に振る。
分かってる。受け入れなきゃいけないんだって。でも、受け入れられない。
「ヒッちゃん!」
その時、店主の間に勢いよく澄ちゃんが入ってきた。
「大丈夫?」
珠夜さんも一緒だ。
「呪莉さん、聞かせてください。リッちゃんのこと。澄は……受け止めます」
澄ちゃんは堂々と言い放つ。でも、その手は震えていた。
そっか、今更どうしようもないなら、せめて受け止めないと。それしか、できることはないんだから。
「私も、受け止めます」
私は呪莉さんに向かって宣言した。
「マヨタンが敵を取ります!」
珠夜さんがさらに力強いことを宣言している。
「私の魔法と遡楽といろいろやると、大体何が起きて、どうしてこうなったのかはわかるんだぁよ」
呪莉さんの口から語られた内容は壮絶だった。
銉ちゃんだけじゃなくて、氷川愛洲も私を守るために、わざわざ来てくれて、必死に戦ってくれて。
氷川愛洲は最後の最後まで銉ちゃんのことを気にかける優しい人で。
なすすべもなく押し寄せた、蜃気楼に囚われて。熱波に焼かれて、熱さに苦しみながら息絶えていく。
私が、もう少しちゃんとしてて、何かできれば、何か……結果は変わっていたのかな。
今日、氷川愛洲に、一方的に悪者にしちゃったことを謝ろうと思っていたのに、会えないまま……一生会えなくなっちゃった。
「世界への反逆者、ね。マヨタン覚えたよ」
珠夜さんが静かに呟く。でも、珠夜さんはなんだか怒っているように感じた。
でも、さっきの琴羽さんの話を聞くと、世界への反逆者も恨めない。鈴さんとか、ビームの子とかだって、何か事情があるんじゃないかって考えてしまう。
氷川愛洲だって、いろいろあったんだから。
悪者って何なんだろうね?




