鬼授業
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、、翡翠神、干渉制御!」
そこから授業が始まった。
とりあえず、ひたすら魔法を打つという感じだ。
繭羽先生によると、私、星月夜翡翠はまだまだ魔法を打った経験が少ないという。
だから、魔法を打つという感覚を身につけるためにひたすら魔法を打つということだ。
繭羽先生が私に石(けっこう巨石)を投げてくれるので、それを一つずつ魔法ですり抜けるという感じだ。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
休む暇なく詠唱し続ける。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
望初さんや珠夜さんが言っていたスパルタの鬼授業というのもわかった気がする。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
でもこれでもまだ序の口なのだろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
珠夜さんが回避したくなる授業はどんなものなのだろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
魔法学校の方はどうなのか。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
留年生である幽依先輩、明里先輩、メロディー先輩はこれより厳しいと聞く。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
どんなことをしているのだろう。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
こんなことを考えている余裕がある時点で、まだまだ生ぬるいということが分かる。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
この程度でスパルタの鬼授業だと思ってはいけないのだろう。
「ちょっと余裕がありそうだね〜。スピードを上げるから頑張ってよ〜」
繭羽先生の声が聞こえた。
色々考えていることもモロバレなのだ。
そして、石の飛んでくるスピードが明らかに上がった。
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御!」
ちょっと速……
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
考えてたら……
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
間に合わない……
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
鬼……
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
いや、まだまだ序の口……
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
「固有魔法、翡翠神、干渉制御」
その後、何も考えず、ひたすら魔法を打ち続けた。
「今日はここまでにするの〜」
繭羽先生のそんな声でハッと我にかえる。
あの後どうしていたんだっけ……
いまいち記憶がない。
とりあえず、切り抜けた。
序の口で、まだまだで、たった1日分だけだとしても、切り抜けたと言う事実は変わらない。
「またね〜。寮までの道はわかると信じてるの〜。でも、どうしても分からなかったら、あそこに地図があるから一個取っていってね〜」
そう言って繭羽先生は教室(絶対校庭です)の外を指差す。
道は分かってると思うが、不安なため、一応後で一個もらおう。
「今日はありがとうございました。また明日よろしくお願いします」
挨拶をして、私はすぐに帰ろうと思った。
思った以上にだるいし、疲れた。
一応地図を取り、寮へ向かう。
銉ちゃんや澄ちゃんはこれを毎日やっているんだろうな。
寮の扉の前にたどり着いた。
安心感、すごいな。
この安心感で、さっき思いついた澄ちゃんに聞きたかったこと忘れちゃったぜ。
「ただいま!」
ここは私達の家なのだ。
ただいま、と言っても文句はないだろう。
「ヒッちゃん!おかえりなんだよ!あれ、リッちゃんは一緒じゃないのって聞いてみるんだよ?」
銉ちゃんはまだ帰っていないのか。
もしかしたら、私が氷川愛洲と戦ったことで、授業に支障を出してしまったのかもしれない。銉ちゃんが帰ってきたら謝ろうかな。
「とりあえずただいま。銉ちゃんは一緒じゃないかな。きっともうすぐ帰ってくるとは思うけど……」
でも、銉ちゃんともお話ししたいし、早く帰ってきてほしいな。
「とりあえず、リッちゃんを待つんだよ!ヒッちゃんは食堂の場所知ってるか聞いてみるんだよ?おそらく知らないと思うけど、リッちゃんを待つ感じでいいよねって確認するんだよ」
そういえば、私最近ご飯食べてない。
望初さんはご飯どうしてるんだろ?
食べている様子を見たことない。
でも、霊界にきてから空腹を感じていない。
どういうことなんだろう?
これが、闇空 帆野歌の印象操作と校長先生の合わせ技であることを大半の生徒は知らない。
当然、星月夜 翡翠も例外ではなかった。
まあ、細かいことは気にしない、気にしない。
とりあえず、銉ちゃんが帰ってくるまでは何をしようかな。
澄ちゃんがどんな授業をしているのか聞いてみたいな。
「澄ちゃんは今日、どんなことをやったの?」
澄ちゃんはその質問にちょっと驚いたようにびくっと跳ねたが、すぐの明るく答えてくれる。
「澄はね、澄はね、今日はクラスの人と魔法のぶつけ合いをやったんだよ。今までの成果を試す試合みたいな感じでね、威力勝負をしたんだよ」
威力勝負。響きからして怖いな。
澄ちゃんは超級魔法まで使えるらしいし、他のクラスの人もそんなものなのだろう。恐ろしい試合であることが目に見えている。
澄ちゃんはいじめられたりしていないかな?
