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2つの世界を繋ぐ者  作者: きっこー
霊魂制御
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作戦失敗


「君たちには魔法屋を奪還もらうんだぁよ」

 虹蝶呪莉(にちょうじゅり)の言葉で、そこに割り振られた魔法屋店主たちが次々と魔法屋へ向かっていった。強敵がいるといえど、躊躇う者はいなかった。

 なぜなら、虹蝶遡楽(にちょうさくら)、虹蝶結空が魔法屋奪還の担当になったから。その二人がいれば、攻撃が当たりそうになっても緊急離脱させてくれるし、どんな傷でも回復してくれる。

 そう思って、みんな安心していたのだった。

 しかし、魔法屋へ向かった人員はほぼ全滅した。


 

「ご協力ありがとうございます、繭羽(まゆう)さん」

 世界への反逆者の構成員、千葉(せんは)はそう言って拠点へと帰っていった。

 希望学校による魔法屋の奪還作戦、その一部始終を見届けたため、それを報告しに行くのだ。

 魔法屋店主の大勢いる場所を偵察なんてしたらすぐにばれてしまう。協力者がいなければ。同じ魔法屋店主が少し周囲の魔力を乱すだけで、魔法を使えない千葉の気配など容易く隠される。

 千葉は虹蝶繭羽の協力によって世界への反逆者に攻めてくる人を事前に報告できた上、今希望学校を滅ぼすならどこから攻めるべきなのか説明することだって出来る。

  繭羽はその言葉を聞いて、ただ俯いていた。

 必然、足元の血痕が目に入る。

「……」

 繭羽は何も言えなかった。

 霊界の住人たちは実体がなく、魂が本体であるため、死体が残ることはない。

 だが、現に繭羽の目の前には大量の死体が転がっている。

 魔法屋を守っていたのは名前狩り。一撃必殺に注意して、遠距離攻撃を多方面から打ち込むことで確実に追い詰めていた。 

 千葉を隠すため、繭羽が魔力を乱していた。そのせいで、戦線が崩れてしまった。具体的に言うと、虹蝶遡楽、虹蝶結空の2人による緊急離脱からの完全回復のシステムが繋がらなくなった。

 それがなければ、いくら魔法屋店主といえど鎌で斬られるのは時間の問題。

 一人やられてしまえばもう止まらない。名前狩りによって一人、また一人と抜け殻にされていった。

 そんな中、繭羽はどうして自分が生き残っているのかが不思議であった。自分の裏切りがばれて、希望学校の勢力とみなされなかったから見逃されたのではないだろうか?

 かがみこんで手を伸ばし、足元にあった死体の顔を覗き込む。

「……彩都(さいと)

 よく知っている者の死体。それはこれ以外にもたくさんあるのだろう。

 だが、繭羽はそんな虹蝶彩都の死体を軽く放り投げた。そしてそのまま立ち去った。振り向くことは、もうなかった。

「あははっ」

 繭羽はあの激しい戦いを思い出し、軽く笑った。





 店主の間にて。

「繋がらない、どうして!?」

 虹蝶結空が声を荒げる。強い焦りが彼女を縛っていた。

 魔法屋の奪還に向かった人員を虹蝶遡楽と共に援護することになっていた。それなのに。

「これはまずいよ。みんな私たちがいる前提で戦っている」

 致命傷を受けそうになれば、必ず結空が保護していた。その絶大な信頼が、今はあだとなっている。

「うち、向かうで」

「私も」

 緊急事態ということで、虹蝶栄華(えいが)、虹蝶遡楽が店主の間を出て行ってしまった。

 虹蝶結空はその場に一人取り残された。

 空間結合。その魔法は強大ゆえに制約が多い。空間を通して遠くの光景を見る、すなわち光の透過や音の転送くらいならどこでも簡単にできる。

 だが、物体の転送となると全く話は変わってくる。虹蝶結空が扱える魔力が空間内に蔓延していないと行けないのだ。

 魔法屋店主である結空は、他の魔法屋店主たちの魔力との親和性を利用して、魔法屋店主が数人以上いる戦場にて破格の力を発揮していた。

「一人に、しないでください」

 誰もいない空間で、虹蝶結空は呟いた。

「一人じゃ、大したことないんです」

 その叫びはむなしく消えていった。空間を繋いで容易く届けられるその言葉がただ消えていくのを虹蝶結空は感じていた。


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