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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
霊魂制御
175/177

夢叶

「……ついに、ついに」

 何もない空間に向かって、夢叶がぼそぼそと何かを言っていた。

夢叶(ゆめか)?どうしたんだぜ?」

 そんな夢叶の顔を操乗(そうじょう)が不思議そうな様子でのぞき込む。

「……ああ、ようやく」

 しかし、夢叶は操乗のことなど気にも留めず、自分の世界に浸っている。

「……夢叶、いったい何があったのでございますの?さっきも、えっと……じゅり、でしたっけ?見えない人と話しておりましたの」

 そんな二人の様子を怪訝に思った天宮光輝(てんぐうみつき)が声をかける。

「……ごめん、光輝。ちょっと行ってくる」

 夢叶はそう言って、ただ立ち去ろうとする。

「記憶の転送とか、いろいろ不思議な能力を持ってるなとは感じてたけど……夢叶っていったい何者なのか疑問なんだぜ」

 操乗はそう言いつつも、夢叶を止めることはない。

「ええ、同感でございます」

 光輝はそう言って、目を伏せた。

「夢叶が何か隠しているのは、分かっていたことですもの」

 


「……ようやく、帰れるんだ」

 一人、歩きながら夢叶は呟く。

「……椿(つばき)ちゃんを壊すことになっちゃったのは残念だけど……わざわざ人間界に来てもらってテストまでした子なのに……」

 その顔には笑みが浮かんでいた。

「……まあ、いい。あ、翡翠神が暴走したってことは玲菜(れいな)さん死んじゃってるってことか」

 夢叶の足は魔法屋へと向かっていく。

「……これくらい翡翠神の力が蔓延してれば、人間界に落とされた私も霊界に戻れちゃう……呪莉さんも霊界に戻せたし、きっと大丈夫」

 夢叶が魔法屋にたどり着き、その扉に触れた。

「はぁっ……へ?」

 夢叶の目の前に、どこからともなく傷だらけの少女が現れた。

「……柘榴神と翡翠神が暴走している状態。霊界から飛ばされちゃった感じの子か」

 夢叶は一瞬少女を見たが、無視して魔法屋へと入った。

 魔法屋には無数の死体が転がっている。

「……ちゃんと入れてよかった。それにしても玲菜さん、派手にやったね」

 夢叶は死体を平気で踏みつけながらも進んでいく。

「誰や?」

 そんな夢叶の前に、虹蝶栄華(にちょうえいが)は立ちふさがった。その後ろには虹蝶遡楽(さくら)も控えている。

「虹蝶夢叶?」

 遡楽が訝し気な顔でそう尋ねる?

「……なんで覚えてるの?脳の一部を奪って記憶はちゃんと消していったはず。呪莉さんだって私のこと覚えてなかったし……もしかして、直前に時間遡行のすごい版みたいな使った?」

 夢叶が顎に手をあて、考えるような素振りを見せつつそう言った。

「正解、だけど」

 虹蝶遡楽が手を前に伸ばす。すぐにでも攻撃するつもりのようだ。

「……だとすると、玲菜さんはあなたたち2人が?それならかなり疲れてると思うけど、死にたい感じ?」

 夢叶はそう言って、虚空から鎌を取り出す。

「……ちょうど気に入ってた子がいなくなっちゃったし、私は大歓迎」

 次の瞬間、夢叶は動き出していた。

「空間結合」

 鎌が遡楽に当たる直前、遡楽の姿が消えた。栄華もいなくなっている。

「……?」

 夢叶は不満げに鎌を振り回し、近くの死体に鎌をつき刺す。

 すると、その死体が起き上がる。

「……あの子たち探しといて」

 その死体はもう夢叶、身体狩りの人形でしかない。

「……さあ、早く総大将に会いに行かないと」

 そう言って夢叶は再び歩き出した。




「結空、助かったけど……」

 店主の間で遡楽は感謝しつつも首を傾げていた。

「私としても、どうして魔法が使えたのか分からないです。魔法屋店主がいなくても、柘榴神が近くにいれば使えるというのは事実なのですが……」

 そう言った虹蝶結空(ゆあ)も首を傾げている。

 魔法屋店主も柘榴神も、霊界から人間界へ干渉する力であるということに違いはない。

「もう、何が起きてもおかしくないんね」

 栄華はそう言って軽くジャンプする。戦いのための準備体操のつもりのようだ。

「いや、夢叶に栄華に私。三人くらいいれば結空は……まあいい」

 遡楽はそう言って寝転がった。かなりの疲労がたまっているらしい。

「虹蝶夢叶って呼んでましたけど、どういうことですか?」

 結空が眠ろうとしている遡楽に容赦なく話しかける。

「時間遡行の副作用で全部思い出した。あの人は6代目魔法屋店主、虹蝶夢叶。そして死神二冠の一人、身体狩りの本体でもある。凱阿さん辺りがうまいことやって霊界から人間界に落としてた……はぁ、何で忘れてたんだ」

 遡楽はそう言って頭を抱える。

「記憶を消されてたっていう方が正しそうですが……」

 結空がフォローしようとするが、うまく言葉が見つからず言い淀む。

「それより、呪莉が心配や。あの死神の言葉的に直前に呪莉に会ってそうな気がしたんやけど?」

 栄華が不安げに呟く。

「夢叶の戦力って未知数だよね。昔から基本的に前に出てこないから。何かしら操ってるんだもん」

 遡楽がそう言って諦めたように目を閉じた。

「やっぱり藤原玲菜、殺しちゃだめだったんだ……」

 遡楽はそう吐き捨てた。



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