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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
重力制御
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身体狩り

「改めまして、天宮光輝(てんぐう みつき)ですの。なぜあなたは逃げたのですか?」

 天宮さんが高圧的に尋ねてくる。

「追いかけてきたからです」

 私、星月夜翡翠(ほしづくよ ひすい)は即答した。だって私、魔法屋を探しに行っただけで逃げたわけじゃない、っていう屁理屈を、自分の中で反芻する。

「天宮さん?翡翠ちゃん!」

 聞き覚えのある声。るるがこっちへ向かって走ってきていた。

 私は心の中で叫ぶ。助けて、るる。

「ありがとう!天宮さん」

 るるのその言葉に私は絶望した。るる、協力者じゃん。

「助けて!」

 心の中だけじゃ足りない。思いっきり叫んで助けを求めないと。

「ごめんね、翡翠ちゃん、こんなんになっちゃうとは思わなくて……でも、どうしていままでいなくなってたの?」

 るるが優しい目で私を見つめる。

 その目を見た私が、るるに隠し事などできるはずがなかった。

「私、まほ……!?」

 私が口を開きかけたその時、るるの後ろに何かがいるのがみえた。

「どうしましたの?って……っ!」

 天宮さんもそれに気が付き、腰を抜かしたのか尻もちを付きそうになるが、操乗(そうじょう)ちゃんのロボットがそれを受け止める。

 ただ、一番おびえているのはるるだろう。るるは私たちの反応から自分の背後に何かあることを察したのか、顔が真っ青だ。

 どうしよう。

「重力制御!」

 もういいやってことで、私はるるの背後の何かに向かって魔法をかけた。


 グチャ。


 なんか不思議な音がした。私は恐る恐る、るるの後ろを覗き込む。

 そこにあったのは泥。

「なにこれ……」

 振り向いたるるが、泥を見つめて茫然と呟く。

「こんにちはだゾ☆」

 ふと、どこからか声をかけられた。るるでも天宮さんでも、操乗ちゃんでもない声。

 私は辺りを見渡した。

 またもやるるの背後に何かあった。

 今度ははっきりとした人だった。金色の髪を伸ばし、輝く赤い目を持つ。そして、とにかく綺麗な顔立ちをしていた。

 コルセットきつそうだなっていうのはどうでもよくて、さっき声をかけてきたのはこの人か……

「こんにちは、何か用ですか?」

 私はその人に向かって言葉をかける。

 すると、るる、天宮さん、操乗ちゃんの全員から奇妙な目で見られた。どういうことだろうか。

「柘榴神が暴走したからには、あなたは必ず人間界に来るだろうとよそうしたからかナ☆」

 続くその人のセリフに私は背筋が凍った。

 この人、霊界のことを知っている。

 私はその人の頭を見る。しかし、虹色の蝶は付いていない。魔法屋店主ではなさそうだ。

「あなたは誰なんですか?」

 るる達からの視線は無視して私は話しかける。

炒菜椿(いりな つばき)様だゾ☆」

 聞いたことない名前だ。

「星月夜翡翠です」

 私は一旦名乗り返しておく。

「翡翠神、なかなか厄介だから説得に来た感じかナ☆」

 椿さんは両手を広げながら大げさに語りだす。

「霊界にかかわらなければあなたはちょっと目立つだけの普通の人間として生きていけるんだネ☆」

 確かにそうかもしれない。人間界では私はほぼ無力だ。操乗ちゃんにも捕まっちゃったし。

「目立つ?」

 ただ、理解できないのはちょっと目立つという部分。たしかに重力制御を使いまくったら目立つかもしれないが……

「そこが疑問なのカ?まさか、自分の容姿について考えたことがないなんてこと……いや流石に無いナ☆」

 あれ、自分の容姿?

 確かに、何の制服を着ているかとかは考えていたけど、髪の色とか目の色とか、全く考えたこともなかったかもしれない。

 まあ、一旦いいや。

「脱線したネ、とにかく椿様たち死神にとって……」

 私の耳は、正確にその言葉をとらえた。

「死神!?」

 死神って、望初さんが戦っていたやつ。

「あれれ、失言だゾ☆。ばれたからには仕方がないナ。炒菜椿様は死神二冠の身体狩り(ボディーキラー)だネ☆」

 私はとっさに身構える。

 干渉制御っていつでも言えるようにしよう。

「身構えないでほしいナ☆椿様はお願いをしに来ただけなんだからナ。霊界に関わるなってことだゾ☆」

 私は警戒を強める。

 どうして死神がこんなところにいるの……?

「返事を聞かせてほしいナ☆」

 どうしよう。

 霊界にもういけないってこと?

 望初さんは?

 珠夜さんは?

 子栗鼠ちゃんは?

 れみさんは?

 幽依先輩、明里先輩、メロディー先輩、澄ちゃん、銉ちゃん、繭羽先生、天花様。その他にも魔法屋店主のみんな。

 そういえば、いろんな人に出会ったな。

 みんな、今はどうしてるんだろう。れみさん……

「……」

 私は何も言えなかった。

 霊界に私が行く必要がないということは分かっている。

 ここで、霊界にもう二度と関わらないと誓ってしまっても問題なく人間界で生活していけるということも。

 でも、私は霊界のみんなのことが忘れられなかった。

「ふん、愚かなんだゾ☆」

 身体狩りは不満げに呟く。

「武力行使だナ☆」

 次の瞬間、至る所に何かが現れた。さっきるるの背後に現れたものと同じものだ。

「干渉制御」

 私は身体狩りや現れた何かへの干渉を外す。

 身体狩りの姿は見えなくなったが、周りの何かは健在だった。

 あれは、人間界のものなの?

 なんか、泥人形っぽい感じかな?

 よく分からない。

「どういうことですの!?」

 天宮さんは狼狽えている。もしかすると、泥人形は天宮さんたちにも見えているのかもしれない。

 操乗ちゃんがロボットに乗り込む。

 私はるるの前に立つ。

「翡翠ちゃん!」

 るるは不安そうだったけど、私はもう無力じゃない。無力だけど、あの時よりはましだ。

 今度こそ、るるを守る。

 魔法屋で死神と戦った時みたいに、かばわれたりはしない。


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