仲間割れ
「ここまで来れば大丈夫だと思うねん」
柘榴神の前からかなり走って、既に魔法学校は見えないほどの距離となった。
ミチヨの言葉に、我、日生蓮はうなづく。
本当にできてしまった。望初も希望学校の生徒も置いていくことなく撤退という無茶。
そう思った時に覚えた安心感は絶大で、望初を寝かせて我はその場に座り込んだ。
「蓮が無事でほんまに嬉しいで、さあ、帰るんや」
ミチヨがそう言って座り込んだ我に手を差し伸べた。
「蓮さん?行っちゃうんだよ……」
希望学校の生徒が心配そうにこちらを見ている。ミチヨが世界への反逆者の一員であることはその服装から一目で分かる。希望学校の生徒からすれば敵であろう。
我の頭をよぎったのはユェンユェンの顔。妹たちのことを我は頼まれている。今のところ何もできていないが……
改めて目の前のミチヨを見る。ミチヨは我を信じているらしい。それが洗脳によるものだったとしても、目の前にミチヨの純粋な片目があることは間違いない。
そして、足元に横たえた望初を見る。時間経過だけで簡単に死んでしまうことは明白な状態だ。
我は立ち上がって望初を抱えた。
「ミチヨ、すまない。我は帰らない」
我はそう言って望初を抱えて歩いた。希望学校にさえ行けば誰かしら治してくれるはずだ。
「……んで」
ミチヨが何かを言う。
「なんでや!蓮はうちのこと、やっぱり……」
少し心苦しいが、我は目を背けた。
「……嫌い、なんか?」
寂しげな声による問いが投げられた。それと同時に、鋭い熱線が放たれた。
我はその熱線を見ることなく、体を捩って躱すつもりだった。望初を抱えていたためか、あるいはミチヨの言葉に動揺したためか、我の頬を熱線が掠めた。
自分の血を見るのも久しぶりだな。
そう思っている間にもミチヨは次々と攻撃を仕掛けてくる。望初を抱えて勝てる相手じゃない。かと言って望初をその辺に置いて仕舞えば攻撃に巻き込まれて死んでしまうだろう。
それならば取れる選択肢は一つだ。我は希望学校の生徒に望初を渡す。と空いた両手で鎌を持ち、ミチヨの攻撃を全て弾きとばす。
「望初を頼む。攻撃は全部我が防ぐから振り向かず走れ」
希望学校の生徒は動揺した様子だったが、頷いて走り出してくれた。
言った通り、我は全ての攻撃を防ぐ。
ある程度経って、希望学校の生徒が無事逃げられてから攻勢に出ればいい。両手が使えればミチヨはさほど苦戦する敵でもないのだから。
「……」
ミチヨは壊れたように黙ったままひたすらに攻撃を仕掛けてくる。
防ぐのは容易。何も問題はない。
ミチヨを倒せばいい。
我は間違ってなどいない。




