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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
重力制御
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死神山

「メロディー!翡翠(ひすい)とかいう子を見たか聞くのです!」

 噴水広場では慌てた様子の三島幽依(みしま ゆい)が走り回っていた。

「そんなに慌てて、話~き、く、よ?」

 メロディアス・リズミックは取り繕っているつもりなのだろうが、後ろから虹蝶炎帝(にちょうえんてい)に抱き着かれているせいで緊張感がない。

「そこの黒狐さんはどうなのですか?」

 突然、希望学校最強クラスな留年生に声をかけられた小狐丸銉(こぎつねりつ)は肩を震わせながら首を横に振る。

「幽依や、あせらんで」

 そんな幽依に虹蝶栄華(にちょうえいが)が声をかける。

秋月子栗鼠(あきづきこりす)って名前を聞いて飛び出して行ってしまったのです、そんなにあの子に死神への恨みがあるようには見えなかったのですが」

 秋月子栗鼠と聞いて、虹蝶栄華の顔色が変わる。

「秋月子栗鼠……昔ちゃんと倒せなかったんや、魔法屋の壁に封印してあるはずやから、無駄に走ることになると思うで」

 栄華が死神山の方向へ視線を向ける。

「何かを探しながら歩けば足元を掬われるのが死神山、一人で行くのは危険やね」

 栄華の言葉に幽依は頷く。

「死神三傑を探すとなれば奥まで潜ることになるんやね、まずいで。幽依、うちらも行くで」

 栄華はそう言った直後、手をたたく。

「今から死神山の奥へ潜るんや、希望者は店主の間へ」

 その声は広場全体に響き渡った。

 栄華はそのまま店主の間へ向かう。

 幽依はその後ろを付いていく。幽依に拒否権はない。だって、助けを求めたのは幽依だから。

 そう、秋月子栗鼠は死神三傑の一人。この事実を翡翠が知らないだなんてことは、誰も予想していなかった。


 死神山、入口からして恐ろしい。

「行くよ」

 珠夜(たまよ)さんが力強く進んでいく。私はその後ろに付いていった。

 死神がいっぱい出てくるものかと思ったけれど、案外そんなことはないようだ。

 長い長い道を歩いた。すると、広い空間に出た。明らかに何かありそうな場所だ。

「警戒して」

 珠夜さんは言う。確かに警戒した方がよさそうな感じだ。私は警戒する。

 ただ、次の瞬間、

「っ……?」

 珠夜さんの声がわずかに聞こえたと思うと、次の瞬間には珠夜さんが消えていた。

 珠夜さんに自分でどこかへワープするような力はなかった、はず……隠してなければ。

 ということで、私たちは既に敵に見つかっている。珠夜さんはきっと攫われた。

「あなたの仲間は攫われたと思ったぁ?」

 と言う声が聞こえてきた。煽っているような声。

「ざんねん〜!」

 私は声のする方、右斜め上を見る。そこには、死神の服?っぽい物を着た死神がいた。オレンジ色の瞳をしている。髪はピンク色だが、毛先は赤色だ。全体的に短めだが、耳の前の部分だけ腰あたりまである。そして、頭の後ろに虹色の髪飾りをつけている。服は、死神の服のスカートを膝上あたりで強引に短く引きちぎったような物を着て、腰には髪の色と同じ何かを巻いている。

 ただ、何より特殊なのは武器だ。今まで見たことのある死神は身体狩りを除いて全員が鎌を持っていた気がする。気配からしてこの人は死神で間違いないはずだが、持っている武器は、とても鎌には見えない。長い棒の先端に、楕円形の何かが着いた感じだ。そこには、「九十九」とオレンジで書かれている。

「一瞬で〜血ぃイッテキ残さず〜粉っ々にしたんでした〜!」

 その言葉に寒気がした。あんなに強い珠夜さんが!?

