柘榴神戦①
少し前のこと、珠夜とれみは噴水広場で談笑していた。
「マヨタンは、泳げないから水の上を走れるようになりたい!」
珠夜はれみに謎の宣言をしていた。
「水の上を走るのはすごいことですが、珠夜様ならばできそうですね、とれみは、れみなりに考えます」
z……ざ……くr……ざ……ろ…………z……a。
そんなれみの頭の中には、ノイズが響いていた。
ざ、くろ。
そのノイズがだんだんと鮮明になっていく。
何かが堪えきれなくなり、れみは頭を抱えてうずくまった。
「れみ!?」
珠夜が心配そうにれみに駆け寄り、背中をさすっている。
「柘榴」
れみはそう呼ばれていました。
「柘榴」
れみはれみはそう呼ばれていました。
「柘榴」
もう辞めてください。れみは必死に訴えます。れみはれみは『れみ』でいたいんです。れみはれみがれみで。
「柘榴」
れみはれみはれ……み……は…………れみはァ
「柘榴」
昔のことを思い出してしまいました。
「レミニッセンス」
記憶というのは、時間が経ったほうがより強く思い出す、ということもあります。
それを利用した封印。
要は、未来に繰り越していたわけです。記憶を。そして、力を。
故に、その封印が剥がれれば暴走する。
今、その封印が解ける時。
今、柘榴神の力が解き放たれる時。
今、松浦れみという存在が消える時。
今、全ての霊界の人々が絶望する時。
今、今、今、……
世界が変わる時。
今、始まる。
松浦れみではなく、柘榴神による世界の変革が。
最後に、れみは、れみらしく、れみなりに、思いました。柘榴神について。
「愚かしい」
「れみぃぃぃ!!」
マヨタン、舞羽珠夜は叫ぶ。れみが何かなっている。その何かが説明できない。マヨタンは呆然と立ち尽くした。
「れみさーん!!珠夜さーん!!」
翡翠ちゃんがそう叫びながらマヨタンの隣へ走ってきた。
「翡翠ちゃん。あれ、ゾメッチと一緒じゃ」
今日、ゾメッチは翡翠ちゃんに会いにいくって言ってた。
「あの……みゆさんが……ちょっと長くなるので後で話しますね。それよりれみさんは!いや……別に望初さんのことが心配じゃない訳ではありません」
事情はよくわからないが、とりあえずゾメッチは今いない。
マヨタンが、マヨタンがれみを助けなきゃいけない。
マヨタンは迷わず、れみに向かって駆け出す。
「固有魔法、風属性、俊足!!」
すぐに距離が縮まる。もうすぐれみに届く。そう思った時だった。
横から何かに殴られた。
「っ……」
マヨタンの速度についてくるなんて……このぉう!
反撃してやろうと思った。空中だが体勢を立て直す。
「上級魔法、風属性、疾風刃!!」
超級魔法だと飛びすぎるからこんなもんだろ。
しかし、それは失敗に終わった。
今度は上と左右から。3方向から同時に何かが襲いかかってきた。
左右の物はさっきの疾風刃を操作して、切り刻み、粉々にする。
上の一つが避けられなかった。
マヨタンは直撃を覚悟して、せめてものの防御として顔の前で両手を十字に交差し、詠唱を極限まで削って火属性の初級魔法を発動させる。
「火球!!」
だが、その何かはマヨたんを素通りした。
ほっと息をつこうとしたのも束の間、マヨタンに巻き付いてきた。
謎の何かの正体は、植物の枝だったのだ。器用にしなって巻き付いてくる。なんの植物か。
よく分からない。れみの背中から、何かが出てきている。
身動きができなくなる。
その隙に、さらに何本もの枝が巻き付いてきた。
「珠夜さん!!大丈夫ですか!?きゃぁ!!!」
翡翠ちゃんの声が聞こえてくる。
そっちを見ると、翡翠ちゃんも枝に巻きつかれていた。
れみ、柘榴神に翡翠ちゃんの干渉制御は効かない。
翡翠ちゃんは逃すべき。
でも、身動きの取れる人は誰もいない。
はずだった。
「重力制御!」
翡翠ちゃんの声。
何をしたのか分からないが、マヨタンを縛っていた枝が緩んだ。
その隙に、思いっきり上にジャンプした。
数本の枝が追いかけてきたが、翡翠ちゃんが何かしてくれたのか、下に落ちていった。
「ありがとう!」
マヨタンはそう叫びながら翡翠ちゃんの横に着地した。
私、星月夜翡翠は、噴水広場へたどり着いた。そこで目にしたのは驚きの光景。
うずくまった苦しそうなれみさんに、珠夜さんが寄り添っていたところ、れみさんがなんだか変なことになった。
「れみさーん!!珠夜さーん!!」
私はそういいながら、珠夜さんのほうへ向かって走る。
「翡翠ちゃん。あれ、ゾメッチと一緒じゃ」
珠夜さんは戸惑いの表情を浮かべた。そういえば、望初さん置いてきちゃった。
「あの……みゆさんが……ちょっと長くなるので後で話しますね。それよりれみさんは!いや……別に望初さんのことが心配じゃない訳ではありません」
今思い返すと、なかなか複雑な状況だったな。
「固有魔法、風属性、俊足!!」
珠夜さんの固有魔法が発動する。珠夜さんはとても速い。
「っ……」
何か、植物のツタ、いや枝かな?のようなものが珠夜さんを追いかける。あれ、珠夜さんより速い気がする。珠夜さんは苦しそうだ。
「上級魔法、風属性、疾風刃!!」
「火球!!」
珠夜さんがいろいろな魔法を駆使して、れみさんに近づこうとしていた。しかし、植物の枝が珠夜さんに巻き付く。
それは、れみさんの背中から出てきていた。
「珠夜さん!!大丈夫ですか!?きゃぁ!!!」
まずい、そう思って珠夜さんに近づこうとしたら、私も枝に巻きつかれてしまった。
何かできることはないか。とりあえず、魔法を打ってみた。
「重力制御!」
れみさんの重力をちょっと強くしてみた。
すると、私たちを縛っていた枝の力が緩み、縛られていたのが解けた。れみさんが、本体なんだ。なんだか複雑な気持ちだ。
私はそのまま地面に着地した。重力が効いているのか、追撃はこない。
この魔法、ちゃんと使えるじゃん。
「ありがとう!」
珠夜さんがそういいながら、私の横へ着地した。




