逃亡!
あのですね。そのですね。
私、星月夜翡翠は2人の前から走り去っただけなのに、なんで黒い服の人たちが私を追いかけてくるのですか?
鬼ごっこで言うと、逆に鬼が追われているような感じですよ。
「ターゲット発見、H隊は追跡に入ります。B隊、F隊は挟み撃ちできるポイントへの移動をお願いします」
トランシーバーの進化系みたいなので話している人がいる。
H隊!?何隊までいるんだろう?
そんなことはさておき、挟み撃ちポイントに移動されるのはまずい。
どうすればいいんだ。
H隊がある時点で相当な人数がいると推測できる。
今、リアルに5人の人が追ってきているし。
「人工衛星による追跡を開始。網の準備に移ります」
トランシーバーの進化系みたいなのから声が聞こえる。
てか、ターゲットにそんな情報漏れちゃってるけどいいのか?
ダミーの可能性は否定できないが、相手の予想外の行動を取ることができれば、いけそうな相手な気がしてきた。
干渉制御は人間界では全くの無意味だろう。
重力制御はどうだろうか。
人工衛星がいるらしいから、真上に飛ぶのはダメだろうけど、重力を使ってどっかに超スピードで飛べばいいんだ!
まあ、そもそも魔法が発動することを前提条件とした話だが。
何事も、試してみよう。
まだ10メートルほどの猶予もあるしな。
「重力制御」
とりあえず真上を目指す。
この高度で直進したら、いろいろなとこにぶつかって死ぬからね。
無事に魔法は使えそうだ。
高度20メートルあたりで一回止まる。
「ター…………F………………口衛…………射…………を……請…………す」
何か言っていたが、距離が離れてしまっているので、断片的にしか聞き取れない。
とりあえず、るる会った位置の真逆の方向にするか。
ビュンビュン飛んでくぞ。
しばらく飛んだその頃に。
今度はミサイルみたいなのが12個ほど襲ってきた。
これ、追いかけて来る方もガチすぎないかな?
ミサイルみたいなのは、私の目の前で開くと、直径20メートル程度の網が出てくる。
殺害ではなく、あくまでも捕獲が目的のようだ。
襲ってくるのは上下左右に加えて斜め上、斜め下……とにかく全方位からだ。
どうしましょう。
人間界のものに私の魔法は効かない可能性もある。ならば、人間界のものを使わなければいい。
霊界のものを使おう。
制服の上着の部分を脱ぐ。
それを固く丸めて……
「重力制御」
私の直進方向に、速度が出過ぎて燃え始めてるのも無視して吹っ飛ばす。
すると、私の目の前だけ網が吹っ飛んだ。
私はそのまま直進!
進み続ける。
無事網から抜けた。
私はそのまま進んで、進んで、進んで。
てか私。どこ目指してたんだっけ?
そ、そうだ!魔法屋を目指してたんだ!
でも、どこにあるのか全く分からない。
そうこう考えているうちに、目の前にロボットみたいなのが飛んできた。
『ターゲットを確認。射殺します』
機械音が鳴り響く。
今、射殺って言った?
私死ぬのかな!?
そうはさせん!
進行方向を真横に変えて、思いっきり吹っ飛ぶ。
逃げましょう。
それは甘かった。
風が吹き抜けたと思ったら、真正面にまたロボットみたいなのがいた。
コイツ……私より速いぞ……
私はこれ以上の速度を出すと多分燃え尽きて死ぬため、これが最高速度だ。
これで死んだら本末転倒だ。
ここは、ロボットを倒すしかない。
私とロボットは向かい合う。
「重力制御」
ロボットに突撃した、はずだった。
私の体は風を切る。
速い、とにかく速い。
回避されたのか、と認識するまでにしばらくかかった。
巨体に見合わぬ速さ。しかし、相手はまだ攻撃してきていない。
射殺とか言っているけど、あくまでも目的は捕獲。でも、殺されないからと言って、簡単に捕まるわけにもいかない。
逃げる、逃げる〜。
とはいえ、速度的に逃げられない。
重力制御だけではダメなのだ。
そこで干渉制御との併用が求められてくるのだが。
ただ、干渉制御はどうすれば人間界で使えるのかいまいち分からない。
干渉が制御できるのは霊界のみ。
あれ、もしかして私、詰んだ?
そう思った矢先、網が私に絡みついた。その網の先はロボットへと繋がっている。
網から抜け出すことなどできるはずもなく、私はなすがままに地上へ降ろされる。
「捕まえたぜ、光輝」
ロボットから1人の少女がそんなことを言いながら降りてきた。肩くらいまでの黒髪を二つに分けて結んだ子。赤い眼鏡が黒い目によく映えている。るるや天宮さんと同じ制服を着ているが、スカートが異様に長い。くるぶし丈だ。
「あの……なんで?」
私は恐る恐る尋ねてみる。
「光輝にたのまれたからだぜ」
速攻で答えが返ってきた。光輝って確か天宮さんのことだよな。
「あなたは誰?」
私は網の中であるにもかかわらず、調子に乗って次なる質問を飛ばす。
「私に名前はない、操乗って呼ばれてる」
そう、これは作戦。この子は私を捕まえたくて捕まえてるんじゃなくて、上?からの命令でやっている。
だから私は、この子、操乗ちゃんと仲良くなって、逃がしてもらおうとしている。
「そうなんだ!操乗ちゃん、よろしくね」
私は網の中から手を伸ばす。
「大人しくしてろ」
完全にスルーされた。どうしよう。
「なんで捕まったかもよく分からないけど、お願い、逃して」
私は土下座した。なんか、網のせいなのか体が痺れてきている。
「光輝がいいって言ったらな」
あれ、なんか無理そう。
「操乗、よくやりましたわ」
そんなこんなを言っているうちに、そこに現れたのは天宮さん。
……泣いていいかな?




