表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
重力制御
42/177

もう一度

 どれくらい走ったんだろう。どれくらい跳んだんだろう。どれくらい逃げたんだろう。

 逃げ切った。そうだ。逃げ切った。私、星月夜翡翠(ほしづくよひすい)は安心する。心にあった恐怖がすっきりと消えた。

 あれから私はただひたすら走った。何も考えずに。そして、気がついたら希望学校まで戻ってきた。

 今は、中央の噴水に腰掛けている。なんとなく、ここへ来た。

 目の前には、ユェンユェンとメロディー先輩がいる。

 ユェンユェンがまず口を開く。

「……どうした?」

 メロディー先輩も口を開く。

「翡翠ちゃん。お久しぶり。一人なの?げ、ん、き?」

 二人のいつも通りな感じに私は落ち着いてきた。必死すぎて忘れていたことがあった。珠夜(たまよ)さんのことだ。三傑さんの話が本当なら、珠夜さんは…………

「あの、その、ユェンユェンも、メロディー先輩も虹蝶九十九って知ってますか?」

 ユェンユェンは首を傾げるが、メロディー先輩は頷いてくれる。

「やられたんです……珠夜さんが」

 言葉がつまりそう。でも、言わなきゃ。

「やられたって……翡翠ちゃん!?」

 メロディー先輩が慌てた表情になる。

「……」

 私は黙ってしまった。でも、メロディー先輩は慌てて質問してくる。

「翡翠ちゃん、それで一人!?マヨタンちゃんのことはとりあえず置いといて、望初ちゃんは?」

 珠夜さん……

「望初さんは、最近会ってないです」

 望初さん、どうしてるんだろう?魔法屋にいるのかな……

「死神山へ行ったとは聞いてたけど……ユイッチや栄華(えいが)さんが行ったから、あんまり何も考えていなかったわ……」

 メロディー先輩が遠い目をする。なんだかはかない表情。胸が締め付けられる。

「……」

 私は何も言えない。言える言葉なんてない。

「むぼう?死ぬ……?」

 ユェンユェンの視線が痛い。

 みんな黙り込む。

 死神は強い。その認識はしっかりしておかなくてはならなかった。

 取り返しのつかないことになった。実感がなかった。自分の無事に安心しきってしまっていた。

 なのに、急に実感が湧いてくる。思わず呟く。

「……珠……夜……さん…………」

 涙が出てくる。

「珠夜さん!珠夜さん!珠夜さん!私がっ!もう!珠夜さん!ごめんなさい!私のせいで!」

 私は狂ったように叫んでいた。自分が許せない。なんで今の今まで、自分の箏しか考えていなかったの?

「死んだ?もういない?」

 ユェンユェンが首を傾げている。

「マヨタンちゃん……」

 メロディー先輩の目は虚ろだ。

 もう生きていけない……

 でも、生きなきゃいけない……

 珠夜さんの全てを背負って。

「ひすい?たまよのために、何ができる?」

 そんな中、ユェンユェンが辺りを見渡し始める。

「……ユェンユェン?」

 私にできたのは、名前を呼ぶことだけ。

「うん?私にも?責任ある?秋月子栗鼠(あきづきこりす)なんて、言わなければ?」

 そんなこと……

「あなた、秋月子栗鼠は死神三傑なのですよ?勉強不足なのですか?」

 そこに割って入った声は幽依(ゆい)先輩のものだった。

 その内容は聞き捨てならないものだった。

「子栗鼠ちゃんが……?」

 驚きを感じない。実感がなさ過ぎて。

「そうなのです」

 幽依先輩が淡々と答える。

「そんなわけないじゃないですか!」

 無駄に怒鳴ってしまった。感情が安定しない。それを幽依先輩にぶつけてしまった。申し訳ないと思い、後悔するがもう遅い。

「はあ、通りで死神山に突っ込むわけなのです。完全に騙されてるのです」

 幽依先輩は呆れていた。

「ユイッチ、もう少し優しく……」

 明里(あかり)先輩も来ていた。

「と、に、か、く~喧嘩しちゃダメ」

 メロディー先輩が慌てて仲裁に入る。

「うるさいのです、とにかくまずは事実の確認をするべきなのです」

 幽依先輩が正論をぶつけている。

「事実をそのまま言っても受け入れられないことだってあるのよ」

 明里先輩が反論する。おかしいな、2人とも正論を言ってるのに揉めている。

 メロディー先輩が呆れたように2人を連れてどこかへ行く。

 ここにいるのは私とユェンユェン。

「ひすい?一緒に、死神山、行く?」

 ユェンユェンが思いがけないことを言った。

「えっ……?」

 私は思わず呟く。

「妹、ツェンツェンも、いるはず?」

 そっか、まだ、珠夜さんが死んだと確定したわけではない?のか。死んだ可能性は高い。でも、珠夜さんの死が受け入れられなくて、私はわずかな可能性にすがってしまう。

「行きましょう、珠夜さんも、妹さんも、助けます」

 子栗鼠ちゃん、結局何者なんだろう。強制送還されなかったから、死神ではないという結論だったと思うんだけど。

「いこ?でも、2人じゃ無謀。だから、頼んでおいた」

 ユェンユェンがなんだか頼もしい。頼んでおいたって何だろう。

「向かおう?」

 そうして私たちは歩き始めた。無言のまま。決意を固めて。

 死神山の入口辺りにたどり着いた。そこには2人の人が立っていた。

「どうして私なのかしらぁ?」

 知らない人。

「ん……レンレンに頼んだ。魔法学校の強い人……」

 なるほど?ユェンユェンの人脈ってすごいのかもしれない。

「仕方ないわよぉ。帆野歌(ほのか)たんの頼みだものぉ、私は強護(ごうもり)よぉ。」

 強護さんは気だるそうだ。

「よろしくお願いします」

 私はできるだけ丁寧に頭を下げた。

「僭越ながらご一緒させていただきます。エリカ・モノ・マリーと申します」

 もう一人の魔法学校の人、エリカさんはなんだかやる気満々っぽい気がする。

「行くよ?」

 そんなこんなで、ユェンユェンを先頭にして私たちは死神山へ入る。

 絶対に、助けます。珠夜さん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