「干渉制御」

 私は慌てて、地面以外のものに干渉しないようにする。

 死神が武器を振った。右肘あたりに痛みが走ったと思うと、浅い切り傷ができていた。

「まぁ〜一本だとぉこのくらいが限界かなぁ〜!」

 どういうことだか分からない。あの楕円形の武器はどういう仕組みなのだろうか。

 死神が武器を振った。次は左頬に同じような切り傷ができる。震える左手で、左頬を触ると血がつく。

「ははっ〜!もう気づいちゃったかなぁ〜!まぁ~頭にこれついてるしぃ〜分かるだろうけどさぁ。いいよぉ。私の名前はぁ虹蝶九十九(にちょうつくも)で〜すぅ」

 虹蝶。やっぱり魔法屋店主だ……

「干渉制御」

 地面への干渉を外した。ここは一旦隠れて……

 地面は思いのほか深く、私は頭まで沈み切った。これでしばらくは大丈夫だと思い、作戦を考えようとした。

 しかし、次の瞬間、地面が砕けた。全方位から攻撃が襲ってくる。

「干渉制御」

 地面に潜るのは無意味だと分かったので、地面に沈む前に私は地面にだけ干渉する。全身に切り傷を負って、地面に投げ出された。

「私〜いちお〜死神三傑だからぁ、それなりには強いよぉ〜!」

 撤退だ。撤退しかできない。勝てるわけがない。

 私は撤退しようと後ろにむかって走り出した。敵に背中を見せるのは、非常に良くないが、今はそのことを考えることすらできない。ただ逃げることだけを考えていた。

 三傑さんが武器を振った。全身に切り傷ができる。

「あはっ〜!すっごいおもしろぉ〜!ここにきた時点で逃げられると思わない方がいいよぉ〜!」

確かに逃げられないかもしれない。ただ、この三傑はかなり大きな誤解をしている。

私は挑発してやった。

「やれるものならやってみろ!」

「怒りくるたっちゃったかなぁ〜!それとも〜隠し球でもあるのぉ〜!まぁ〜あるわけないよねぇ〜!」

「あるよ!」

「??」

 私は言葉通り、隠し球を出す。即興業だけど。

 右手で壁に触れる。

「重力制御」

 そして、三傑さんに魔法をかける。壁に三傑さんが引き寄せられるイメージ

「……っ!?」

 ドンッという音と、三傑さんの声にならない悲鳴が聞こえてきた。攻撃は効いたようだ。何本か左半身に切り傷ができたが、気にしない。

「あぁ〜いったぁいなぁ〜。そんな雑魚みたいな感じでもいちおぉ君、神だしねぇ〜。やっぱり神は流石に一筋縄じゃぁいかないかぁ〜!」

 私は壁にかける重力をさらに強くする。押し潰したい。

 そういえば、私、神だったのか。本当に一応だけど。

 神すら相手に回して、そしてさらに平然としている死神、怖い。

 そこで、ふと疑問に思った。珠夜さんも神同然だったのではないか、と。詳しい話は聞いてないけど、人間界で私たちを助けてくれた時、柘榴神の力を使っていた。

 聞いてみるか。

「珠夜さんは神じゃないんですか?」

 三傑さんがうっとうしそうながらも口を開いてくれる。

「この霊界においてぇ〜赤の石ってのは、対して強くないのぉ〜!赤の石は、人間界行けば最強っ中の最強かなぁ〜?だってぇ〜人間界にはぁ〜魔法屋みたいのがないからで〜すぅ!」

 納得したかも。

「あ、確かに」

致命的な隙ができてしまっ……わなかった。三傑さんが武器を振った。しかし、攻撃は来ない。私は右側の壁を見てみると、大量のワイヤーがあった。その先端には小さな小さな、全長2センチくらいの鎌の刃がついていた。三傑さんが武器を振る度に、このワイヤーが攻撃してきたのだ。今は、重力によってワイヤーが動かないから、攻撃が来ないのだ。

「あれぇ〜?」

 三傑さんは困惑している。今しかない。私は全力で逃げた。



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