それを聞きたかったんだよ!思い出した。
「澄ちゃんは、クラスのみんなと仲良い?」
澄ちゃんは途端に暗い顔になった。あ、あれ、大丈夫だ、だよ、な?
「澄はクラスのみんなと仲良しでお友達なんだよ。でもね、最近1人行方不明の子がいて……とっても心配なんだよ……」
暗い顔になったからびっくりしたけど、いじめられているとかはなくてよかった。というか、私が聞いてなんとかできるという考えも傲慢だったな。私最近傲慢だ。気をつけないと……
行方不明の子がいるというのも心配だ。
「その子はね、タッちゃんはね、舞羽珠夜っていう子でね、澄とも特に仲良かったんだよ」
仲の良い子がいなくなってしまうのは寂しいな。それに、転校とかじゃなくて行方不明だもんね。すごく心配だよね。
「澄ちゃん、きっとその子は無事だよ。信じて待ってよう……」
私にできるのは言葉をかけることくらいかな。
きっとその子も大丈夫。私も信じてるからね。
「ヒッちゃん……そうなんだよ!タッちゃんは絶対戻ってくるんだよ!」
澄ちゃんの御空の瞳が輝きを取り戻した。爛々と輝いている。良かった。
タッちゃんはきっと大丈夫だよ。
ん?
タッちゃん?
おい。ちょっと待て!
「澄ちゃん、そのタッちゃんってこの名前、もう一回教えて!」
そうだよ。
「タッちゃん?タッちゃんは舞羽珠夜っていう名前なんだよ!」
その人、つい昨日会いましたよ。
珠夜さん。無事ですよ。
れみさんが珠夜さんは行方不明と言っていましたが、本当だったのですね…
「その……澄ちゃん……ちょぉっと言いづらいんだけど……その、タッちゃん……珠夜さんに私昨日会ったんだ……っちょ、澄ちゃん!?」
私が昨日会ったと言った瞬間、澄ちゃんに掴み掛かられた。
「ヒッちゃん!その話、詳しく聞かせて欲しいんだよぉ!!!!!!」
って、澄ちゃん力つよぉ!!
いたっ、いたたぁ!
「話します!話しますからぁ!離してくださぁい!!!」
その後、取っ組み合いは続いた。恥ずかしながら、私は手も足も出なかったので、取っ組み合いとは言い難いのだが……
帰ってきて、この取っ組み合いを止めてくれた銉ちゃんは、ヒーローだ。
その後、澄ちゃんも落ち着いたので、食堂に行くことになった。
歩いて15分程度かかる場所にあるらしいので、道中のんびり会話できた。
「銉ちゃん。ちょっと帰り遅かったけど大丈夫?」
純粋に心配だ。
「それは……もっと早く止めてほしかったってこと?」
疑わないでくれ銉ちゃん!純粋に心配なんだ。
「いやいやそうじゃなくて……」
でも、否定できないな。だって澄ちゃん力強いんだもん。
「澄も、リッちゃんの帰りが遅かったことは心配だったんだよ」
銉ちゃんはいつも通りの様子で(まだ2日しか一緒にいないが)話だす。
「ちょっとね、氷川愛洲と話してたの。話したいことが、ちょっとあったから。大したことじゃないのに、心配かけてごめんね」
氷川愛洲、か。
ちょっと気になるな。深掘りして質問してみる。
「どんなこと、話してたの?」
銉ちゃんは一瞬迷ったようだった。でも、こう言った。
「秘密ね」
まあ、根掘り葉掘り聞くようなことでもないか……
結局その話はそこで終わった。
銉ちゃんが困ってないならそれでいいだろう。
食堂はとても賑やかで広いところだった。食べたのは白米と味噌汁だけなんだけど、それがめちゃくちゃ美味しかった。




