店主の間
それからまた、私、星月夜翡翠寮で寝て起きて。
繭羽先生のえぐい授業を受けて、一週間ほどたったころだろうか。
「干渉制御」
なんか、魔法名だけで魔法が発動できるようになっていた。
「成長が早いね~さすが~」
すごい人にほめてもらえるとなんだか嬉しいな。
「まぁ~ここからが長いんだけど~」
あ、はい。だんだん繭羽先生のことも分かってきたかも。上げてから下げる人だ。
「ねぇ~望初ちゃん、どう?」
繭羽先生が教室という名のグラウンドの端を見ながら話す。その目線の先には、なんと望初さんがいた。
「まあ、いいんじゃないかしら。この子については特殊過ぎてよく分からないわ」
どこからどうみても望初さんだった。相も変わらず綺麗な紫紺の瞳。
「望初さん!久しぶりです!」
私は望初さんに駆け寄った。
「今日は二人で行ってもらいたい場所があるの~」
繭羽先生が話を始める。
「店主の間、ですよね?」
望初さんはすでに話を聞いているのか、繭羽先生へ確認をとっている。もしかして、私、置いて行かれてる、わけないか。
「そうよ〜。まあ、私もついていくけど」
待って、二人は完全に状況把握してる。やっぱり置いていかれているわ。
「あなたは私たちについてくればいいの」
望初さんがそんな私の心中を知ってか知らずか、そんな安心できる言葉をかけてくれた。
というわけで、淡々と歩き続ける繭羽先生と望初さんになんとなくついていく私。希望学校の街並みって綺麗だなとか、なんか二人とも歩くの速くない?なんて考えながら歩き続ける。
そうしてたどり着いたのは、希望学校の中心の噴水のある広場、その近くの通り沿いの一つの建物。神殿みたいな感じで、とても厳かな建物だ。
そこの建物の前には、着物を着た人が立っていた。薄い青の髪には虹色の蝶。落ち着いた黄色の瞳はまっすぐに私たちを見つめている。
「ようお越しくださいました。うちは虹蝶栄華。5代目の魔法屋店主や。よろしゅうね」
名前からも分かる。この人は魔法屋店主。栄華さんは建物に入っていく。それに続いて望初さんも繭羽先生も入っていったので、私もついていった。
「皆の衆、お客さんや。久しぶりやねん」
栄華さんの声に、そこにいた人たちが一斉に振り向く。その人たちは、全員が頭に虹色の蝶をつけていた。それは私にとって、とても衝撃的な光景だった
「ここは店主の間。歴代の魔法屋店主が集まる場所よ」
望初さんがいたずらが成功した子供のような表情で教えてくれた。私、そんなにあっけにとられた表情をしていたのか?
「こんにちは。私は虹蝶遡楽。4代目の魔法屋店主。ようこそ、歓迎します!」
一人の幼女が前に出てきて、私たちに声をかけた。本当に、幼女だった。6歳くらいに見える。かわいらしい黄色の髪に明るい緑の目。
「星月夜翡翠です。こちらこそよろしくお願いします」
4代っていうと、だいぶ早いよな。早いほうがえらいのか?よく分からないけど、一応丁寧に挨拶を返しておく。
「この場所を仕切ってるのが遡楽さんよ」
望初さんが追加情報をくれた。めっちゃ偉い人じゃん、この幼女。
「天花。この場所について説明してくりゃれ」
栄華さんが、一人の魔法屋店主を指名する。
「え~、なんで天花様なんですか」
淡い茶色の綺麗な髪をおろした、とても整った顔立ちの美しい人が立ち上がる。完璧なまでに煌めく水色の目。めちゃくちゃ美人。まるでお人形さん……ってこの人見覚えある。画面越しだけど。
「アイドルの天花様……?」
私は思わずつぶやいていた。めっちゃ怪訝な目で見られてる。美人のほうが怒ると怖いってこういうことか。
「人間界での生前の私かな?まあ、天花様がアイドルやったら もちろんトップになるから知ってて当然ってとこね」
なんか、あっさり流された。実は優しい人なのかもしれない。
「ここは、望初が言った通り、店主の間。魔法屋店主が集まって、暮らしてる場所」
天花様がしぶしぶといった様子で説明を始めている。なんか、いちいち絵になる感じの人だ。
「今回、翡翠がここに来たのは、今後について話すためよ」
説明は続く。今後、あんまり考えてなかった。そういえば、るるは元気かな、学校とか行ってないな。
「とりあえず、移動よ」
天花様が扉を一つ指さす。
「あっ、望初も来るのよ」
そう言いながら、扉に向かって歩き出し、私たちについてくるように促す。
「繭羽先生は?」
私は遡楽さんに聞いてみた。繭羽先生こそ、私の今後に大きくかかわってくると思うんだけど。
「どうして私?」
望初さんも、自分が同行する必要性に疑問を感じているようで、遡楽さんを見ている。
「いいから、行って、おねがい」
遡楽さんは強引に私たちを促す。何か裏がありそうだ。
繭羽先生のほうを見てみたが、繭羽先生はほかの魔法屋店主の人たちと話をしていた。
私は望初さんと顔を見合わせる。お互いにうなづきあって、部屋に入る。教会みたいな雰囲気の、神聖な感じの部屋だった。水色と白を基調とした壁はおしゃれだ。
すると、私たちを案内してくれた天花様が部屋から出て、扉を閉めた。部屋の中で、私は望初さんと二人きりだった。今後って、望初さんと話すだけだったら希望学校でよかったのに。
「……がっ!」
突然、うめき声が聞こえた。隣にいる、望初さんのものだ。口元を押さえ、目を思いっきり見開いて、とても苦しそうだ。




