襲撃にあいまして
「出発するんだよ!」
朝から元気いっぱいな澄ちゃん、何とか起きた銉ちゃん、相変わらずぼんやりとしたユェンユェンと共に、私たちは部屋を出た。
ユェンユェンと澄ちゃんとは道の途中で別れる。銉ちゃんはクラスが同じだから、最後まで一緒だね。
「今日も、私は繭羽先生となにかするのかな……?」
普通の授業みたいなのもやってみたいんだけどな。
「分からないけど、お互い頑張ろう!」
銉ちゃんにそういわれたら、何があっても頑張るしかないな。
こうして銉ちゃんと教室へ向かっていた。
はずなのに。
「え……」
知らない場所。辺りに建物のない荒地。
明らかに、ここは希望学校の外だ。具体的にどのへんなのかは分からないけど。
「……!?」
どこからか魔法が飛んできた。
「干渉制御!」
私は慌てて魔法への干渉を外す。あれ、もともと外れてたっけ、どうだっけ?
状況がよく分からない。
ここはどこで、どうして私は魔法を打たれてるの?
そんなことを考えているうちに、魔法が私に当たる。
「うぅ……」
この感じ。
若干痛いけど致命傷にはほど遠い感じ。
魔法屋店主?
どうしよう、敵が認識できないから反撃もできない。
このままじゃそのうちやられる。
また魔法が飛んでくる。
その魔法を何とか避けるが、避けた先にも魔法が……
「っ!?」
まずい、本当にやられちゃう。
逃げなきゃ。
私はとりあえず走った。どこへたどり着いてもいい。今は一方的にやられるこの状況から脱出しないと。
ただ、荒地だからか目印になるようなものがない。だから、ちゃんと進んでいるのかもわからない。
「固有魔法、火属性、幻想出現」
今、誰かとすれ違った?
敵?
いや、この敵には太刀打ちできない。余計なことは考えずに逃げないと。
幻想出現って魔法、どこかで名前だけ……いや、逃げなきゃ。
私は無我夢中で走った。
そして気が付いたら希望学校にいた。
そんなに長い距離走ってないと思うんだけど……
荒地と希望学校はこんなに近かったのか。
とにかく、逃げ切った。
誰かに話さなきゃ。珠夜さんと死神山へ行った時のようにならないように。
噴水広場を目指そう。そこからなら店主の間も近いし、誰かには話せるはずだ。そうと決まればひたすら太い道を選んで歩く。
噴水広場へたどり着いた。
そこには誰もいなかった。よし、店主の間へ行こう。
「お邪魔します!」
私は店主の間へ勢いよく入る。
「元気なお客だぁね?」
扉の近くにいた呪莉さんが不思議そうに首を傾げている。
「あの、呪莉さん、聞いてください!」
私はそうして、さっきの不思議な出来事を話した。銉ちゃんと教室へ行こうとしていたこと。いつの間にか荒野に一人でいたこと。魔法屋店主らしき人物からの攻撃を受けたこと。
「それは確かに不思議なことだぁね」
呪莉さんが頷きながら考えてくれる。
「ちゃんと相談できて、成長しやはったね~」
そしてなぜか栄華さんが頭をなでてくれている。
「心当たりがあるの~」
聞き覚えのある声がした。
「繭羽先生?」
そう、そこにいたのは繭羽先生。いつも通りの口調だが、表情がどこか暗く見える。繭羽先生、片目が義眼だから、それと比較する形で表情変化が読みやすいんだってことに今気が付いた。
「琴羽のところに、幻影使いがいた気がするの~」
琴羽っていうのは確か繭羽先生の妹だ。妹を止めてほしい的なことを頼まれたことがある。だから、琴羽って多分やばい人?ってことかな。
「説明するの〜。琴羽は組織を作って、何かいろいろやってるの~。狙いとか、あんまり分からないけど、目的のためなら人殺しも辞さないみたいな雰囲気だよ~」
なんか怖い組織だな。
「その組織の名は世界への反逆者だぁね」
呪莉さんが横から補足してくれる。なんか、名前も怖い組織だな。
「荒地とか全部、その世界への反逆者の幻影使いが原因だということやね」
栄華さんは納得したように頷いている。
「そう言えば、一人、すれ違いました。その人、固有魔法で幻想出現って詠唱してました」
幻影使いって聞いて思い出した。すれ違った人。
「それ、本当!?」
どこで聞いていたのか、突然小さな体が飛び出してきた。遡楽さんだ。ものすごく慌てた様子だ。
「……はい」
その様子を疑問に思いながら私は返事をする。
「その魔法、希望学校の生徒……」
遡楽さんがさらに狼狽える。
「……ん?調べるんだぁよ」
呪莉さんがそう言って店主の間の奥へ向かっていく。
「遡楽、おちつきなはれ」
栄華さんが遡楽さんをなだめようと頑張っている。
「なんかややこしいことになってるの~」
繭羽先生は頭を抱えてしまった。
一旦、呪莉さんを待つ感じかな……
しばらくした後、呪莉さんが戻ってきた。
「見つけたんだぁよ」
場に緊張が走る。
「小狐丸銉の魔法らしいね」
それは、よく知っている名前だった。
銉ちゃん……?
「組織の関係者だとすれば、それはそれでまずいし、関係者じゃないとしてもまずい」
遡楽さんが慌ててまくしたてる。
「関係者じゃないとすれば、翡翠の代わりに組織の人間と対峙したことになるねん」
栄華さんの顔にも焦りが浮かぶ。
「関係者だとすると、そうとう希望学校が世界への反逆者にやられてることになぁる」
呪莉さんは困ったような表情だ。
いずれにしろ、まずいということは私にも分かった。
「翡翠はここにいやはれ、世界への反逆者からのターゲットになっとる可能性が高いんや」
栄華さんが私を店主の間の奥へ連れていく。
「繭羽、調べて。彩都!天花!」
遡楽さんが指示を飛ばし始める。
「いそぐの~」
繭羽先生は鉄砲玉のように飛び出して行ってしまった。
私は、どうするべき?




