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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
干渉制御
23/177

虹蝶みゆ戦

「大丈夫ですか、望初(のぞめ)さん!?」

 私、星月夜翡翠(ほしづくよ ひすい)はその背中をさする。これで楽になるのかどうかは知らないけど。

「はぁ、はぁ……こんにちは、翡翠」

 私は思わず、望初さんから距離をとった。気持ち悪かった。望初さんから紡がれる、あきらかに望初さんのものではない言葉が。

「だ、れ……?」

 私は恐る恐る口を開く。本当に、あなたは誰なんですか?

「私は虹蝶みゆ(にちょう みゆ)、初代魔法屋店主」

 すると、望初さんがよく分からないことを言い出した。虹蝶みゆって名前は何回か聞いたことがある。

「は?」

 私は思わず言い返した。自分の声が震えているのが自分でもわかる。ちょっと、怖いや。

「言われたでしょう、今後について話し合うって」

 望初さんの顔をしたみゆさんが、どこまでも優しい表情で言葉を紡ぐ。

「今後、繭羽先生と特訓して、強くなります」

 とりあえず、これは決まっていることだから、宣言する。あれ、これ、決まってることだったっけ?

「そう、頑張って。無理はしちゃだめよ」

 みゆさんは淡々としている。でも、言葉一つ一つに慈愛の念がこもっているように感じる。

「私の干渉制御についても、調べたい」

 だから私は安心して、自らの目標を語る。

「これ以上はやらせない」

 望初さんに入ったみゆさんが言った。突然、声が荒れた。

「なんでですか?」

 私は思わず声を荒げる。本当に疑問だ。突然コロッと態度が変わった。

「翡翠が……柘榴が……こんなことを望んでいないからよぉ!!」

 みゆさんも必死だ。

「翡翠だって、柘榴だって私を庇って、記憶がなくなってぇ、だったら、私が二人の思いを!生き残ってしまった私が!生き残った意味を!!果たさないと!!私が、二人を犠牲にした私がぁぁ!!」

 てか翡翠と柘榴って人名か?誰!?翡翠って私!?

「みゆさん!」

 みゆさんが何を言ってるのかはまったく分からない。

「今度は私が、二人を守らないとぉ!!」

 望初さんではあり得ないような形相になっている。目が血走り、体が燃え上がりそうなほど熱くなっている。

 望初さんの場合、温度が下がるからな。

「固有魔法、翡翠神!!属性奥義!!!」

 詠唱に翡翠神と入っているが、私の詠唱ではない。みゆさんの詠唱だ。属性奥義という魔法が翡翠神にはあるらしい。みゆさんが持っているのか、望初さんが持っていたものなのか、わからないが。

 いや、これは望初さんのものだな。理由として……いや、こんなこと考えてる余裕はない。

「固有魔法、翡翠神、干渉制御!!」

 とりあえず、干渉は外すが、無意味だろう。

 走るより転がった方が速いので、(私の勝手な偏見である可能性もある)とりあえずひたすら転がっておく。

 直後、私がいた場所に、なんかすごい魔法が走り抜けた。

 全ての超級魔法を合体させたような感じだ。

「固有魔法、翡翠神!属性奥義!固有魔法、翡翠神!!属性奥義!!!」

 二発連続だ。今度は転がっても走っても避けられないぞ。

 どうしましょう!

 盾を探しましょう。

 地面に潜れば、地面を盾にできます。

 そこまで考えたが、地面に潜るのはやめた。

 さっきの魔法がぶつかった跡を見ると、地面が思いっきり抉られてるからだ。壁が壊れていないのは不思議だ。特別なのかな?

 とにかく、地面に潜ったところでミンチになるだけだろう。

 これぞ、絶体絶命。

 だったら直撃してやろうではないか。

 私はみゆさんに向かって走る。

「固有魔法、翡翠神!!干渉制御!!」

 みゆさんへの干渉をつけた。

 直接、本気で殴りに行くのだ。

 魔法が当たる直前。

 私は前転した。

 背中が痛い。思いっきり抉られていることだろう。

 ただ、両手両足、頭、心臓を庇うことには成功した。

 いける。

 思いっきり一歩踏み込む。

 右手を振り上げる。

 届かなかった。

 あと一歩。

 寸前のところで避けられた。

「翡翠の行動パターン程度、熟知しているのよぉ!!」

 舐められた人みたいな感じで、みゆさんは叫ぶ。

 確かに、私は少しみゆさんを舐めていたかもしれない。

 干渉制御は読まれないと思っていた。

 みゆさんが干渉制御の効果や詠唱を把握しているから、全て避けられてしまうのだ。

 うぐっ、背中が……

 長くは持たないな。

 短期決戦を……



「これ以上はやらせない、でしょ」

 私、虹蝶 望初は体の制御を取り戻したい。望まないのに望んでいないのに、自分が翡翠を傷つけていく光景は辛すぎるのよ。

「邪魔しないでぇ!!」

「今の翡翠は、あなたが知っている翡翠じゃないのよ」

「だからって、翡翠の願いが消えたっていうのぉ!!」

「だからって、人の体を乗っ取ってもいいという言い訳になるっていうの?」

「言うに決まってるでしょぉ!!」

「じゃあ私は翡翠の願いが消えたっていいと思うわ。そんな、人を傷つける必要のある願いなんて、消えてしまえばいいって思うわ」

「翡翠の願いが!消えていいわけないじゃないのぉ!!」

「少なくとも、あなたがしている事は翡翠とやらの願いとは程遠いと思うのだけど」

「お前にぃ!お前なんかに何が分かる!!」

「何もわからないに決まっているじゃない。私に分かることは今、目の前にいる翡翠を傷つけるのは間違っていると言うことだけよ」

「だからぁ!お前なんかに何が分かるぅ!!」

「何もわからないって言ってるじゃない」

「さっきから淡々としててぇ!こっちは必死だってんのにうざったらしいんだよぉ!!」

「あなたの方が、人の体に勝手に侵入して、好きなだけ暴れ回ってうざったらしいわよ」

「黙れ!!」

 さらに苦しくなってきた。これは頑張らないと体を完全に乗っ取られるわね。

 だったらやることは一つ。

「固有魔法、無属性、衝魂」

 これは、強制的に魂を揺さぶり、意識を飛ばす魔法。みんなには秘密の、私の固有魔法。まあ、私の意識も飛んでっちゃうんだけどね。



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